わかっていても陥りがちな「スタートアップあるある」のしくじり。SmartHR宮田氏の失敗の経験と、そこから今思うこと/しくじりCEO powered by Logicool

2017年11月14日、「しくじりCEO」あのCEOが失敗談を語る!powered by Logicoolというイベントを開催しました。今をときめくCEOの知られざる失敗談から学び、挑戦する勇気をもらおうという趣旨のイベントです。

本イベントは株式会社ロジクール様との共催で、プレゼンテーションをより伝わりやすくする革新的なツール(プレゼンター)「SPOTLIGHT」を登壇者に使いこなして頂きました。

「SPOTLIGHT」を利用することで、より魅力的なプレゼンテーションを実現できることを登壇者・参加者に体験頂く機会にもなりました。

 

[しくじりCEO powered by Logicool その他のトークレポート]

▶︎ Afro&Co. アフロマンス氏:派手に打ち上げ、派手に転んできた。華やかに見える表舞台の裏で綿密にイベントを設計する、アフロマンス氏のしくじりの数々とそこからの教訓とは

▶︎Kaizen Platform 須藤 憲司氏 : スタートアップが本当に息絶えるときとはいつなのか。Kaizen Platform須藤氏が語る、資金ショートの危機に陥ったときにCEOがなすべき仕事とは


わかっていても陥りがちな「スタートアップあるある」のしくじり。SmartHR宮田氏の失敗の経験と、そこからいま思うこと

 

SmartHRの宮田と申します。どんなサービスをやってるかというのは、8月に実際にTVCMを行ったこの映像を見てください。

 

SPOTLIGHTを使うと、再生中の動画の音量コントロールも端末で可能

 

人事労務の面倒なペーパーワークや、役所への手続きを便利にするというサービスをやっています。今でこそ順調ですが、「スタートアップのしくじりあるある」みたいなものはたくさん踏んできました。

 

まずは、会社がどんな感じで成長してきたかご紹介します。これは、うちの会社は大体こんな感じでしたよというグラフです。SmartHRは2年前にローンチしたサービスなのですが、会社は5年くらいやっていて、最初の頃は低水準で伸びない時期が続いていました。

最初の頃は、1年間無駄なことをやって時間を棒に振ったり、受託開発から抜けられずに、何のために会社をやっているのか分からない状態になったり。SmartHRをローンチした後も、余計な機能を作って、それに引きずられて伸び悩む時期もありました。

 

この辺りはスタートアップでよくある話なのですが、その辺りを「しくじり3大あるある」みたいな感じでお話したいと思います。

 

 

3大あるあるその1「受託開発から抜けられない!何をしたくて会社をやるのか 」

その1が、「受託開発でゾンビになる」という話です。起業当初は、ベンチャーキャピタルや個人投資家の方から出資を受けるのは怖いと思っていました。なので、受託で稼ぎながら自社プロダクトを作るというプランで起業したんです。理想としては、時間を半々くらいで使ってプロダクト作りをして、受託をしながら日銭が稼げればと思っていました。

 

現実はどうだったかというと、7割くらいが受託になっていました。プロダクトを作る会社ということで、受託をしていることも表立って言えず、良い仕事もこなくて……。実際にプロダクト制作に充てられた時間は1割くらい。じゃあ、残りの2割はどこにいったかいうと、行方不明になっちゃうんです。切り替えコストが多かったり、無駄なイベントで時間を浪費したり。お金も貯まらないし、プロダクトも伸びない。これが最初の2年間くらい続いて、しんどい時期でした。

 

会社は僕と共同創業者の2名で始めましたが、スタートアップはリソースも時間も全然ありません。そこから得た最初の教訓とは「選択と集中がすごく大事」ということでした。

 

 

3大あるあるその2「そのサービスは本当に必要とされているのか?」

しくじりその2は、「机上の空論で開発しちゃう」です。SmartHRは、うちの会社を始めてから世に出した3つ目のプロダクトです。世に出ていないものも含めると、実は12個くらいサービスを作っています。今日はそのうちの1つ目の話をしたいと思います。

 

1つ目のプロダクト開発には仮説があったんです。どういう仮説かと言うと、「Web業界のエンジニアやデザイナーは、転職するときに、スキルが正しく評価されなくて困っているのではないか」というものです。ただ、誰にもヒアリングせずに、僕たちだけで「そうだろう」と思いこんで開発をスタートしちゃったんです。1年もかけて、黙々とプロダクトを作りました。

