プロが伝授!家庭用機材でできる、ワンランク上のイベントオンライン配信ガイド

 

イベントのオンライン配信を検討している主催者の方が増えてきました。

イベントをオンライン配信すると、遠方であったり、自宅を離れられずに会場に行けない人も遠隔で参加が可能になりますし、動画のアーカイブを配布すれば、当日都合が悪い人でもプログラムを視聴することが可能です。

 

今は動画配信アプリも多数あり、スマートフォンで簡単なライブ配信をすることができます。ただ、プレゼンテーション用の資料を映したいなど、少し高度な配信ができたらと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そこで、今回はビデオカメラなどを活用したオンライン配信の方法をお伝えします。初心者の方にもわかりやすいシンプルな方法を、音楽ライブからセミナー、カンファレンスまで数多くのインターネットライブ配信を行って来られた、株式会社CAMBR(キャンバー)の飯寄雄麻さんに寄稿していただきました。

*この記事は、飯寄さんからいただいた原稿にご本人の了承のもと加筆・修正を行って作成しています。


はじめに:この記事で想定しているイベントの内容・規模

今回は、3〜5名の登壇者がいるトークイベントなどを想定した、ライブ配信のワークフローを説明します。
家庭用のデジタルビデオカメラなどを活用して運用を可能な限りシンプルにし、かつスマートフォンでの配信よりもワンランク上の配信システムの構成です。

 


今回の配信システムの概念図

今回の配信システムで必要になるのはカメラ、キャプチャーデバイス、配信用PCです。これらを下の図のようにつないで使用します。

配信システムの概念図

 


1. 最低限揃えなければいけない機材

デジタルビデオカメラ

  • SONYのハンディカムシリーズなどがオススメです。
  • 映像のHDMI出力が可能なカメラを選択してください。
  • 一眼レフカメラやGo Proなどのアクションカメラは、映像出力設定が複雑なため適していません。

音声機材について

  • シンプルな構成にするため、音声はデジタルビデオカメラのマイクで集音します。
  • USBで接続可能な会議用のスピーカーフォンなどで対応することも可能です。

三脚

  • カメラが定点で固定できるものであれば問題ありません。Amazonなどで5,000円以下で購入できるものでも十分です。

ビデオキャプチャーデバイス

  • カメラの映像を配信用PCに取り込むための機材です。
  • AVerMedia社のLive Gamer Portable 2(AVT-C878)がオススメです。
    • 業務用機器だと、配信用PCにドライバーのインストールなどが必要ですが、上記機材であればUSB接続をするだけで使用可能です。
    • 数多くのゲーム実況者も使用しており、機器単体でmicroSDを使った録画(単体録画モード)機能も搭載しています。
    • 配信モード(PCモード)か録画モード(単体録画モード)か、どちらか一方しか選択できない為、配信を行う際は配信モード(PCモード)に設定し利用してください。

配信用PC

  • Windows/Macどちらでも構いません。
  • 極端にスペックの低いモデルでなければ、ノートPCでも配信可能です。
  • OBS(配信用ソフトウェア)をインストールしてください。

    > OBS Studio ダウンロード

    Windows/Mac/Linuxに対応したビデオ録画、生放送用の無料のオープンソースソフトウェアです。数多くの配信者が使用しており、インターネット上に使い方を説明する記事も豊富にあります。


2. 収録場所の環境設定

収録場所

  • ある程度の明るさがあれば、特別な照明機材を入れず、カメラの設定で配信可能です。
  • 登壇者とカメラ位置が適した画角に設定できるくらいの広さがあると好ましいです。

インターネット回線について

  • 回線スピードは上り下り40Mbps以上が推奨です。20Mbpsでも画質の設定次第で配信可能です。

    > スピードテストサイト

  • Wi-Fi回線で上記の回線スピードが出ていたとしても、可能な限り有線LANの利用を推奨します。
  • オフィスなどで配信を行う場合は、セキュリティ設定に気をつけてください。
    • 社内セキュリティの都合上、ライブ配信が行えない場合があります。
    • 不明な場合は、施設のシステム管理者に確認してください。

3. ライブ配信の準備の手順と、気をつけるべきこと

映像編

  • まずはじめに登壇者の位置を確定させ、その後カメラセッティングを行います。
  • カメラから近い位置に配信用PCなどの機材を設営してください。
  • 各ケーブルを接続し、カメラはACアダプタで電源を供給しながら使用してください。
  • HDMIは通常5〜10mの長さが推奨されています。(10m以上のHDMIケーブルを使用すると、機器によっては映像伝送が行えなくなる場合がありますので注意してください)
  • カメラごとにメニュー画面から画質や色味の設定が可能なので、適宜調整を行ってください。

うまくいかないときは

  • 映像の信号が送られないなどのトラブルがあったときは、カメラ設定→キャプチャデバイス設定→配信用PC設定の順で確認してください。
  • 上記の順で確認しても正しく設定できない場合は、ケーブルなどを交換するといった手順で解決してください。

