この記事は、Peatixが配信するポッドキャスト番組Peapodの2020/03/11配信回「Peapod#9: 看護師と考える”新型コロナショックに負けない『イベント開催時の感染症対策』”」の要約版です。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くのイベントが影響を受けました。オンラインイベントが普及する一方で、オフラインでイベントを開催したい場合もあると思います。人が集まる場である「イベント」は、感染症にどのように向き合っていけば良いのでしょうか。
現役看護師であり、健康について考えるきっかけづくりをしているコミュニティ「看護師ーず」の樽見春香さん、山賀雄介さんをゲストにお迎えし、イベント主催者&医療従事者としての目から、イベントでの感染症対策や、主催者・参加者が気をつけると良いことについて、お話を伺いました。
(以下、2020/03/11に収録したPodcast番組の要約です)
[ゲスト]
山賀さん(がーすけ):
訪問看護や障害者の相談支援に従事しながら、”おせっかいで街を元気にする”コミュニティナースとして活動。ペットボトルでできる心肺蘇生マッサージの普及啓発や、カフェの店員などをしながら街に潜り込んでいる。
樽見さん(たろみー):
”働く人と組織の健康を作る”をビジョンとした株式会社iCARE勤務。産業保健職向けのサービス「ケアリー」のカスタマーサクセスなどに従事。
[ゲストMC]
河原あずさん (コミュニティアクセラレーター)
[MC]
Peatix藤田
[イベント開催前]
最初のポイントは会場選び
濃厚接触を避けよう!
山賀:「濃厚接触」という表現をよく聞きますよね。日本産業衛生学会が出している「濃厚接触」の定義は「半径2m以内で60分以上接している」です。
なので、「2m以上の距離を取る」、「60分以内で終わる」、「定期的な空気の換気をする」などの環境を整えることがポイントではないでしょうか。あとは、会場の広さに対する定員の設定も、今までとは異なる視点での検討が必要そうですね。
藤田:そういう意味では、一概に人数というよりは、人口密度がポイントですね。100人いても、すごく広い場所であれば濃厚接触じゃない。
山賀:例えば野外フェスは、ステージの前に人が集まらないようにするだけでも環境を整えられると思いますね。
換気はリフレッシュして集中力を保つためにも有効
河原:快適に感じられる人口密度は気にしていたけれど、一層重要になりますね。途中休憩も大事だなと改めて思いました。1時間に1回休憩とって換気するって、参加者がリフレッシュするにも有効ですよね。長時間やっていると眠くなってくるので、その辺りは意識するといいですね。
座席配置にも気を配ろう
山賀:あとは座席配置ですね。参加者同士や、登壇者と参加者の距離の取り方や、向かい合い方にも気を付ける必要があると思います。
藤田:ワークショップや、みんなで交流する企画は人気がありますが、感染症が拡大してる時期はフォーマットを考えた方がいいかもしれないですね。
樽見:時期によってはグループワークは控えたり、登壇者と聴講者の距離をあけてセミナー型のイベントにするなどの配慮は必要かもしれないです。
マイクの共有はやめよう
山賀:あとは会場にもよりますが、マイクの準備。マイクを複数人で回すことがリスクになる場合はありますね。数が少なければ適宜アルコールで消毒したりしましょう。
河原:このタイミングに乗じて会場側にマイク増やしてってお願いしたい!
参加者の動線を考えて、手が触れる可能性のあるところを徹底消毒!