 

そうやってサービスをローンチしました。ある企業で働いているエンジニアたちと、自分のスキルを比較できる。比較して、彼らよりもスキルが高ければ転職できるという、そんなサービスをやっていました。ですが、反応がイマイチで……。どうしてなのかとユーザー、エンジニア、企業の採用担当者にもヒアリングをしてみたら、僕らの仮説がズレていたことが分かったんです。

 

僕たちのビジネスは「エンジニアやWebクリエイターのスキルを可視化して、企業とマッチングさせる」というものでした。それに対して優秀なエンジニアの人たちは、別に困っていなかったんです。誘いの声もかけられるし、スキルを評価されていないとは思わないと。どちらかというとビギナーの方が、自分を大きく見せるために使っていることが多かった。

 

そうなると、採用する会社側からすると「御社のサイトにいるのはビギナーみたいな人が多いですよね」ということになる。「僕たちは効率よく優秀な人に会いたいので、このサービスは必要ないです」と。つまり、「これじゃない」サービスでした。それを作るのに1年もかけてしまったんです。

 

そこから得た教訓は「みんな本当に困っているのか?」ということ。そこに課題がちゃんと存在しているのか、最初に検証すべきということを学びました。

 

 

3大あるあるその3「プロダクトを作りこみがち」

これはSmartHR、今のサービスの話です。スタートアップ界隈の定説として、機能は必要最小限にして、最小限のプロダクトでスタートしましょうという話があります。僕も当然そうだと思っていました。ですが、当時の私は、「うちのジャンルは特別だ」と思っていたんです。うちは特別だから、最小限の機能では少なすぎる。だから4つくらい機能ができたらローンチするぞと、そんなことを考えていました。

サービスローンチ時に「TechCrunch Tokyo 2015」で開催された「スタートアップバトル」というピッチイベントで優勝して、出鼻はすごく良かったのです。なのですが、そのあと伸び悩みの時期がありました。

 

なぜ伸び悩んでいたかと言うと……。サービスの中で使われている機能は1つだけだったのに、その他の3つの機能の維持にリソースを取られてしまい、肝心の使われている機能のカイゼンがなかなか追いつかなくて。実際、初期の頃は解約も多かったです。

得た教訓としては、よく言われますが、改めて「プロダクトは最小限でローンチしよう」ということですね。うちは特別だとか、うちのジャンルは例外だとか、そんなことはない。どのジャンルであっても最小限でやるのが良いのだと、このときに痛感しました。

そんな数々のしくじりを経まして、導入社数は最近7,000社を突破しました。会社の規模でいうと、従業員が1万名規模の会社にも使っていただいています。

非常に伸びていて、楽しく、やりがいがある会社です。採用を強化していますので、もし興味がある方がいたら、ぜひお声かけいただければと思います。ありがとうございました。

 

 

[Q&A]

[Q1] やり直せるなら受託をやらなかったという声はよく聞きますが、宮田さんはもしやり直せるとしたら。受託をやらずに最初から資金調達をしますか?あるいは、実はタイミングも大事で、2015年のタイミングでSmartHRというプロダクトを出せたから、このタイミングで良かったと思うのか……。やり直せるとしたら、受託はやりますか?

[A1] 100%やらないですね。もちろん、そこで得られたものも大きかったですが、やはり、貴重な時間を失ったという感じが強いです。自分たちのプロダクトを作る気で会社を作ったので、今となってはあまり意味がなかったと思っています。

 

[Q2] 最初から資金調達、VCから投資を受けてやるべきだったと、今は思いますか?

 

[A2] 何とも言えないですね。最初の頃はやはり、サービスの作り方がわかっていなかったので。仮に最初に資金調達がうまくいっていたら、それに引きずられてなかなかピボットできなかったとも思いますし……。だから、今の知識を持った状態でもう1回やり直せるとしたら、受託はやらないという考えです。

 

[Q3] 「最小限のプロダクトでスタートする」というのは、すごく感覚的な話だと思うんです。あまりにも最低限だと、やはり使ってもらえないということもある。そのバランスはどうお考えですか。さっき4つの機能というお話がありましたけれど。1つの機能に集中したとしても、どこまでクオリティにこだわるか、いつも葛藤があるじゃないですか。そこの葛藤を感じることはありますか?

