Peatixを立ち上げるまでのキャリア、生い立ちについて〜次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック・インタビュー全文掲載

去年の12.24に書籍「次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック」が出版されました。アーティスト達が、自分たちの力で宣伝やマネジメントができるようになるための活動をしてきた永田純氏によるもので、Peatixも「誰でも使えるEチケットサービス」として紹介して頂きました。代表・原田卓のインタビューも一部掲載されていますが、出版社の許可を得て、元になったインタビュー全文をここに掲載します。"
音楽家の家庭での生活や、ソニー・ミュージック、Amazon、Appleでのキャリアについて、Peatix立ち上げのきっかけやそのビジョンについて、ご紹介いたします。

次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック 知恵とノウハウ、みんなでシェア!

著者:永田 純
出版社: リットーミュージック
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Q01:Peatixを立ち上げるまでのキャリアについてお聞かせください。また、Peatixはなにを目指して立ち上げられたのでしょうか?

僕はアメリカの大学を1997年に卒業しましたが、周りが皆ファイナンスやコンサルティング、弁護士・医者などのキャリアを目指す中、どうしても音楽に携わりたいと思い、幼い頃から憧れの会社であったソニー・ミュージックエンタテインメントに入社しました。ソニー・ミュージックというよりソニー傘下のColumbia Recordsに憧れていました。ビリー・ジョエル、スプリングスティーン、ディラン、マイルス・デービス、ジェフ・バックリーなど、僕がハマっていたアーティストの殆どがColumbiaからレコードを出していたからです。97年にソニーに入社したのですが、まさにちょうどNapsterなどが音楽配信ビジネスの可能性を示し始めた頃ですが、当時会社は新しいビジネスに消極的。その姿勢に幻滅し、ソニーを退社してアマゾンに日本の音楽ストア担当として入社しました。その後アマゾンでは書籍以外のメディアカテゴリー(音楽、DVD、ゲーム)、マーケティング、モバイルなどを担当し、アップルではiTunes Music Storeの日本上陸を担当、そしてPeatixを立ち上げる直前はYOOXというイタリア発のファッションEコマース会社の日本代表の仕事をしていました。

Peatixの当初のビジョンは、音楽ビジネスが大きく変化していく中で、個々のアーティストが自ら公演のマネジメントをするようになるのでは、という考えに基づいています。立ち上げてみたら音楽以外のジャンルのイベントで使われ始めましたが、最近になってようやく音楽ライブでも使われ始めています。根幹にある基本テーマは「大企業ではなく中小企業や個人のempowerment」です。

Q02:ご自身の音楽(あるいは、お好きなカルチャー/ アートなど)との出会い、現在の音楽との関わりについてきかせてください。

父が実はバイオリニストなのですが、彼は日本のクラシック音楽家を世界中に広げていった桐朋学園の斎藤秀雄先生の門下生です。父は1960年代後半にニューヨークのジュリアード音楽院に留学するために渡米し、ニューヨークで東京クァルテットを結成し、その東京クァルテットはミュンヘン・コンクールで1位を獲得し、クラシック音楽では最高のレーベルであるドイチェ・グラモフォンとレコード契約をしデビューしました。父がこうしてニューヨークでキャリアを築く間に、父と同じく桐朋で声楽を学び、ウィーンに留学していた母がツアー中だった父と再会して結婚、ニューヨークで結婚生活を始めて僕は生まれました。こうした音楽的な環境で僕は育ちました。ビジネスやお金の話などとは無縁の、ただひたすら家の中でオペラやクラシック音楽が流れてるような環境です。

父の音楽仲間が夜な夜な集まり、音楽談義で盛り上がっているのをいつも聞いていました。そして物心がついた頃から演奏会に連れて行かれていました。バイオリンやチェロも習っていました。ですので僕の原点はやはりクラシック音楽です。ロックやポップスを聴くことは基本的に禁止されていたのですが、何故かビートルズのMagical Mystery Tourのレコードが家にあり、父はいつも「ロックは下らない音楽だけどビートルズだけは素晴らしい」と言っていました。そのMagical Mystery Tourをレコードがボロボロになるまで何百回と聴いていました。

そして、今でもハッキリと覚えているのですが、ビリー・ジョエルが1982年に「ナイロン・カーテン」というアルバムを出していますが、偶然テレビをつけてみたら、その「ナイロン・カーテン」の1曲目である「アレンタウン」という曲をビリー・ジョエル演奏していて、それがあまりにも衝撃的でした。まだ僕が9歳の時です。その瞬間からビリー・ジョエルのファンどころか完全なフリークです。日本一のファンだと思っています。歌詞は全て覚えています。彼の誕生日やピアノの先生の名前まで知っているほとです。ここからありとあらゆる音楽を聴きまくる人生の始まりです。お小遣いの大半はレコードやCDに注ぎ込んできました。9歳の頃からビートルズ、ビリー・ジョエル、スプリングスティーン、ディラン、ジャズ、クラシック音楽全般を聴きまくっていました。まあ何と生意気なガキだったのだろう、と今でも思います。11歳で日本に引っ越したのですが、友達が聴いている日本のポップスは何が良いのか全く理解できませんでした。