樽見:休憩の話に重なるんですけど、ドアなど、みんなが共通して触るものがあると、そこで接触感染を起こしやすいので、例えばドアをオープンにしておくとか、動線の整備は大事ですね。
あとは受付に手指消毒剤を置いておいたり、「必ずここで消毒してから入ってください」とアナウンスするとか、そういう配慮はできると思います。
イベント前後のコミュニケーションが大切
参加者が「不特定多数」とならないイベントに
藤田:主催者側からの事前アナウンスは大事になってくるんですかね、告知というか。
山賀:参加者を「不特定多数の集まり」ではなく、「特定」できるような状態にしておくことは大事になると思います。
Peatixだと参加者の氏名やメールアドレスなどを取得して、イベント後もコミュニケーションが取れますよね。参加者の連絡先を把握しておけば、実際に感染が起きてしまった時に、参加者にアナウンスして注意喚起をすることができます。
イベント前から体調管理に気を遣ってもらう
また、「イベント開催日の3日前から体温を測っておいてください」とか、「鼻水や咳などの症状がある人は来場を控えてください」という事前アナウンスもできる。コミュニケーションツールはぜひ活用すべきですね。
主催者と参加者の関係づくりが今まで以上に重要
河原:あえてポジティブに言えば、イベント開催前から主催者と参加者の関係作りができるということかもしれないですね。そうしたら参加者も「この日までは特に健康に気をつけよう」と、いつもよりも気をつけるかもしれないし。
樽見:事前にアナウンスをすることで、「この主催者はちゃんと考えてるんだな」と思ってもらえるのもいいことですね。私も、イベントの時はPeatixの一斉メールの機能でこまめに連絡をします。
山賀:個人情報の問題などもあるので、個人情報の取り扱いについての同意を得た上で情報を取得するなどの配慮も必要になりますね。
河原:「主催者としてリスクに最大限対処しています」と参加者に示していくことは、この時期特に大事だと思います。不測の事態が起きないとも限らないけれど、大事なのはそのあとにちゃんと対処できる状態を作っておくこと。それが主催者の責任として大事だと思いました。
[イベント当日]
注意喚起をポジティブなコミュニケーションで
注意喚起のアナウンスをコンテンツの一部に
樽見:私はイベントの最初に、スライド一枚で感染症対策のアナウンスをしています。「手指消毒をしてください」とか、「咳エチケットへのご協力をお願いします」とか、そういうお知らせを最初にやっておくのは有効です。
山賀:そのアナウンスをちょっとエンタメ性のあるものに変えられたりとかすると、イベントのアイスブレイクになったりしますね。
イベント当日に用意しておくと良いもの
藤田:感染症が広がりやすい時期にイベントをする場合、用意すると良いものは何でしょうか?
手洗いができる環境が重要
樽見:まずは「感染の経路を断つ」という基本に立ち返りましょう。そうすると、手洗いできる環境がすごく大事です。具体的にイベントの場合で考えると、お手洗いの場所を案内して、「石鹸があるので石鹸で手洗いしてください」とお伝えするとか。
会場の入り口にアルコール消毒を準備しておいて、受付の人が来場者の手に直接かけてしまうとか。そして、自分の消毒をしてもらいながら会場に入ってもらってもいいですね。
手指衛生の基本は、水道水の流水で、石鹸を使って洗うことです。なので、手洗いできる環境が近くにあるのが理想ですね。難しければ、アルコール70%ぐらいの消毒液で利用すればいいと言われています。
実は知らない?正しいアルコール消毒の仕方
山賀:アルコール消毒は安心感もありますが、正しい消毒方法が意外と知られていません。指先にちょっとつけて、こすって終わっている人が結構いますが、それでは不十分なんです。
なので、スタッフが、参加者の手が軽くびしょびしょになるぐらいまでしっかり噴霧をして、「よく擦りこんでください」とアナウンスできると、より効果は高いと思います。
手洗い後の、手の拭き方も重要
あとは手を洗った後に、手を拭くものですね。今はペーパータオルなどの欠品が続いているので難しいかもしれないですが、手を洗ったら水分をちゃんと取ることが大事です。
なので、事前に参加者に、ペーパータオルなどの備品の有無や、可能な限りご自身で清潔なハンカチを持ってきて欲しいということ伝えるのも良いと思います。
手をきちんと拭けて、万能に使えるハンカチは便利
山賀:手が濡れた状態だと、菌が繁殖しやすいんです。あと手荒れの原因にもなります。手に残った水分が蒸発することで皮膚の油脂が飛んで、ぱっくり割れてしまうんですね。なのでしっかり拭くことが本当に大事です。
ハンカチを持っていれば、咳が出そうな時にパッと抑えられたり、マスク代わりにもなるので、ハンカチはすごく大事だと思います。
樽見:大事なのは清潔なハンカチであることです。昨日使ってカバンに入れっぱなしのハンカチだとちょっとね…。
人が触るところを定期的に消毒しよう
樽見:これもスタッフの方へ依頼になってしまいますが、人が触る場所の定期的な消毒ですね。ドアノブや階段の手すり、エレベーターの操作盤など、どうしても人が触る場所は、イベントの前後に拭いておくことをオペレーションに入れると良いと思います。
皆さんイベントの運営で忙しいと思うので、頭で覚えておくのは難しいでしょうから、タスク管理表に消毒係として担当者を作り、ちゃんとやってもらうことが重要です。
食事提供もやり方を変えてみる
山賀:あとは、お食事を出す場合はいろいろ気をつけていく必要があると思います。
河原:食事ってその場の雰囲気をよくする為に重要じゃないですか。提供したい気持ちはあるわけですよ。
山賀:政府から言われているようなビュッフェ形式は、トングを不特定多数の人が持ったり、お皿の共有という点で感染リスクが高まります。コストはかかりますが、個包装されているものを提供するとか、ドリンクもパックや缶など、飲みきれるサイズにするとか。
樽見:配布するスタッフの方の手指衛生も大事なので、配布する前にちゃんと手洗いしてもらうことも大事です。
イベント当日に、具合の悪い人が出たら?
