嫌いな言葉は「まちづくり」 自分たちの街「灘」を楽しむためのギリギリで真剣な遊びとは/ イベントサロン神戸 Vol.1 DAY1

イベントサロン神戸vol1慈さんキービジュアル

2017年5月6〜7日、神戸にて078kobeというフェスティバルが開催されました。ピーティックスも2日間にわたり「イベントサロン神戸vol.1」を開催し、神戸内外で活躍する素敵なイベント・コミュニティオーガナイザーのトークイベントを行いました。

1日目のテーマは”「Local to Global」自分の思い・アイデアを広めるには” 自分の思いを伝え、周りを巻き込みながら大きなうねりを作っている方たちのお話です!

嫌いな言葉は「まちづくり」 自分たちの街「灘」を楽しむためのギリギリで真剣な遊びとは/ イベントサロン神戸 Vol.1 DAY1
ナダタマ:慈 憲一氏

神戸市の灘区からやってきました慈です。僕は神戸市の中でも完全に灘区に特化して、街のイベントとかやってます。もう何個やってきたか分からんくらいの数やってますね。

なぜこういうことを始めたかというと、きっかけは阪神淡路大震災です。僕は生まれも育ちも神戸市灘区だったんですけど、大学出て関東で就職して14年くらい住んでて、もう帰らんのかなーと思っとったところでどーんと来まして、それで帰ってきました。

帰ってきた時は結構キツい状況で、直後だけではなく、2年、3年と経ってきてからもキツい状況になってきまして、そんな中で、街の中で自分発信で何か楽しいことをやりたいなと思い、活動を始めました。

神戸マラソンのコースから外された灘…

活動はいろいろありますが、今日は笑っていただこうと思って一つ紹介したいと思います。神戸ってマラソン発祥の地で、神戸マラソンっていうマラソンイベントもあります。これがコースです。

三宮スタートでずっと西に行って明石大橋に行って終わりなんですけど…これおかしいと思いません?神戸市灘区は三宮の東にあるんですけど、ここ走らないのはおかしいでしょ?おかしいですわ、ということで僕らが始めたのが東神戸マラソンです。行政が灘区入れてくれんのなら自分らで勝手に走ったらええやんということで始めました。

ちょっとロゴも並べてみますけど、神戸マラソンのロゴには「ハバタン」っていうのがいますが、東神戸マラソンでは「ワルタン」っていうハバタンの裏キャラがいます。このハバタンを作ったデザイナーさんJUNBOwが、この東神戸マラソンの趣旨に賛同して無料でロゴを作ってくれました。一銭も払ってません。デザイナーを巻き込んだ例ですね。

イベントサロン神戸vol1慈さん2

神戸マラソンは三宮から西へ走っていくんですが、僕らは灘区のど真ん中出まして、三宮まで行ったら折り返します。で北上して、南下して六甲アイランド一周して、これで42.195kmのフルマラソンです。こんな感じで楽しそうでしょ?

イベントサロン神戸vol1慈さん3

僕らのマラソンは半分以上公園と河川敷を走るんですが、何でかっていうと、これ僕らのマラソンの10か条なんですが、交通規制はないんですよ。勝手にやってるから。神戸県警にも何も届けて出てません。信号も守る。僕らは歩行者なんですよ。歩行者然としてやる日本初のマラソン大会。

歩道を走ります。道にも迷います。予算がないんで道案内もないんです。声援もないんで、勝手にランナー同士で励ましあってください。給水所なんて作ったらエラいことになりますから、ないです。コンビニ・自動販売機を利用してください。タイムの計測もないんで、自分でストップウォッチで計ってください。そういう感じです。

これが第一回目の時の写真ですね。僕が腹立って集めた20名のイベントでしたが、これが今は100…100人くらいか。100人くらいでやって、九州・北海道・東京からも「何かわけ分からんマラソン大会がある」ってことで来てもらうようになりました。

イベントサロン神戸vol1慈さん4

こんなんローカルなイベントやって思うでしょ?参加者のアンケートを見ると、半数以上が神戸市外、兵庫県外。灘区民なんて6人しか走ってない。これ何やと。僕ら地元のためにやってるのに、来るのはみんな県外の人。これが今日のテーマの「ローカルtoグローバル」ってことですね(会場笑)。

