一人で行くにはちょっと危険な夜の道を、謎めいたツアーアテンダントに連れられて、みんなでしんしんと歩いていく――まるで世にも奇妙な物語…みたいですが、それが今年で3年目を迎える「深夜徘徊」。いったいどんなイベントなの? どこを歩くの? 参加者はどんな人? ミステリアスな徘徊事情(?)に迫ります!
そもそも「深夜徘徊」イベントってなんだ!?
「深夜徘徊イベントって、よくも悪くも期待のハードルがあがっちゃう名前なんですが、要は、深夜の街をみんなで徘徊するんです。深夜0時頃から歩きはじめて、朝5時くらいにゴールイン&解散。待ち合わせ場所も、コースもイベントの回ごとに変えているんですよ」
合間に休憩もはさむため、実際に徘徊するのは3時間前後。距離にして、9.5~10.5㎞くらいのコースが平均とか。主な待ち合わせ場所はJRの改札前。
参加者には「あ、深夜徘徊の人だ!」とすぐにわかってもらえるように、特殊な出で立ちで待っているとか。うーん、期待を裏切らないナゾ感です。
集合時に行う「開会式」では、これからどこを歩き、どこへ行くのかを全く知らない参加者に、本日のルートを発表。みんなの準備が整ったら、いよいよ徘徊のスタート!
以前に開催された深夜徘徊イベントの模様
――なんですが、徘徊ってホントに楽しいの!?
そもそも深夜に街を徘徊する魅力って?
「いや、それが楽しいんですよ! たとえば、ただ歩道橋を渡るだけでも、ひとっこ一人いないばかりか、車も一台も通りませんから、不思議な気分が味わえます。昼には観光客でごったがえした人気スポットも、深夜3~4時には無人の場所に。深夜ならではの楽しみがあるんです」
参加者の間でとくに好評だったのは、昨年5月に開催した第7回・深夜徘徊イベント「AN&KOKU」のコース。清澄白河駅(スタート)→深川不動尊&富岡八幡宮→豊洲エリア→東京ビッグサイト→お台場(ゴール)という約11㎞の道のりです。
「豊洲エリアに入って、高層タワーマンションの間を抜けたとき、サァッと目の前に海がひらけて。暗い海上で光輝くレインボーブリッジ、広々としたお台場の夜景に、参加者から歓声があがりましたね。みなさんが楽しそうだったので、ここが臨時の休憩地点になりました」
さすがは長く深夜を歩いてきた人の嗅覚から生み出されたコース設計。由緒正しい寺社あり、人気スポットあり、美しい夜景ありと、バラエティ色豊かです。が、徘徊時刻はまともな人なら寝てる時間。身の危険を感じたことはないんでしょうか?
「あてなくさまよう“徘徊”とは少し外れるのですが、コースはあらかじめ下見をしていて、危険っぽい場所は外しているんです。今まで遭遇した事件といえば、酔っぱらったおジイちゃんに絡まれたことと、おまわりさんに呼び止められて『何の団体ですか?いや怒ってるんじゃなくて、興味で聞いてます……』っていわれたことくらいですね」
よくある質問ナンバー1「なんで徘徊しはじめたの?」
宮原さんいわく、深夜徘徊イベントを開催していて、よく聞かれることは2つ。そのうちの1つが、「なんでそんなことはじめちゃったの?」ということ。
「お話しましょう、そのワケを! 一言でいえば、会社法人を……ノリで作ってしまったから……。立ち上げた以上は『何かしなきゃ!』と焦って、イベントならすぐできるかも!? と思い立ったんですね」
しかし、イベントは、そのジャンルに精通する知識やキャリアがある人が主催するもの。自分が経験的にキャリアがあるのは……と考えた先に導き出されたのが――。
「深夜徘徊です!ぼく、これだけは人並み以上に経験があったから。というのも、もともと長野の出身で、大学進学で東京にきたんですよ。当時驚いたのは、東京にはビルがあるってこと!長野にはないから(言い過ぎ?)。とにかく、土日も高層ビルに煌々と光がともっていて、深夜も人がいっぱいいる景色はぼくにとって珍しいものでした。かと思えば、一本路地に入るとシーンとして……。東京の夜って面白いなぁって思いましたね」
宮原さんが深夜徘徊にハマり始めたのは、大学入学してまもなくのこと。その経験とキャリアを生かして誕生したのが、この深夜徘徊イベントというわけです。
よくある質問ナンバー2「なんのために徘徊してるの?」
「さて、よく聞かれるご質問ナンバー2は、『何のためにやってんですか?』ってこと。答えはたった1つ! 多くの人に、深夜徘徊の魅力を体験してもらいたいから、です。深夜は、昼間とはまたちがう町並みや風景が広がっていて、昼間にはいない人たちが歩いています。この非日常感こそ、最大の醍醐味だと思います」
しかも、深夜徘徊は心にいい影響をもたらすことも。たとえば――。
「ぼくは、ワクワクドキドキ、遠足みたいな気分になって、テンションあがります。一方、参加者からは、『静かな空間を歩くことで、心と頭がクリアになって、ストレス発散になった』という感想をもらえることもあるんですよ」
参加者は、ほとんどがお一人様。1回の開催の参加者は10~20人で、毎回3~6人くらいのリピーターがいるのだそう。
「知らない人と4時間以上一緒に歩くわけですから、『なんか話さなきゃ!』と焦る空気はツライはず。だから、開会式で伝えているのは、『ただもくもくと、コンクリートを眺めながら歩いていても大丈夫ですよ』ということです」
“ここは緊張しなくていい場所です!”ということが一目でわかるように、告知時も、実際に集まった時も、なるべくふざけてユルさを演出するといいます。みんなが気兼ねなく深夜の体験に没頭できるように、心理的なハードルを極力下げていることも、人気の秘訣かもしれません。
“楽しいけどマニアックな趣味”が、立派な人気イベントとして成立することを教えてくれる「深夜徘徊」。みなさんの心の中にも、マニアックすぎて人には言いづらいけど、これをやってると楽しくて時間が経つのも忘れる――というナイスコンテンツが眠っているかも? イベントを企画する時はぜひ、心の声に耳を傾けてみて。
(文章:矢口あやは)
宮原 直孝 (Naotaka Miyabara) プロフィール
一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事
うつ病で会社を辞めた後、しばらくニートでした。が、飽きて勢いで法人作りました。
ヘラヘラダラダラしてます。
よく分かんないですが、やっていることが居場所作りと受け取られる場合が稀にあるらしく、全国居場所フォーラムとか、大田区の若者支援シンポジウムとか、札幌のフリースクールをやってるNPOとかに呼ばれて適当に何か喋ったりしました。
世の中には理解不能なことが沢山あるんだなって学びました。
あのイベントを始めたきっかけは?イベントをやって何が変わった?
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