2019年2月28日、Peatix×JTBの業務提携に関する発表イベントを開催いたしました。
( https://jtb-peatix190228.peatix.com )
「地域の魅力創造デザインのこれから」をテーマに行われたセッションのイベントレポートを、前編・後編の2回に分けてお届けいたします。
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上田:みなさんこんにちは。JTBの上田です。第一部では「JTBとPeatixの描く地域の魅力創造の新たなかたち」というテーマでお話をしたいと思います。私どもJTBとPeatixは、2019年2月5日に資本業務提携をいたしました。まずはその背景についてそれぞれから簡単にお話するところから始めて参ります。Peatixの原田さんからお願いします。
地域の魅力発信・課題解決に貢献したい。JTBとPeatixの協業の背景
原田: Peatixの原田です。JTBとは昨年の5月くらいから協業の可能性について話し合ってきました。JTBというと、日本最大・世界最大規模のトラベルエージェンシーというイメージがありましたが、本社ロビーに掲げられている「人をつなぐ、笑顔をつなぐ」という標語に非常に共感しました。Peatixも「イベントを通してコミュニティを形成し、人々をつなげる」というのをミッションとしているからです。そして、JTBは旅行だけではなく地方創生・創造とかインバウンドなど、様々なテーマに取り組まれていることを知り、Peatixも小さなベンチャーながらそういう領域で貢献していきたいと強く願っていたので、一緒に良いものを作れるのではと確信を得て、今回の提携に至りました。うちの両親も大喜びです。今後の展開を本当に楽しみにしております。
上田:我々JTBからの思いも簡単に。いまトラベルエージェンシーとご紹介いただいた通り、JTB は旅行会社だと捉えられています。しかし、私どもはいわゆる旅行業から、皆さまの地域や日々の生活の中の課題を解決するパートナーになりたい・・・とシフトチェンジをはかっているところです。「地域をどうやって元気にするか」というテーマを考えていく中でPeatixと巡り会い、原田CEO含め、Peatixが持つ「人々の日々の生活を豊かにする、人と人とのつながりを大事にする」という思いに強く共感しました。その上でPeatixの機能やデジタルテクノロジーについても魅力を感じ、先日の提携に至ったという経緯です。
PeatixとJTB、それぞれにおけるこれまでの取り組み
Peatixの事業展開について
では次に、それぞれの会社が今まで取り組んできた事についてお話をしたいと思います。まず原田さんからPeatixの取り組みについてお話をしていただきます。
原田:我々は「電子チケットのPeatix」と言われることが多いですが、実はそうではなく「コミュニティを通して人をつなげる」ということをミッションにしており、チケットはあくまでその中のひとつと捉えています。大型の興行イベントを扱うサービスではなく、まさに本日のような、人々が交流してつながるn対nのイベントを主にサポートしており、これは2011年のサービス開始から変わらず今日まで至っています。日本だけでなく海外、特にアジア地域での広がりがあり、そのエリアを中心にインバウンドというテーマでもJTBと一緒に事業を作れるのではと考えております。
サービス開始は2011年の5月、震災の直後でした。開始前には、インディーズ音楽のアーティストや劇団などに使われるかと予想していましたが、立ち上がりは全く異なり、震災直後の復興を支援するNPOなど、当初からコミュニティ性の高い領域で活発に使われています。日本が一番大きいマーケットではありますが、現在世界27カ国でサービス展開しており、会員数は350万人。もっと増やしていきたいと思っています。実際にイベント主催している方々もどんどん増えていて、これまでの延べ動員数は620万人、延べイベント数も34万件。参加者数20人程度の「ミートアップ」と言われるコミュニティ性の高いイベントのサポートをメインの事業にしております。
弊社の事業やどんなイベントがあるのかということを、数値も交えながら紹介する動画がありますのでご覧ください。
本当に様々な趣味嗜好や想い、活動に人々が集まっていくというイメージですね。東京だけでなく、色々な地域で人々が集まりコミュニティを形成していく。そんな世界を想像しながら頑張っているベンチャー企業です。
JTBの事業展開について
上田:本日は「地域の新しい魅力・価値づくり」というテーマのイベントなので、我々の数々のソリューションの中から「地域交流事業」という取り組みについて簡単にお話します。
JTBは、最初は「鉄道や航空券などのチケットの代売の会社」、次に「パッケージ旅行を自分たちで作って値付けして売る会社」という流れで成長してきました。しかし、インターネットなどで色々なものが買える時代になり、求められるものが変化する中で、新しい価値を作っていかなければと考えています。
このような背景の中、私達が取り組んでいく事業ドメインを「交流創造事業」と定義しています。旅行ももちろん強みなのですが、地域内や地域間で様々な交流が新しく生まれていく、そしてそれによって多くの人々の間でつながりができる。そういったことを応援する事業を実現したいと考えています。JTBも日本だけではなく世界中にネットワークがあり、多くの社員が、日々地域交流の創造に向けて頑張っています。