ゼッケンと地図を渡して、自分で行ってくださいと。標識がないのでルートは全部道路に書きます。市がやってる道路工事みたいですが僕らが書いたものです。これ見て走ってもらいます。

 

これ見てください。エイドです。いいでしょ。エイドということでバナナとかありますが、灘走るんでこれ、酒です。酒飲み放題。

イベントサロン神戸vol1慈さん5

これは28km地点のエイドですが、ここ見てください「やめてまえ」って書いてある。エイドって普通応援する場所です。頑張ってゴールしてねって言うべきところでやめてまえって書いてる(笑)。この料理もすごいでしょ?料理人の方が選りすぐりの料理を作ってくれる。おにぎりとか。これを28km地点で食べるんですね。この写真とか、全くマラソン大会の雰囲気じゃないでしょ。もはや立食パーティーです。

このゴールのところも見てもらいたいんですが、これゴールなんですけど、ゴールから5mくらいのところにビールサーバーがあるんですね。ゴールして日本で一番早くビール飲める大会です。ゴール地点は河川敷なので川ですぐクールダウンもできます。

イベントサロン神戸vol1慈さん6

で、これ参加費なんぼやねんって話になるんですが、参加費2,500円。2,500円でビール・日本酒飲み放題&食べ放題。居酒屋でもないような感じでやってます。

じゃあまぁお楽しみのダルいイベントなんかなってなるかと思うんですが、1位の人、酒飲みながら信号守って42kmを2時間50分で走ってます。ガチで42km走る。ファンランなんです〜みたいなのは一切ないです。

いかに自分たちの街をギリギリのところで楽しむか

ここで僕らがやってるのは、いかに自分たちの住む街のギリギリのところで遊ぶかっていう実験なんです。公共の場所をどこまで使えるか。怒られるギリギリのところを実験しながらやってるイベントなので、神戸市の方がいたら薄目で見といてくださいね(笑)。でもこれも全然OKなんですよ。河川法でもOKです。ということで、自分の公共空間をどれだけ使えるかということをやってます。

このイベントの元になったのは六甲キャノンボールランっていう六甲山を使った鬼ごっこイベントです。六甲山の須磨〜宝塚間56kmを往復して鬼ごっこ。これも最初20人で始めたんですが、今1,000人来てます。カナダやドイツからも参加者が来てます。

勝手に好きでやってたら、周りも勝手に盛り上がってくれている

こういうことやってるんですが、言いたかったのは、さっきのエイドも、僕らがお金を払ってお願いしてるんじゃなくてボランティアでやってくれてるんです。好きでやってくれてるんですよ。

なんであんたら、何回も大変なのにやってくれるの?って聞くと、30分くらいの短時間の間に100人くらいの人からありがとうって言われることってないんですよ。それが嬉しいと。「そんなにありがとう言われて、自分ら役に立ってるの」という気持ちになれるっていうことで、毎回自発的にやってくれています。

僕らは勝手に好きでやってるんですけど、周りも勝手に盛り上がってくれてるということですね。と、そんなイベントの例ということでございました。ありがとうございました。

[Q&A]

Q) いやぁ…ほんと、何でこんなことやってるんですか(笑)慈さんはオモロイことが好きなんですか

A) そうです。あんまりね、いいことはしたくないですね。これを「街の活性化」とか言うと何か…ホンマかっていう感じじゃないですか。ホンマこれ活性化になってるんですよ。この鬼ごっこの後、みんなその変の商店街でお風呂入ったりご飯食べたりするんですけど、それ言っちゃうとやらしくなるんで言わない。裏では活性化されてるかもしれないけど、言わないっていうのが美学ですね。

 

Q) こういう面白いことやろうって言うとみんな集まってくるんですね。

A) そうです。この街には僕だけじゃなくて言い出しっぺがいっぱいいます。その人たちがチームを作って一個のイベントをやるっていうやり方ですね。そういう土壌があるのがこの街の面白さですね。

行政にいろいろやってって言うんじゃなくて、足りんもんは自分らで作る。自治ですね、自分んとこの街を楽しむっていう。その心意気で、いろいろなイベントをギリギリのところでやってます。ギリギリのところをまぁまぁはみ出してるんですけどね(笑)。まぁそれは、謝ったりしながらね。

Q) 他のスピーカーの方は会社員としてイベントをやられてましたが、慈さんは個人としてやられてるんですかね。法人格とかがなくて苦労されてることがあるのか、あえてそういう立場でやっているのかお聞かせいただけますか?

