お金が使えない!決められたコンテンツもない?参加者がシェアの精神で楽しむフェスティバルのつくりかた #EventSalon3 開催レポート

毎年、アメリカ・ネバダ州の砂漠で行われる世界規模のアートフェス「Burning Man(バーニング・マン)」。そのコンセプトを踏襲した地域版のイベント=Regional Burnが世界中に広がっています。日本におけるRegional Burnとして正式に認可され、2012年から開催されている「Burning Japan(バーニング・ジャパン)」を手掛けるパーティクリエイター・アフロマンスさんが登場!  “参加者主導型イベント”の魅力をドドンと語ってくれました。

「Burning Japan」の仕掛け人、登場!

「こんにちは。アフロマンスと申します。アフロマンと間違えられますが、『アフロ』と『ロマンス』でアフロマンス。今日はこれだけ覚えてもらえれば、なんて。いろいろやりすぎて肩書がよくわからない感じなのですが、最近はパーティクリエイターと名乗っています。泡をかぶる→テンションがあがる! というわけで泡パーティの主催をしたり、DJイベントを168時間ぶっとおしで開催してギネス記録に挑戦したり。こういう一風変わったイベントをつくったりしています。」

泡パーティー

泡パーティーの模様

そんなアフロマンスさんが手掛けているビッグイベントが「Burning Japan(バーニング・ジャパン)」。熱狂的なファンがいるアメリカの祭典「Burning Man(バーニング・マン)」のコンセプトを踏襲、日本版として開催することが本家から認められたイベントで、“知る人ぞ知る”特殊なアートフェスなのです。

そもそも「Burning Man」ってなんだ?

「バーニング・ジャパンのお話をする前に、アメリカのバーニング・マンについて少しご紹介しましょう! バーニング・マンとは毎年、アメリカネバダ州のブラックロック砂漠で開催される世界的なアートフェスティバルのこと! “バーニング”な“マン”というだけあって、フィナーレには大きな人型のアートが爆発して燃えあがります」

afromance

深いブルーの空の下、砂漠に忽然と現れる不思議なアート群。砂を巻き上げて走るユニークなアートカー。闊歩するセクシーなお姉さん。唐突にお茶会を開く日本人アーティストなど、不思議なモノがいっぱい!

 

開催期間は、毎年9月最初の月曜日(Labor Dayという祝日)までの7日間。その間、約5万人以上の参加者たち全員が仮装やパフォーマンスを繰り広げるんだとか。

「注目すべきは、これらは主催者側が用意したものではなく、参加者が持ち寄って作り上げているという点です」とアフロマンスさん。

Wikipediaによれば、「各参加者は、この『プラーヤ』(Playa)と呼ばれる何もない塩類平原に街を作り上げ、新たに出会った隣人たちと共同生活を営み、そこで自分を表現しながら生き抜く。そして一週間後、すべてを無に還す」とあります。

「なぜ、こんなイベントが可能なのか? それは“バーニング・マンの10大原則”というものがあるからです」

「Burning Man」の世界を支配する10大原則

  • Radical Inclusion (誰にでもオープンであること)
  • Gifting (ギフト文化の推進)
  • Decommodification (商業主義から脱却すること)
  • Radical Self-reliance (徹底的に自立していること)
  • Radical Self-expression (自己表現を究めること)
  • Communal Effort (ともに努力=協力すること)
  • Civic Responsibility (社会人としての責任を果たすこと)
  • Leaving No Trace (あとを残さないこと)
  • Participation (参加すること)
  • Immediacy (現場での体験を大事にすること)

「簡単にいえば、『会場内でお金がつかえない』ってこと。砂漠で1週間近く過ごそうと思うと、水やお酒、食料をどっさり買い込んでいくことになりますよね。だから、それを交換する。なんならもう、あげちゃう。それが『ギフト文化の推奨』ですね」