JTBというと店頭やコールセンター、紙のパンフレットというイメージをお持ちかと思うのですが、そういったヒューマンタッチの面で頑張ってきた自負がある一方で、デジタルには極めて弱いという面があります。ここを何とかしようと考えており、今回Peatixとご一緒する大きな理由の一つもそこなのですが、「ヒューマンタッチ、デジタル、オープンイノベーション」の3つを軸に新しい価値を作っていきたいというのが私たちの思いです。
次に、地域の魅力発信のための事業についてご紹介します。それぞれの地域に様々な課題がありますが、私たちはその相当数を観光や交流で解決していけるのではないかと思っています。言い換えればツーリズムの力による課題解決です。単なる移動の手段や宿泊の手段としての旅行ではなく、観光や交流で課題解決ができるようにしたい。これが私たちの地域交流の根本的な考え方です。
考え方としては、「発地」つまりお客様が住んでいる出発地と、実際にお客様が訪れて交流が発生する「着地」、この両方に対してしっかり価値提供をしていく必要があると思っています。発地側で、旅行や交流に参加する方へのマーケティングも必要ですし、逆に着地側では、地域の魅力は何なのか、どう発信すれば人が来てくれてリピートに繋がるのかといったことを考えなくてはいけません。
この2つのサイクルがぐるぐる回って「交流人口」が増え、その結果地域が活性化するようにお手伝いしていくのが私たちのアプローチです。単に地域の皆さんからお金を頂戴してその分だけ働いておしまい・・・とは思っていません。地域に寄り添いながら、課題解決までしっかりご一緒したいという思いでやっています。
「つながりづくり」とは
これらを踏まえて、本日の大きなテーマとして掲げている「つながり」についてお話をしていきます。
継続的なつながりをつくるコミュニティ
原田:「つながりづくりの取り組み」ということで、イベントって「一過性のもの」
という思われがちなのですが実は全然違って、イベントでの出会いや交流がコネクションとなり、新しい人がどんどん巻き込まれてコミュニティが成長するということの繰り返しです。地域創生というテーマにおいても、数日間旅行に行くだけでなく、地元の新しいものや人々と出会い、そこがコミュニティ化して広がっていけば、これまでと違う観光のかたちが作れるのではないかと考えています。
Peatixの仕組みでできることのひとつは、「プラットフォーム機能」の活用です。Peatixに掲載されるイベントには、カテゴリーを記した「タグ」がついており、あるタグがついたイベントへの参加者に対して、同じタグがついた新たなイベントなどをオススメとして紹介しています。大手のチケット販社が東京ドームイベントのチケットを3万人に販売したとしても、その3万人の細かい趣味嗜好といったデータは多分お持ちでないですよね。Peatixには多種多様なイベントカテゴリーがあり、そこを活用しながら効果的な集客ができるのではと考えています。
異文化間の交流
続いてインバウンドについて。Peatixは日本語と英語でサービスを提供してきたのですが、先日中国語(繁体字)に対応しました。今後は簡体字やアジアの他の言語にも対応して、アジア全体で面白いイベントやコミュニティを発見してもらい、どんどん人が動いて交流する世界を作っていきたいと思っています。
新しい体験価値の創出
上田:地域行政や観光事業者の方がお持ちの大きなテーマの一つに、訪日外国人増加に伴う新たな交流人口に紐づいた「異文化」があります。もう一つは、価値が「物を買う」ことから「体験」にシフトチェンジする中で、その地域特有の体験をどのように発見・発信するか・・・というテーマです。
原田:そうですね。札幌雪まつりのような、ガイドブックに載っている有名なイベントはもちろんですが、実はその周辺にも、ニッチな面白い体験ができるイベントやコミュニティがたくさんあります。そこをどのように発見してもらい、これまでにない動きを作っていくか、真面目に考えています。
具体的な事例を紹介しますと、福岡の「アジアンパーティ」、いわゆるフェスですが、アジア方面からの送客を一つのテーマにしています。Peatixは日本だけでなく海外にも多くの会員がいるので、その方々に向けて告知をするという取り組みです。
まとめると、インバウンドではサービス提供言語・カスタマーサポート含め多言語に対応していき、海外のユーザーベースも活用しながら、日本全国の色々なイベントをご案内するということですね。あとは、大都市在住者に対して、近隣にとどまらず様々な地域のイベントを紹介して現地を訪れてもらうこともできると思います。地域が抱える問題点の解決、例えばオーバーツーリズムなどを解決するツールとしての役割も果たせます。JTBと弊社が自治体とつながり、課題とニーズを拾いながらJTB×Peatixでの総合的なソリューションを提供できるのではと思っています。
つながりデザイン360
上田:今までお話ししてきたことを踏まえて、Peatix とJTBが一緒になってできることについてお話しします。我々はこれを「つながりデザイン360」と名付けました。地域のニーズに対して360°に渡って様々なソリューションを提供できるというイメージです。