キャリア面でもソニー・ミュージック、アマゾン、アップル、そしてPeatixで音楽と関わることが出来て、とても幸せです。今年で40歳になったのですが、やはり年取って来たのか、今はクラシック音楽を聴くことが多いです。原点回帰です。そして子供が二人いるのですが、ニューヨークで娘はバレエ、息子はチェロを勉強しています。彼等の音楽人生が既に始まっています。

Q03:上にお答えいただいた音楽との関係は、Peatixを立ち上げるに際し、どのように影響していますか?

最初の質問でお答えした通り、当初は音楽アーティストに使ってもらうことをイメージしてPeatixで立ち上げました。父がアーティストなので、音楽アーティストがどういったことを考え、どういったことで悩むのか、肌感覚で分かっているつもりです。そしてレコード会社、インターネット会社でのキャリアを通して音楽ビジネスの変化を前線で長年見てきたので、今後の方向性などもある程度予想できていると思います。Peatixはそんな中で、音楽ビジネスにとっても重要な役割を果たせると信じています。

Q04:日々のPeatixの運営に於いて最も重点を置かれていること、留意されていることはどんなところでしょうか?

イベントの主催者が抱える懸念点を取払い、問題を解決してあげることです。運営コストの削減、イベント参加人数の最大化、そしてイベントに来てくださる参加者のイベント体験をより充実化させることです。しかもセルフサービスで全て出来るようにするのが目標です。まだまだやりたいことの1%も実現できていませんが、コツコツとこれらのテーマに取り組んでいきます。

Q05:Peatixが広がっていくことによって、何を期待されていますか?

「Peatixがあったからイベントを開催でき、結果的に色々な思いや考えや感情を共有することが出来た」という事象が広がっていくことを期待しています。人々が集って交流するのは素晴らしいことだと思います。Peatixは、人々の交流の場を増やすという意味で、より良い社会を実現するためのツールになり得ると信じています。そしてPeatixは音楽ビジネスにとっても今後大きな付加価値を生み出せると思っています。「小さいベンチャーに何が出来る」と思われる方もいると思いますが、Peatixは常に飛躍的に伸びていますし、このペースを維持すれば数年後は皆様の予想を遥かに超えた存在になっているはずです。

Q06:今後の音楽、あるいは社会の中での音楽のあり方についてお考え、期待されることなどあれば、お聞かせください。

音楽ビジネス自体はネットを中心とした環境変化の波の中で大きく変化していますが、最も重要である音楽の創造と消費のサイクルは衰退するはずがないと思います。僕がレコード会社にいるころは、一枚のアルバムを作るのに何千万円ものコストがかかりましたが、今だと数百万円どころか数十万円で作れます。消費に目を向けてみればSpotifyやiTunesのお陰で、いつでもどこでも好きな音楽が聴けます。誰が何と言おうと、音楽のビジネスモデルは進化しています。文句を言っているのは時代に追いつけず、既得権益を失いつつある人だけです。そして、例えばレディオヘッドなどのアーティストはメジャーレーベルに頼らずに楽曲を制作し、ファンにダイレクトに販売することによってアーティストとしての方向性を自らコントロール出来る立場にあります。

このようなアーティストが規模の差異はあるにせよ、増えて来ているのは喜ばしいことだと思います。昔のようにマスメディアの露出に頼らずに十分に生計を立てることが出来る時代になりつつあります。DIYというと既に言い方が古いかもしれませんが、良い音楽を生み出し、どのようなファンベースにどのような形で届けることが出来るのか、こういった方向性と決断をアーティスト自身がコントロール出来るのは素晴らしいことだと思います。Peatixもその際の選択肢の一つになれるように、今後もチーム一同、切磋琢磨してより良いサービスに育て上げていきます。

原田卓 プロフィール
Peatix Inc. CEO / Orinoco Peatix株式会社 取締役
略歴:1973年生まれ。東京に生まれるも生後数ヶ月でニューヨークに移住。リベラル中道左派の音楽家の家庭で育ち、幼少期から世界中を旅行し、音楽家やアーティストに囲まれながら育つ。
1997年ソニー・ミュージック入社、海外契約業務に従事。2001年アマゾンジャパン入社、エンタテインメント部門統括。2005年アップル入社、iTunes Music Store立ち上げおよびマーケティングに従事。
2006年アマゾンジャパン再入社、マーケティングおよびモバイル統括。2008年YOOXジャパン代表取締役就任。2009年Orinoco株式会社設立し、代表取締役に就任。2011年12月より現職。米イェール大卒。
Twitter/LinkeIn

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