音声編

今回は、ピンマイクなどを使用しないシンプルな構成のため、カメラに付属しているマイクを利用して音声を集音します。

  • カメラで正しくマイクの音量設定が行えているか確認してください。
    配信用PCの内蔵マイクなどが反映され、意図しない音声がミックスされないよう注意してください。
  • カメラのマイク性能に依存するため、会議室など環境に応じた静かな場所で配信を行ってください。
  • 配信PCへとUSBなどで接続する会議用スピーカーフォンを使用することで、より明瞭な音声を集音することも可能です。
  • 会議用スピーカーフォンを使用する場合は、配信用PCのデバイス設定やOBSの音声入力の設定に注意して使用してください。

    スピーカーフォンはヤマハ(YAMAHA)社のユニファイドコミュニケーションスピーカーフォン(YVC-330)がオススメです。

    > YAMAHA ユニファイドコミュニケーションスピーカーフォン YVC-330

配信用PC(OBSの設定)編

  • 各機材ごとのケーブルの接続が完了したら、配信用PCとソフトウェア(OBS)の設定を行います。
    OBSの使い方に関してはインターネットやフォーラムに数多くまとまっているため、割愛します。
    参考:OBS Studioの詳しい使い方・設定方法
  • ここでは、映像と音声が正しく配信用PCに読み込まれているかを重点的に確認してください。音声は、配信用PCにイヤホンなどを接続してチェックしてください。
    • 画質などを配信用PCに合わせた設定にしないと、映像がカクカクしたり止まったりすることがあります。
    • 音声が正しく設定されていないと、エコーのように二重に聞こえることがあります。

4. スライドをうまく配信するには

  • スライドを画像(JPG等)に書き出し、OBSに読み込みます。
    • 配信用PCでスライドの画像を適宜切り替え、プレゼンテーションを行います。
    • 配信用PCを操作するオペレーターが必要です。
  • 登壇者用に配信用PCを別のモニターへとつなげ、表示画面を複製すると、登壇者が資料を確認しながらプレゼンできるのでオススメです。

5. 事前の配信テストのやり方

  • 基本的にどのライブ配信プラットフォームも、RTMPという動画や音声のストリーミング配信/再生の仕組みを利用しています。
  • 配信用PCまで問題なく映像や音声が取り込まれていることを確認し、配信テストを行います。
  • テスト配信を行う場合は、非公開もしくは限定公開の配信イベントを作成してテスト配信を行います。
    プラットフォームによっては、非公開での配信が行えない場合があるので、ご注意ください。
  • テスト配信が終了したら、本番用の配信イベントを作成して公開し、本番用URLを視聴者へと案内して準備完了です。

6. 配信プラットフォームの選択で気をつけるべきこと

  • YouTubeライブ、Twitterのライブ放送(Periscope)、Facebookライブ動画に関しては上記の方法でライブ配信が可能ですが、Instagramのライブ配信はスマートフォンアプリにのみ対応しており、PCからは配信・視聴ができません。
  • 各プラットフォームごとに、ライブ配信を視聴できる環境が異なるため(ログインの要不要やアプリ・ブラウザなどデバイスの違い)、プラットフォームの特性を理解したうえで配信プラットフォームを選択してください。

7. 視聴者側にあらかじめお願いしておくと良いこと

参加者には以下のようなことをあらかじめお伝えしておくと良いでしょう。

  • 安定したインターネット環境で視聴すること
  • 放送した映像のアーカイブは後日視聴が可能かどうか(可能な場合は閲覧期限も合わせて伝えると良いでしょう)
  • 積極的に質問やディスカッションをして欲しい場合、参加を促す(チャットやコメントなどでディスカッションできる場所を用意するとコミュニケーションが取れます。スタッフに余裕があれば、リアルタイムでコメントを拾う人を配置できるとスムーズです)

コメントの受付にオススメなサービス

各配信サービスに視聴者のコメント機能が付いていることも多いので、それを活用するのも良いでしょう。ハッシュタグを作って、Twitterで質問を受け付けるイベントもあります。

質問の受付にオススメなサービス

slido (スライドゥ)

参加者からの質問を匿名で受け付けることができます。また、主催者側が選択肢を作ったアンケートや、クイズをリアルタイムで実施することも可能です。
主催者は登録が必要ですが、参加者はブラウザから主催者から知らされたURLにアクセスし、コードを入力すると登録なしでslidoを使うことができます。


以上が、初めてオンライン配信に挑戦する方に、順を追って準備ができるガイドです。

オンライン配信を成功させるには、スケジュールに余裕をもたせた準備が重要です。参加者役をもうけて、質問のやりとりなどを含めたリハーサルができると安心です。オンライン配信を実施して、より多くの人にイベントを届けてください!


寄稿者プロフィール

飯寄雄麻(いいよりゆうま)

飯寄雄麻

87年生まれ、静岡出身。
広告代理店を経て、これまでクリエイティブエージェンシー・Loftworkやソーシャルテレビ局・2.5Dに従事。
プロデューサーとしてデザインコンサルティングファーム・THINKRに2017年12月まで所属し、その後独立。

2019年10月にクリエイティブユニオン・CAMBR(キャンバー)を設立。
現在も音楽ライブからセミナー、カンファレンスまで数多くのインターネットライブ配信を担当している。

Web:https://cambr.jp/
Twitter:https://twitter.com/Eyori_jp

 

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