藤田:当日、突然具合が悪そうな人が出たり、自分で具合が悪いと申し出て来られた人への対応はどうしたら良いでしょう。イベントの主催者は専門家でないことが多そうですが…。
山賀:まずイベント開始時に、お互いの最低限のリスク回避という点で、「いまこういう感染症が流行っています」というアナウンスとそれに対する対策の呼びかけをすると良いですね。
あとは、「具合が悪くなった場合は速やかにスタッフまでお伝えください」とか「ご自身の判断で退室していただいて構いません」と伝えておく。主催者も参加者もみんなで配慮できる環境作りができると、良いイベントになるのではないでしょうか。
藤田:スタッフが具合が悪い人をサポートする時は、どうしたら良いでしょうか。慌てず、手洗いをしっかりしたり、飛沫が直接目や口に入らないように気をつけるとか…。
山賀:主催者側はリスクを負うということを頭に入れておいて、スタッフの方にはマスクをしてもらったり、手洗いや手指消毒を徹底してもらいましょう。
いざ調子が悪くなった方に対応したとき、そこで自分にうつるリスクもあるので、それを主催者側でリスクマネジメントしておくということですね。
河原:マスクや手袋などの備えもそうだし、誘導経路や、対応の手順をある程度固めておくと、より盤石ですね。
参加者がイベント参加を控えるべきときってどんなとき?
藤田:参加者がイベントに参加するときの判断基準はどう考えたらいいでしょう?こういうコンディションだったら危険な可能性が高いなど、目安がありますか?
樽見:免疫力や体力が落ちていて、感染症をもらいやすい時は積極的に外出しない方がいいと思います。
例えば今週ものすごく残業してて疲れてるとか、夜ゆっくり休めなくて寝不足が続いてるとか。そういう時は、コロナウイルスに限らず、風邪などももらいやすいので、「自分の体調が万全じゃない時は参加しない」というのは、知っておいてほしいことですね。
山賀:どうしても行きたいイベントだったとしても、無理をして行ったことにより自分が重症化する可能性もあるし、周りにうつしてそのイベント自体がニュースに取り上げられたり、なくなってしまうリスクもあったりするので、迷った時には自粛する。もしくはオンラインで同時開催するというのであれば、そちらで参加するのも良いですね。
藤田:そうですね。おっしゃる通り、オンラインを併用するイベントもすごく増えてきてるので、体調に不安がある場合はオンラインで参加しとこうと。
山賀:参加者って受け身なことが多いのかも知れませんが、参加者の体調管理含め、みんなでイベントを作り上げているという感覚を持ってもらうことは、これからの時期は重要だと思います。
イベントの中止をどのタイミングで判断するか
中止の情報を参加者にしっかり伝えるため、告知はできるだけ早く
山賀:イベントの中止や延期の告知は、どのぐらい早くからアナウンスするべきなのでしょうか。
藤田:延期や中止の場合、情報がしっかり届く必要があるので、できるだけ早い方が良いです。例えば大型のカンファレンスだと、遠方から来る方も多いので、当日の朝だともう移動開始していたり、前泊していることもあります。早いタイミングでしっかりとお伝えするのが良いです。
会場や機材のキャンセルポリシーを確認し、意思決定の期限をあらかじめ決めておく
また、会場や機材を借りる場合、キャンセル料がかかってきます。会場にもよりますが、キャンセル料は主催者にとってはかなり重たいものです。それによってコミュニティ活動が持続できなくなる可能性もある。なのでキャンセルするタイミングは予め決めておく必要があると思います。
河原:イベントって、会場もそうだし、いろいろな関係者を巻き込んで作るケースが非常に多いので、とにかく判断が難しいんですよ。みんなができるだけ損をしない状態をいかに作るかということも、主催者の手腕になってくる。
会場のキャンセル代もそうだし、様々なところに契約が発生していて、免責事項や補填があって、いろんな状況があります。
なので、イベントをやるにしてもやらないにしても、主催者は勇気をもって判断しているということは知っておいてほしいと思いますね…。
藤田:皆さん非常に難しい局面ではありますね。今後のイベント運営は、イベント・コミュニティごとの判断にはなると思いますが、今日聞いたようなお話を元に、リスクを抑えて実施する必要がありますね。
河原:これで一通りお伺いできたのかな。いろんな発見がありますよね。こういう風に一つ一つのプロセスを細かく見ることって、意外とやらない気がします。すごく参考になりました。
山賀:僕達もここまで分解して話すのは貴重な機会です。
藤田:すごくためになるお話がたくさん聞けました。ありがとうございました!