この原則で、さらに重要なことがもう一つ。

「それは、自分を思いっきり表現しよう。自分から参加していこう、ということ。たとえば、ぼくが絵をかきたいといったとき。普通なら『絵なんかで食ってけるか』といわれる。でも、ここでは『すばらしいね!』『クールだね!』とあたたかく受け入れることが原則なのです」

お金が存在しないから、利害関係がない。だから、だまされる心配もない。その条件のもとで、「じゃあ自分はいったい何をする?」「自分の本当の望みは何?」ということを問われるバーニング・マン。そんな世界が1週間だけ、ネバダの砂漠に現れるわけです。

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「確かにクレイジーなんだけれど、これは、自分で何かを表現したくなる“参加型”の社会そのもの。普段はできない自分の望みをかなえる場所という意味では、もう一人の自分と出会う場所かもしれません」

Burning Manのコンセプトを輸入する!

では、この祭典を“バーニング・マンの10大原則”とともに日本に持ってきたらどうなるか? それを実験的に行っているのがアフロマンスさんというわけです。

「2012年に行った第0回は山梨の山奥で開催しました。アメリカの本家と同じく、食べ物、音楽、アート、暮らしに必要なものはすべて持ちよりです。参加者の多くが、バーニングマンの考え方を理解してくれていて、自然と良い雰囲気ができていました。ディナーをふるまったり、白い服を着て、森の中を走りながらスプレーをかけあう遊びをしていたり。海外からの参加者も多かったです。」

本場には劣るものの、巨大な人型アートを準備して点火! しかし燃えない! 「やっぱりやってみなきゃわかんないなー」といいつつ、イベント自体は大好評にて終了。

Burning Japan

Burning Japanの模様

「2013年は、千葉県南房総市で開催。来場者の手作りバーやDJブースが出現したり、ミュージシャン同士や音楽好きがみんなで太鼓をいっぱい並べてセッションしたりと盛りだくさんでした。一方ではレゲエダンス講習会が始まって、人気をさらっていったりして。フィナーレのアートへの点火ですか? 今度は燃えました! よかったですホント」

1:100より1+100! 参加型フェスティバルの魅力

「イベントは、『1対100より、1+100のほうが100倍楽しい』と思っています。もちろん、普通の野外フェスでも楽しいんですけれど。有名なアーティストが出てきたら熱狂するし、『見られてよかったね』『楽しかったね』とイイ感想を聞く一方で、『トイレが超並んでてつらかった』とか『お酒が途中で売り切れとかない!』なんて不満もよく聞きます。そのへんが、バーニング・マンやバーニング・ジャパンのような“参加型”イベントとは少しちがうところだな、と思っているんです」

「アーテイスト1:お客さん100」のフェススタイルでは、1万人が集まっても他人は他人。道ですれ違っても絡みがないし、話すこともない。でも、それぞれがパフォーマーだったら! それぞれがステージを1コずつ持つコンテンツになりえます。

afromance

「自分も、そのイベントに参加するパフォーマーとして責任を持っている。それが“参加型”のイベントです。だからでしょうか、不満をあまり聞かないんです。自分で準備して、自分たちで作っている。ポータルサイトとソーシャルサイトの違いにもよく似ていますね」。

フェスは、ある意味ヤフージャパン。ヤフーがお金をかけて、よいコンテンツをアップし、人が集まるメディアへと成長させる。一方、バーニング・ジャパンはみんなが好きにスレッドを作り、それぞれがコンテンツになっている2ちゃんねるスタイルが近いのかもしれません。

おバカな先駆者を大切にしたい!

