日々のくらしにある「子どもの孤立」に目を向ける・NPO法人PIECESが考える、優しい「間」とは | ゲスト:斎 典道さん・藤田 奈津子さん(NPO法人PIECES)Think and Talk with Peatix vol.2 レポート

Peatix は、世の中の課題や、それに向き合うポジティブなアクションについて紹介し、視聴者の皆さんと考え、話すイベントシリーズ “Think and Talk with Peatix”を運営しています。

第2回のテーマは「子どもへの支援」。虐待、いじめ、貧困…耳にしたことのある話に胸が痛むものの、「自分の身の回りにはそういったことはないかな」、「今のところは大丈夫だと思う」と考える方も多くいるかと思います。

NPO法人PIECESが考える「子どもの孤立」は、そのように大きく報道されるものだけではありません。「コロナ禍で楽しみにしていた行事がなくなってしまった」、「勉強がわからなくなって学校に行くのが辛い」…。物理的にそばに人がいても、支援期間にアクセスしていても、「心の孤立」は見えないところで起きています。

子どもの孤立とは何か、子どもを支援するとはどういうことなのか。NPO法人PIECESの斎 典道さん、藤田 奈津子さんをゲストにお話を伺いました。

 

▶︎お知らせ:9/12(日)にPIECESのイベントが開催されます!
9月12日(日)【問いの贈り物 Vol.3】5年後の自分に聞いてみたいことは何ですか?
ゲスト|安渕聖司さん(アクサ生命保険社長兼CEO)

 

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イベントレポート

Part1:NPO法人PIECES斎さん・藤田さんからのおはなし

子どもの孤立とは?

UNICEFの調査によると、「孤独を感じている」子どもは10人中3人ほどいると言われています。

また、内閣府の「子供・若者の意識に関する調査」によると、居場所がない、相談できる人がいない、助けてくれる人がいないと感じる子どもがいる一方で、「支援機関を利用しようと思わない」と回答する割合が70%ちかくあり、存在する支援機関は重要なものである一方、それにアクセスしようと思えない子どもがいることも事実です。

 

今、子どもたちの周りで起きていること

子どもたちの周りで起きている困難なこととして、報道などでも伝えられていますが、例えばこんなことが起きています。

貧困。現在、7人に1人が「相対的貧困」と定義される状況にあります。虐待についても、相談機関に寄せられる虐待相談は約19万件で、すごい勢いで増えています。そしていじめと認知されている件数は約54万件、それ以外の原因も含め、心のしんどさの表れとしての不登校も年々増えています。

これら様々な課題の背景には「子どもの心の孤立」があると私たちは考えています。

 

 

「心の孤立」

ここまで「心の孤立」と言ってきましたが、これは物理的に孤立しているということとは少し異なります。近くに誰かがいたり、場合によっては支援者がいる状況であっても、なかなか周りの人が信じられないという子どもは少なくありません。

私が実際に関わった子どもの声です。

周りに人がいなかったわけじゃない。

でも誰も自分の本当の気持ちに向き合おうとしてくれなかった。

どうせ大人なんて誰も信用できないと思ってきた。

一人でもいいからちゃんと話を聞いてほしかった。

このように聞くととても深刻なことのように感じるかもしれませんが、このような気持ちが特別ではなく、先ほども紹介した「孤独感を感じる」という子どもたちには誰にでも、大なり小なりこのような感情があるように感じます。

 

「人に頼る」ことは実は主体的な行為

ここまでお話すると、「そんなに困っているなら、自分で助けを求めればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし実際なかなかそうもいかないです。これは子どもに限らず、誰にとってもそうではないかと思いますが、「人に頼る」というのはなかなか難しい。

自分の現状を問題だと認識し、相談したい相手を思い浮かべ、実際に相談しにいく。人に頼るにはエネルギーが要ります。しんどい環境が当たり前の状況にいると、そもそも痛みに気づけていないこともあるかもしれません。閉じた世界にいれば、外に助けを求めるという発想が浮かばないでしょうし、「恥ずかしい」、「どうせ誰も助けてくれない」そういう気持ちを持っていたら実際に相談にいくこともできないでしょう。

私たちは、心の孤立は「社会」が生み出しているのではと考えています。人から大切にされる経験がない、自分を大切にできない、人からの助けを受け入れられず、人への信頼感がなくなる、孤立する…このループをぐるぐる回っている状態のように感じられるのです。

 

 

NPO法人PIECESとは

このような課題に対して様々な団体が活動を行っていますが、私たちはこの課題を解決するためには、シンプルすぎるかもしれませんが「人」が大切だと考えています。なかでも、親でも先生でも支援者でもない、「市民性」を豊かに育むことが重要です。

もちろん親や先生、支援者による関わりは言うまでもなく重要です。ただ一方で、どれだけ支援の場を作っても、目の前の子どもたちを救うことができない。子どもに直接関係する人や支援者と言われる人たちが非常に逼迫したなかで思うように関わりきれない、そのような状況下において、私たちはこの「市民」というところにひとつのヒントがあるのではと考えています。

私ちはその活動を「市民性の醸成」と表現していますが、自己責任、個人主義と言われるこの時代に、昔のムラ社会に戻るのではなく、現代に即した形で子どもたちの周りでサポートをしていきたいと考えています。

子どもたちのために何かしたいと思う人がいる一方で、困難に直面している子どもがいる。ここの歪みにアプローチすることで、子どもの周りに「優しい間」を生むことを目指しています。それはカリスマ的な、すごい支援ができるということではなく、少しずつみんなで、小さく自分の手元から一歩踏み出してみるということを大切にしています。

 

Citizenship for Children

具体的な活動の一つが、「Citizenship for Children」というプログラムです。私たちが子どもに対して直接支援を行うのではなく、子どもに関わる人を増やすための活動です。