イメージを形にするとこのような感じです。右上の緑色のところから順番に説明します。まずは「関わり・きっかけづくり」これは非常に重要ですね。やはり居住人口が多いのは都市部なので、各地域とすると、まず都市部の人々にアプローチしたいというニーズがあります。都市部から地域に来ていただき、地元の人とつながったり、来た人同士で交流してもらいながら地元とのつながりを作り、最終的には本当に持続的な関係性として、定住・移住ということも含めて深いつながりを作っていく。これをぜひ一緒にやっていきたいと思っています。
「関わりのきっかけづくり」
次にそれぞれを個別にお話ししていきます。まずは4分割して、「関わりのきっかけづくり」ということで、地域の魅力を伝えるとか、ワークショップを開くとか、この辺りについてはどんな取り組みができますでしょうか。
原田:先ほどイベントのカテゴリーデータに基づくオススメ機能についてはお話ししましたが、Peatixをみていると最新のトレンドをつかむことができます。公開されるイベントをみていると、変わってるけど最近こういうイベントが増えている、次のトレンドになりそうだということが察知しやすい環境なのです。そういったトレンドの兆しも踏まえながらコンテンツを考え、自治体・地域の企画づくりにお役に立てるかなと考えています。
上田:JTBは、地域の観光協会や観光課、行政の皆さまの課題や地域戦略について日頃からしっかりお伺いをしています。一方でPeatixはユーザーという個人がどんな趣味嗜好、価値観を持っているかというデータを持っているので、戦略づくりのJTBと、個別の動向を把握しているPeatixの力を組み合わせることで、「関わりのきっかけづくり」の内容をブラッシュアップできるのではと思っています。
大都市でつながる
上田:では次の部分に移りましょう。先程もお話しましたが、良いものができたらまずは都市部の方々にそれをしっかり認知してもらう。そして都市の中でも地域のファンコミュニティなどを作れたらと思っています。この辺りにはどうアプローチできるでしょう。
原田:個人的には物産展などは大好きですが、もっとニッチな、「20〜30人規模の地酒イベントに情熱を持って集まっているような人たち」にアプローチするチャンスが隠れていると思います。このコミュニティに集まる方々は、そのような文脈に関連する地域に強く興味をお持ちです。そういう方をいずれは本場にお連れする、つながりを作る。この導線ができればと思っています。
地元でつながる
上田:そうやってできた特定のテーマを持つコミュニティの皆さんが、実際に地元のイベントを現地で体験してもらうことが大事だと思っているのですが、こういう動きも増えていますよね。
原田:増えていますね。まず、東京で何かのテーマで集まり、いよいよみんなで現地に行こうという流れはたくさんあります。我々としては、ここをどう後押しできるかを考えたい。例えば、お得な航空券と宿泊プラン付きなどの企画を作れると思うし、そこの導線を今後強化していきたいですね。一部でそういった取り組みは始まっていますが、航空会社やホテル・旅館からしてもそこはターゲットしやすいですよね。そこのソリューションを御社が提供して頂けるとお客様も喜ぶと思っています。
上田:イベントという形態のものだけではなく、地元に散らばる地元ならではの体験や交流を我々が合わせてご紹介することで、さらに地域内での回遊が促進されると思っています。
原田:そうですね、そうして一度きりで終わるのではなく、毎年訪れるという流れができればと思います。
継続的な関係づくり
上田:まさにそうですね。最後のパートですが、やはり継続的な関係づくりがとても重要だと思っています。これはリアルな関係だけではなく、オンライン上のコミュニティもそうです。
原田:Peatixの具体的な機能でいうと、主催者グループをフォローする機能があります。フォローをすると、その主催者が新しいイベント公開した際にいち早くお知らせが届きます。今後はメンバー間のコミュニケーションを活発にする機能を強化していきたいと考えています。本当に何度も言いますが、イベントに行くだけ、旅行に一回行くだけではなく、そこでお互いに仲間が見つかり、一緒に釣りに行くとか、地元の人と交流するとか、そういったことを我々はPeatixの機能でサポートできればと思っています。
上田:ここまで4分割してお伝えしてきたことをまとめると、都市と地域、地域内どうしを含めていかに新しいつながりを作っていくか、そしてそのつながりを心地良いと思える場づくりや体験をどのように提供していくかということだと考えています。
原田:そうですね、そしてそれに伴う課題に対して、テクノロジーからコミュニティまで様々な角度からアプローチして解決するということを2社で実現できればと。そういう意味での360°だと思います。
上田:この後の第2部では、いま、お話したような内容の具体的な事例や、実際の取り組みの中身を深掘りしてお伝えします。この「つながりデザイン360」でPeatixとJTBで地域を元気にできる新しい課題解決を提供していきたいと思っていますので、改めてよろしくお願いします。
では、第1部トークセッションは以上とさせていただきます。ありがとうございました。