暗闇ごはん- 視覚を完全に奪われた中で食べるご飯はどんな味? #EventSalon 2 レポート

アイマスクをしてごはんを食べる!?そんな奇妙な食事体験が話題を呼んでいます。今回、作務衣姿でご登壇いただいた青江覚峰さんは浄土真宗の僧侶であると同時に、ご自身が住職を務める緑泉寺を拠点として「暗闇ごはん」というイベントを主催。

人気イベントにちりばめられた、思わず唸ってしまう素敵な仕掛けとメッセージ。自らを「料理僧」と名乗り活動する青江さんがイベントを行なう理由、そしてイベントを通じて伝えたいこととは—————————

Event Salon 青江覚峰

料理を通して仏教を伝える

料理僧とは青江さんいわく「料理を通して仏教を伝える活動をしているお坊さん」のこと。 「暗闇ごはん」もその活動の一つ。冒頭、イベント風景がスクリーンに映し出されると、その不思議な光景にどよめきが起こります。お寺の本堂でアイマスクをした状態で食事をする参加者たち。視覚を奪われた参加者達はまさしく暗闇の中で食事をしていることになります。


「食べながらスマホ」が急増

青江さんが「暗闇ごはん」を始めた理由として、食事をしながらスマホを使う人が急増しているという現実がありました。

「30代から50代の女性に至っては5割の人が食事中にスマホを使っていると言われています。」
きっかけは誰もが子どもの頃に注意された「ながら食べ」。今やスマホがテレビや本に代わり問題となっています。

「なぜ『ながら食べ』はよくないのか。食事というものは自らの血となり肉となり、身体を作ってくれている大切なものです。その食事に対して、我々はきちんと意識を向けていないのではないでしょうか。」
「テレビやスマホを使っていないとしても、ちゃんと食事と向き合っている人はどれくらいいますか?」

子ども達に注意する立場の大人もこれには静まり返ってしまいます。

「では私たちは一体何と向き合っているのか。それは『時間』です」。
「食事というものは気軽に毎日3回行なわれるものだからこそ、意外と大切にされていない。時間に押されてしまう。しかし、食事を摂らずに生きていける人なんていない。だからこそ、ちゃんと食事に向き合ってほしい。」


視覚を奪うことで見えてくるもの

「暗闇ごはん」では「食事と1対1で向き合ってもらうため」、アイマスクで脳の7割を司っているといわれる視覚を奪います。

暗闇ごはん

暗闇ごはん HPより

「視覚を失うと人は怖い。目の前にあるものが分からないまま食べるという恐怖を感じます。」
その恐怖がすごく丁寧に意識を向けて食事を摂るという体験へと繋がります。そしてそれは食事以外にも言えることで。

「座ること、歩くこと、食べること、誰かと話すこと、家族と向き合うこと、当たり前のことにきちんと向き合っていますか?」

食事と向き合うことは自分自身の感覚と向き合うことと同じだと言われているようでした。


料理に隠された仕掛けとメッセージ

「『暗闇ごはん』では体験を通して、様々なところに常識を変えるスイッチのような仕掛けがあります。」

紹介されたのは実際に出されているグラスに入った透明なスープ。実はこれは色素を抜いた「赤くない」トマトのスープ。

「赤くない」トマトのスープ

「このスープはアイマスクをして食べると、ほとんどの参加者がトマトだと答えます。でも見える状態だとその正解率はなんと6割。キュウリやナスと間違えてしまうんです」。
「トマトの味だと思っていても、視覚が“赤”という色を認識していないだけでトマトだと信じられないのです」。
「自分の持っている常識なんて一瞬にして崩れる瞬間がある。そのことを伝えたい」。

優しく語る言葉には力強さが籠っていました。


常識というサングラスをはずすということ

「言いたいこと言っちゃったんですが、もう一つだけ(笑)」

と象徴的なお料理を紹介してくれました。薄く桂剥きされた大根が乗った「飛龍頭(ひろうす)」。がんもどきの上の薄く桂剥きされた大根がうっすら全体を覆っています。

「この桂剥きされた大根のように、私たちはサングラスをかけているように実は物事がはっきりと見えていない。」
「この薄く桂剥きされた大根を取る作業を「暗闇ごはん」を通して伝えたいですね。」

何かを伝える為の手段としてのイベントの有効性を感じる言葉でした。


お寺は「私有化された公共施設」

「国有化された公共施設はスピード感がなく、制約も多い。特に宗教団体というだけで断られることも多い。」と話す青江さん。

「(お寺であれば)仏教的な要素があればすぐに実行できるスピード感がある。これからも面白い企画をドンドン生み出していきたい。」

大きな組織でないことは強みだと、思わずこちらまでワクワクしてしまいます。
物珍しさだけではなく、素直な感動と視点の変化を生む仕掛けとメッセージ、アイデアを素早く取り入れかたちにしていくスピード感。イベントづくりに必要なものが「暗闇ごはん」には詰まっているのかも。


(文:濱谷俊輔)


青江覚峰 青江覚峰(Kakuho Aoe)プロフィール
1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。カリフォルニア州立大学フレスノ校にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。日本初・ お寺発のブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶達が集うウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。ユニット「料理僧三人衆」のひとりとして、「ダライ・ラマ法王と若手宗教者100人の対話」などでも料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)などがある。

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