「有名なアーティストを呼んだほうが、人が来るんじゃないかとよく言われます。多くの人が来てくれたほうが、運営費も回収できるのは確かです。実際、第0回、1回はちょい赤字でした。でも、バンバン広告を打って、資本金をじゃぶじゃぶ入れて、有名人を目玉にして来場者をかき集めるのは、ちょっと違うと思っているんです」

必要なのは、プロの参加ではなく、みんなが平等にパフォーマーになれる環境。自分ができること、楽しいことを提供するからこそ、一人一人の価値や思いがけない面白さが生まれるとアフロマンスさんはいいます。

「参加型ですから“へたくそ上等”なんです! そして、みんながバカになれるムードを牽引する“おバカな先駆者たち”を大切にしたい。実は、バーニング・ジャパンの来場者の20%くらいは海外から来たバーニング・マンのファンたち。彼らが先行しておバカになってくれることが多くて、『なーるほど、そういうことしても恥ずかしくない場所なのね!』という会場の雰囲気を作ってくれています」

参加型イベントで絶対に欠かせないのは、うまいルールと、おバカな先駆者。主催者側が用意するものは、それらがうまく実現できる「場」という感じですね。

どこで行うか? "環境"選びも大切

「だから、ぼくらの一番の仕事は、火を使いたい人が使える、音楽をやりたい人が音を出せる、突飛な格好をしても(他人に迷惑をかけなければ)許される、そういう場所を頑張って探すことですね。イベント自体のクオリティを高めるためにも、テーマを意識した環境をみつけることはとても大切だと思います」

アメリカのバーニング・マンが、お互いが助け合わないと死ぬ“砂漠”の環境で開催されているように。日本のバーニング・ジャパンが街から離れた不便な“山奥”や、海辺で開催されているように。開催場所をどこにするかによって、参加者が得られる体験や趣向は大きく変わります。

イベントを企画する時、内容にこだわるあまり、場所については「人数が収容できれば」「設備があれば」どこでもいい…という思いにかられがち。でも、内容はもちろん、環境、イベント内で使うグッズ、ドリンクなどからも一貫したテーマを感じさせることができれば、よく練られた印象に。これもまた、参加者の胸に強烈なインパクトを残すイベント作りの秘訣かもしれません。

Burning Japanの最後に燃やされたフェニックス


(文章:矢口あやは)

※2014年は、9/13~15に開催予定とのこと。チケット受付も始まっています! -> Burning Japan 2014

afromance

afromance プロフィール
泡パ / Burning Japan

アイディアで新しい体験を創りだす、パーティークリエイター。
2006年、京都でDJ/オーガナイザーとして活動を開始。活動開始時から京都の若手代表として数々のメジャーアーティストと共演。
2009年より活動の拠点を東京に移し、ageHa・Womb・clubasiaなどのクラブから、野外・船上・屋上などの様々な場所でのDJ、オーガナイズを手がける。
2012年には、都内初の”原宿 泡パーティー”を主催し、250名のキャパシティに対し、2日間で3000名以上の応募が殺到し話題に。さらに、逗子のクラブ仕様の海の家”BEACH SAIKO!!”のプロデュースや、アメリカ ネバタ州の砂漠のフェス”Burning Man”のリージョナルイベント”Burning Japan”の主催、DJイベントの世界記録に挑んだ7日間168時間連続DJイベント”BIGJOINT TOKYO”の主催、”1/26のアフロの日”公式記念日制定など、活動は多岐に渡り、数々のメディアで取り上げられる。

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co-baEvent Salonは、co-baの協力の元運営されています。
会場となる「co-ba library」は、渋谷のシェアードワークスペース「co-ba」の上の階につくられた、シェアライブラリー。誰かの本棚を見て、その人の趣味・趣向がおもしろいと思った事はありませんか?
ここは作家別でもジャンル別でも時系列別でもない、本の提供者別に個性的な本棚が並ぶ、みんなでつくっていく「図書館」です。「co-ba library」は19時以降、イベントスペースとして利用できます。
靴を脱いで使うリラックスした空間の中で、本に囲まれながらの様々な催しが企画できます。少しアカデミックな雰囲気、カルチャーに近い雰囲気のなかで新しい時間を生み出してみませんか。 co-ba library >>問い合わせ/「co-ba library」を利用する


 

 

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