座学とゼミ、実践とリフレクションをぐるぐると繰り返しながら、子どもと自分と地域にとってのwell-being(ウェルビーイング)を実現するための「自分なりの市民性」を探求していくプログラムになっています。

プログラムのなかで、自分と他社の行動の背景にある感情や願い、価値観の違いに目を向けていきます。子どもの願いや価値観に目を向けると同時に、自分自身のことも問い直し続ける。そうすることで、お互いの心に思いを馳せられるようになることが重要だと考えています。

 

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Part2:視聴者の皆さんと一緒にディスカッション

どうしたら「子どもの孤立」に気づけるか

ー先ほどのお話で、物理的にそばに人がいても「心の孤立」は誰にでも起こりえるものだと伺いました。では、どうすれば「子どもの孤立」に気づくことができるのでしょうか?どのような視点を持てば、子どもの心の孤立に気づくことができるとお考えですか?

心の孤立というものを外から見抜けるかというとそういうことではないと思います。これは専門家であっても難しい。明らかに見た目でわかることではないからです。ただひとつ、考え方のヒントとしてあるのは、「自分が見たものと、相手が見ているものは違うかもしれない」という視点です。

例えば、上履きのかかとを踏んでいる子どもがいたとします。「だらしない」「かかとを踏まずにきちんと履きなさい」と言う人がいるかもしれませんね。でも、実はその子が、「サイズの小さい上履きしか履けない状況になっている」としたらどうでしょうか?何らかの理由で、新しい上履きを買ってもらえないのかもしれません。

ほんの一例ですが、こういう視点が子どもたちの心の傷に気づくきっかけにつながることもあるかなと思います。

 

「自分が見たものと、相手が見ているものは違うかもしれない」という視点を持つ人が増えたら、どんな社会になっていく?

本当に小さなことから、わかりやすく形に現れることまで、いろいろなことがあると思いますが、例えば本当に小さなことでいうと、電車で泣いている子どもがいたときに周りの人が白い眼でみるのではなく、ニコッとしてくれるだけで、子育て中の親は周りの目を恐れずにすみます。

近所や商店街などで、地域の大人が「おはよう〜」と声をかけてくれたら、それだけで子どもは「自分を見てくれている人がいるんだ」と感じることができます。

私たちは「優しい間」と表現していて、もちろん優しく接してもらえることは嬉しいことですが、それだけではなくて、「あなたがいることを見ているよ」というメッセージが伝わるだけでもすごく大きいことだと考えています。

 

子どもの困りごとは、実は子どもだけが抱えているものではない

ー子どもの心の孤立には、子ども同士の関係性の中に辛さがあるものもあるとは思いますが、それだけではなく、子どもと一緒に大人も困っている、孤立しているケースも多々あると思います。そういった大人については、PIECESさんはどのように考え、はたらきかけていますか?

私たちは表現としては「子どもの」と言っていますが、あまり子どもと大人を区別して考えてはいません。おっしゃる通り、大人自身も困っていたり、孤独を感じていたりして、それが子どもにも影響していることは多々あります。

私たちのC for Cのプログラムに参加した人から、プログラムを受けてまず身近な大人との関わりが変わったという話をよく聞きます。職場の人、家族との関わりの中で、今までは「こういうものだ」と決めつけていたことに対してちょっと見え方が変わったり。子どもにこんなことをするなんてひどい人だと感じていた大人についても、「困った人だ」ではなく「困っている人なのでは」という考え方ができるようになったというのです。

ですので、この取り組みが直接虐待や貧困をなくすわけではないですが、こういう地道な積み重ねが、しんどい思いをする人を減らすことにつながっていくのではと考えています。

 

「優しい間」を生み出すような視点を身につけると、自分自身にも優しくなれる

ー「子どもへの支援」というものを考えたときに、支援する側の心も健やかである必要があるというお話をされていましたが、C for Cに参加された方たちご自身にはどのような変化があったりするのでしょうか?

「ありたい自分」と「本来の自分」の距離が縮まっていく感じがするという声をよく聞きますね。理想の自分を持つのは良いことです。ただ、それに縛られずに、あるがままの自分の良さを大切にしながら、「もっとこうなりたい」という前向きな気持ちを持つことができるようになります。

また、「支援」というと何かすごいことをやらなくてはいけないのでは?感じることも少なくないと思うのですが、プログラムを経て、自分は支援活動をする人のサポートが好きなんだと気づいたり、もっとさりげなくできることでいいんだなと感じられる方が多くいて、結果として自分らしいアクションにつながっている人が多いんです。それにはとても励まされますし、嬉しいなと思います。

 

「子どもへの支援」は子どもだけではなく、みんなのため

子どもへの優しい眼差しを持つ人が増えれば、それは大人の世界にも影響していきます。「正しいのはこれ一つだけ」という観念に縛られすぎないようになれば、みんながもっと生きやすい世の中になり、それぞれが自分にも優しくなれる。そうやって世の中に「優しい間」が広がっていくように、PIECESさんの活動は続いていきます。

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NPO法人PIECESの最新イベント情報

現在、わたしたちは、より多くの人たちと「問い」を共有することで、自分や社会のウェルビーイングを考えていく「問いを、贈ろう。キャンペーン」を実施しています。

このキャンペーンに伴い、今回は、アクサ生命保険社長兼CEOの安渕聖司さんをお迎えし、NPOとの連携や寄付が持つ可能性について経営者そして個人としての考えを伺うトークイベントを開催します!

9月12日(日)【問いの贈り物 Vol.3】5年後の自分に聞いてみたいことは何ですか?ゲスト|安渕聖司さん(アクサ生命保険社長兼CEO)

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