一人のバカな若者のお話 〜Peatix Inc.設立の発表に際して〜

  Peatix Inc.設立の発表詳細についてはプレスリリースや、これから掲載される各メディアの記事をご覧頂きたい。こんなタイミングだけど、一人のバカな若者の話がどうしてもしたい。 2007年夏のこと。起業に向けて準備中だった僕らは毎週、現CMOの竹村の(豪華)マンションに集まり、ビジネスモデルなどについての議論を重ねていた。いつの間にかそこに一人の若者が加わり、熱心に話を耳を傾けている。聞けば藤田遼平という23歳の社会人一年目の男の子だった。某巨大企業に就職済みであり、その会社で研修を受けている最中とのことだった。やがて僕らは当時は極秘プロジェクト名であった”Orinoco”をそのまま会社名として登記した。すると遼平君、今度は安定したキャリアを保証されているその巨大企業を退社し、出来立てホヤホヤのOrinocoに入社すると言う。 バカである。 外資系ネット企業である程度順調なキャリアを積んでいた創始メンバーによる起業とはいえ、一寸先は闇というのがベンチャー企業の宿命である。起業当時は当然のことながら希望に燃え、成功したらフェラーリかポルシェどっち買う?なんていうバカ話に花を咲かせていた。非常に稚拙であり、バカである。そんなちっぽけな会社に、大企業でのキャリアを捨てた上で加わるなんて・・・極上のバカである。 案の定、起業してからの数年は失敗の連続。やることなすこと全く結果が付いて来ない。「おいおい、また失敗かよ」と悲観的にもならざるを得ない。フェラーリを買うどころか持っているクルマもガリバーに売っぱらい、家族や友人にも迷惑をかけ続け、会話の内容も「いかにワンコインで飯を食うか」 といったテーマが中心。遼平君はそんな状況の中でも汗水垂らしながら営業や人脈作りに奔走してくれた。希望の光さえ見えない状況の中でよくやってくれたと思う。 シリコンバレーに頻繁に足を運ぶうちに、やがて米国ベンチャー企業の日本進出を手伝う仕事が増え始め、ついには彼等のサービスの国内総代理店として運営する事業が伸びてくる。何とかテーブルの上に飯を乗せることが出来るような状態になった。だけどいつもギリギリ(今もギリギリ)。チームの皆が必死にやってくれたし、特に遼平君の頑張りがなければ、とっくに会社は潰れていたはず。 このまま既定路線を進めばちゃんと飯は食えるのだと思う。もしかしたらベンツぐらい買えるかもしれない。だが僕らはバカなので次の一手を打つことにした。何とか利益を絞り出し、それをPeaTiXというソーシャルチケットサービスの開発に投資することにした。今年の5月にサービスを立ち上げてみると、不思議と結果が付いてきた。今にして思うのだが、これまでの数々の失敗から学んだものが多かったからこそ、PeaTiXが現在の可能性を示してるのだと思う。そして遼平君が築いてくれた人脈やリレーションが今になって大きなプラスとなっているのである。 そして本日の発表。PeaTiXをより進化させ、グローバル展開出来るよう体制を整えた。米国にPeatix Inc.という新法人を設立し、シリコンバレーにオフィスを開設し、グローバルなサービスを開発できる優秀な人材を集める。グローバル展開を後押ししてくれるような日米の投資家にも加わって頂く。ようやくスタートラインに立てた、と身震いする。まだまだ先の道のりは長いけど、「チャンスを掴んだ」という思いで一杯だ。 奇しくも本日は藤田遼平君の最終出社日でもある。遼平君は新たなチャレンジを求めて米国へ留学することにしたのだ。やっぱりバカだな、と思うと同時に、我が社で一緒に頑張ってくれた4年間が苦労と失敗の連続であったことに対して申し訳ない気持ちである。遼平君が費やしてくれた4年間のうちの9割以上の時間が「失敗」に分類されるはず。そこから抜け出し、これからPeaTiXが大きく伸びて、この企業体もようやく次の段階に進む、というこのタイミングでの巣立ち。複雑な気持ちだ。 せめて数年経った後、僕らも遼平君も今よりは少しばかりwiseになり、他人から「成功したんだね」と言われるぐらいのレベルまで進んでいることを願うばかりだ。この4年間の一つ一つの「失敗」という点が繋がり始めることを願う。 さて、明日からさらに忙しくなる。遼平君も僕も間もなく渡米し、それぞれが次の光を模索しながらバカ道を突き進む。 Steve Jobsが”Stay Foolish”と言うとカッコいいけど、遼平君と僕らは日の丸背負ったカッコ悪いバカ同志。それでもいいや、と思うのである。  

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