“地図版Wikipedia”ともいわれ、みんなの力で地図を作る世界的プロジェクト「OpenStreetMap」。「使う」のではなく「作る」となると、さすがに縁遠いかも……と思いきや、一般人も地図編集者として参加できる「マッピングパーティ」なるイベントが! 私たちにも、地図が作れる!? 一体どんなパーティなんでしょう?
誰でも自由に編集できる、今もっともホットな地図
「『マッピングパーティ』の世界をご案内する前に、まずは『OpenStreetMap(オープンストリートマップ)』のことを軽くご説明しましょう! これは、ざっくり言えば、誰でも自由に情報を追加したり、編集したりできる共有型地図のことなのです」
画像上で白く光っているのは、地図が編集されたサイン。世界中が、猛烈な勢いでピカピカと光っています。2004年にイギリスでスタートしたこの地図プロジェクトは、10年かけて拡大し、世界でおよそ100万人、日本では4000人のマッパー(地図編集者)が、日々最新の地図情報を編集しているんだそう。
「通常、どんな地図にも著作権があり、商用利用で使う場合はお金を払わねばなりません。だから、チラシの案内図や街角の張り紙などに地図を載せるのも基本はアウト。そこで、もっとみんなが自由に使える地図として登場したのが、オープンストリートマップです」
これまで、地図サービスは「Googleマップ」の独壇場でしたが、Googleは2012年に地図の利用状況により課金を行うと発表。それ以降、Yahoo! JAPANをはじめ、Apple、NAVITIME、Evernoteなど、トレンドのウェブサービスは続々とオープンストリートマップに乗り換えはじめています。
リアルタイムの"生きた地図"が災害時も大活躍!
オープンストリートマップは、“更新スピード”も魅力の一つ。
「2010年に起きたハイチ地震の際、国連や赤十字などが救援活動を行うためには、現状を反映した地図が必要でした。そこで、全世界にいるオープンストリートマップの地図編集者たちが結束。最新の衛星写真を見ながら、数日で最新の現地地図を作り上げました。どこの組織も最新地図を出せなかった状況で、ぼくらがいち早くそれを提供できたのです」
現在、オープンストリートマップのコミュニティは、アフリカで急速に拡大しているエボラ出血熱のため、現地で活動する救助隊に向けて地図整備を行っています。ハイチの時と同じく、参考にするのは衛星写真。近年は、地図を作るための衛星写真の無償提供に理解を示す企業も増えてきているといいます。
地図イベント「マッピングパーティ」とは
海を越えた人海戦術で、求められる地域の地図を一気に作り上げていくオープンストリートマップの編集者たち。地図やプログラミングに詳しい人たちによるものかと思いきや……。
「いえいえ! 現在はくわしい知識がなくても、地図が作れる時代です。ここからは本題の『マッピングパーティ』のお話にうつりましょう。まず、マッピングパーティは、オープンストリートマップの地図情報を充実させるために生まれたイベントで、みんなでおいしいものを食べたり飲んだり、おしゃべりしたりしながら街を歩き、紙の地図を持って、得た情報を書き込んでいくというもの。一般の方々の参加も大歓迎なんですよ!
紙地図に情報を書き込むだけ!? では、ネット上の地図にはどのように反映するのでしょう?
「実は、紙地図には専用のバーコードやマーカーが書き込んであるのです。それをデジカメで撮影し、専用サーバーに送ると、自動的に位置を合わせてくれます。あとは、ぼくらがそれをデータに落とし込めば、ちょっとした分業体制でどんどん地図ができあがっていくんですよ」
一般の参加者にとっては複雑な作業一切ナシという、まさに一億総“伊能”化も実現できそうな気軽さ! 伊能忠敬もびっくりのスゴイ時代です。
マッピングパーティを楽しくする方法
古橋さんが「最近ちょっと面白いんですよ」というのが『ジオキャッシング』とオープンストリートマップのコラボです。ジオキャッシングとは、スマホやGPSを使って行う“宝探しゲーム”のこと。そう、地図といえばお宝、お宝といえば地図ですよね。マッピングパーティと組み合わせると非常に盛り上がるんだとか!
また、参加者を楽しませるには、ユニークなテーマを設定するのも一つのテだと古橋さん。
「たとえば、災害が起きたときに飲み物が手に入る自動販売機。あれがどこにあるか、地図上で検索できたら便利ですよね。マッピングパーティのテーマを『自動販売機』に設定すると、その地域にある自動販売機1つ1つのマッピングが可能になります」
扱うものが、身近な「自販機」であること。その地図を作るという珍しさ。そして、震災時に役立つ実用性。地図作りなんて考えたことのない人も、思わず興味をかきたてられるナイス企画といえそうです。オープンストリートマップはアイデア次第で使い道もぐんと広がる、可能性に満ちた地図なんですね。
一人ひとり違うことが価値になる"参加型"の魅力
「マッピングパーティは、大人から子ども、お年寄り、身障者の方までどんな方も大歓迎! 子どもからお年寄りまで広く集まってもらうために、イベントの告知時はネットに限定せず、地元のメディアを使って広く呼びかけることもありますね」
石巻で開催したマッピングパーティでは、車いすの方が来場。そこで、“車いすマッパー”として協力を仰ぎ、段差の有無の判定、車いすが通れる広さなどをターゲットにした新たな地図を作ったんだとか。
「マッピングパーティのいいところは、2人以上で行うところ。みんなそれぞれ中身が違うから、誰かと一緒に歩くことで、普段とは違う発想で街を観察できます。視点が多ければ多いほど楽しい、それが参加者と一緒に作る“参加型”イベントの醍醐味だと思います」
マッピングパーティのスゴイところは、一見ディープな世界に見えるけれど、複雑な作業はカンタンにし、一般人が気軽に参加できる仕組みを作っている点。さらに、単純作業になりがちな情報収集&入力作業もひとひねり。近い業界とコラボしたり、興味をひく企画を作って、遊びながら行える工夫を行っています。
「理念はよいけれど、ボランティアで協力してくれる人が少ない」「人海戦術で攻めたいけど人手が足りない」そんなプロジェクトを抱える方は、ぜひこのパーティをご参考あれ!
(文章:矢口あやは)
古橋 大地 (Taichi Furuhashi) プロフィール
マップコンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
マップコンシェルジュ株式会社 代表取締役社長、オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン副理事長、東京大学空間情報科学研究センター 特任研究員、OSGeo財団日本支部理事。東京大学大学院新領域創成科学研究科修了(環境学修士)。専門は森林リモートセンシング。地理空間情報の利活用を軸に、Googleジオサービス、オープンソースGIS(FOSS4G)、オープンデータ(OpenStreetMap)の技術コンサルティングや教育指導を行なっている。ここ数年は「一億総伊能化」をキーワードにみんなで世界地図をつくるOpenStreetMapに熱を上げ、GPS、パノラマデバイス(GigaPan)、無人航空機(UAV/Drone)を駆使して、地図を作るためにフィールドを駆け巡っている。最近の主なプロジェクト:JICA Project /ブラジル国アマゾン森林保全・違法伐採防止のためのALOS衛星画像の利用プロジェクト (Alos4Amazon: http://alos4amazon.com/)
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