A) 僕の立場は灘区民です。区民の義務ですね。法人格…というか、これ、遊びなんです。大人の壮大な遊び。なので他の御三方とは違うと思うんですが、その辺で草野球やってるオッサンと変わらないですよ。それにいちいちスポンサーつけないじゃないですか。それと一緒です。

 

Q) 私も個人でイベントをやってるんですが、信用が得にくいのかなと思うような場面があって、その辺りはどうされてるのかなと

A) 信用ですか。信用は数こなすことです。数こなすことで信用が出てきます。僕もう20年近くやってますが、最初は何やねんって感じでしたが、近所のおばちゃんたちに「あの子ら、悪いことやってるわけじゃなさそう」って思われたら勝ちです。そこまで続けるのがコツ。周りが諦めるまで、諦めないってことです。

 

Q) こういう「オモロイことやろう」と活動を続けてきて、灘の中で変化は起こってきましたか?

A) ありますね。街を楽しもうっていう雰囲気は出てきたかと。神戸の人にはもともと街を楽しむ文化があったんですよ。それがいつの間にかなくなっちゃって。神戸旧居留地の外国人も六甲山にゴルフ場作ったり、勝手に自分たちでやってたんですよ。そういう風に、自分たちで楽しむっていうマインドを呼び戻したいなと思ってて、灘区はそれがちょこちょこ出てきたかなと。

 

Q) 慈さんのブログのプロフィールの、嫌いな言葉は「まちづくり」というのが気になったんですけど、このイベントってまちづくりじゃないんですか?

A) 確かに結果的にまちづくりになってるかも知れません。でも街って、お上が街を作るっていうのはちょっとおかしいと思ってて。都市計画的なことは別ですが、こういうイベントみたいなソフトについては、行政の人がこういう組織を作ってハイやりなさいっていうのはおかしいと思うんですね。こういうボトムアップ的なことがポコポコと出てきて、結果的に街が楽しくなるというのが理想かなと思ってます。

次回の東神戸マラソンは11月19日。神戸マラソンとガチでぶつけます(会場笑。拍手)。神戸マラソンと併願してるやつは即落選です。でもこの東神戸マラソン、受付開始から1時間くらいで定員になっちゃいます。100人超えると警察に怒られるんで、非常に狭き門。倍率4〜5倍くらいですね。

(司会: あんまり人が来てほしくないイベントと。)そうですね。あんま来てほしくない。

(司会: もうほんとわけ分かんない感じですね(笑))

 

Q) やってみたいけどまだやれてないってイベントはありますか?

A) あーまぁまぁやりたいことはやってきましたね。今回話したのはスポーツですが、僕は走るの大嫌いなんで(会場笑)。もうちょっと文系的な音楽とかもやってますが、あんまり今後やりたいというのはないですね。完全に思いつきでやってるんで。飲みの席であーそれオモロイねってことで企画になることもあります。

僕はその「オモロイねー」って言って、やらんのが本当に良くないと思うんですよ。言っただけでやらないってたくさんあるじゃないですか。やったらいいと思うんです。二日酔いで起きた頭でも覚えてたらやるっていう感じですね。忘れちゃったらそれまでのアイデアということですね。


会場を笑いの渦に引き込んでくれた慈さんのトーク。オモロイことを真剣に突き詰め、結果として街やコミュニティを楽しい場所にしている活動はお見事です。これからも何か思いついたら(笑)、灘に新たな仕掛けをしていってください!

慈さんのギリギリの実験に一緒に巻き込まれてみよう!

▶︎ ナダタマ | 豊かな灘ライフを演出するめくるめくグローカルサイトの情報を見る

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