 

[A3] よくある例えで、車のタイヤだけ、ドアだけ渡しても意味がない、車の形で出さなくては意味がないという話がありますが、MVP(Minimum Viable Product:顧客価値があり、利益を生み出せる最小限の製品)はそれに比較して、「最初から車を作るのは無理だから、スケボーをあげなさい」みたいなことですよね。移動手段として最低限になるようなものを渡せと。

じゃあ、僕らがその当時どうだったかというと。もうスケボーはできていたんです。ただなぜかスケボーを4つまで増やそうとしてたんです。それは本当に意味がなかったと思ってますね。

 

じゃあ、なんで4つまで増やしたかと言うと、単純に、まだ世に出せないと思っていたんです。あと、「恥ずかしい」という感覚もありました。こんな状態では、満を持して出したときに笑われるんじゃないかと思っていたんですが、それは全く意味がなかったと思います。

 

具体的に言うと、SmartHRで一番使われるのは入社手続きの機能なんです。それに対して、退職の手続きや、事業者の住所変更の機能がないのは恥ずかしいと思ってやっていましたが、それは意味のないこだわりでした。そのせいで最初の半年くらいはかなり開発を引きずられてしまいましたね。

[Q4] 「もし時間を戻せたら」という話つながりなのですけれど。リリースした時に、4つのうち1つしか機能が使われなかったということでしたが、そこまで時間を戻したときに、他の3つの機能はクローズして1つに集中しますか?それとも、3つはとりあえず残しておくのか。どういった判断をされますか?

 

[A4] 出してしまった以上は、そのままにしているかもしれないです。全く使われない訳じゃないというのが、またタチが悪くて。1割くらいのお客さんは使っているんですよ。それを止めるとなるとお客さんは困ると思うので、それは多分いま時間を戻しても止めないと思います。もう少し前に戻れるなら、そもそもその機能を出さないですけどね。

 

[Q5] プロダクトを12個出されてようやくSmartHRが跳ねたということですが、SmartHRを含めた12個に何か一貫したテーマみたいなものはあったんですか?

 

僕らも実はPeatixを出す前に3つくらいサービスを出して全部失敗しましたが、後から思うとそこには一貫したテーマがあったと思うんです。宮田さんご自身やチームの皆さんの一貫した思いやテーマが、あるのかお聞きしたいのですけれども。

 

[A5] 1個目と2個目の間には一貫性はないですが、2個目から12個目、そして今のSmartHRまでは、裏テーマがあります。2個目以降のサービスは、企業向けにIT製品を選ぶときに便利な、比較サイトみたいなものを作ろうとしていたんです。きっかけは、たまたま受託で食いつないでいるときに、身近なお客さんが自社にサービスを導入するのに何を選んで良いか困っていたのを見たんです。それを見て、この分野には課題がありそうと思って始めました。そこからどんどん企業のバックオフィスの課題を深掘りして、SmartHRにいきつきます。

 

一見関係ないように見えますが、裏では大きな繋がりがあります。SmartHRは、労務手続きを簡単にするクラウド型のソフトウェアなのですが、将来的には、SmartHRと相性の良い製品をマッチングできるようなプラットフォームにしていきたいという思いもあって。実は裏側では繋がっているという感じです。

 


今回のプレゼンテーションで使われたプレゼンテーションリモート「SPOTLIGHT」の魅力はこちら!

 

▶︎効果的なハイライト機能  
従来のポインタのように対象箇所にポイントをあてるのではなく、ハイライトしたい部分の周辺をグレーアウトすることで、より効果的に注目してもらいたい場所をハイライトすることが可能

 

▶︎ズーム機能
プレゼンテーション内の該当部分を拡大して表現することが可能。ズーム範囲の大きさなどもあらかじめ、Logicool Presentationというアプリで設定することができます

 

▶︎スムーズな動画再生
プレゼンテーション内にある動画も、ポインタの操作だけで再生開始。スムーズな動画再生が可能です。

 

▶︎サークル機能
Logicool Presentationアプリでは、サークルカラーの色と大きさをカスタマイズすることが可能。グリーンレーザーのようなポインターとしても使用できます。

 

 

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