「イクメン=パパ」じゃない:こうべイクメンプロジェクトが目指す街とは/ イベントサロン神戸vol.1 DAY1

イベントサロン神戸DAY1藤井さんキービジュアル

2017年5月6〜7日、神戸にて078kobeというフェスティバルが開催されました。ピーティックスも2日間にわたり「イベントサロン神戸vol.1」を開催し、神戸内外で活躍する素敵なイベント・コミュニティオーガナイザーのトークイベントを行いました。

1日目のテーマは”「Local to Global」自分の思い・アイデアを広めるには” 自分の思いを伝え、周りを巻き込みながら大きなうねりを作っている方たちのお話です!

「イクメン=パパ」じゃない:こうべイクメンプロジェクトが目指す街とは/ イベントサロン神戸vol.1 DAY1
こうべイクメンプロジェクト:藤井淳史氏

イベントサロン神戸 藤井さんの画像1 私の話はめちゃくちゃ自分の話なんですけど、まぁイベントって自分の話から始まることもあるよね、ということでお話をしたいと思います。

藤井淳史と申します。もうすぐ40になります。三宮センター街で、毛利マークというトロフィーなどを販売する創業104年の会社をやってます。カミさんの実家なんですけどね。で、こうべイクメン実行委員会というのを立ち上げてやってます。生まれも育ちも神戸で、大学だけちょっと大阪に浮気して最初の就職先も大阪やったんですが、やっぱり神戸が恋しいと帰ってきて10年になります。

家族はカミさんが1人と、6年の娘、3年の娘、2年の娘と女4人の中に男1人という状況です。これ、うちの家族の写真ですが、去年の朝ドラのべっぴんさんに出してもらいました。ちょっとした自慢です(笑)。ちなみにべっぴんさんに出てくるファミリアさんは、うちの毛利マークの向かい側で創業された会社です。
イベントサロン神戸藤井さんご家族の写真

こうべイクメンプロジェクトとは

じゃあこうべイクメンって何やねん?ということなのですが、イクメンって有名な言葉になりましたがお父さんの印象が強い。こうべイクメンはそうじゃなくて、おじいちゃん、親戚のおじさんおばさん、最近少なくなった近所のカミナリさんみたいな人も含め、みんなで子どもを育てようというプロジェクトです。世の中いい人ばかりじゃないけど、この人危ないんちゃうかという人も含めて、子どもがいろんな人と付き合うことで価値観を広げていけたらと思っています。

あと子育てしてると、これでいいのかな?と不安になることも多いですが、「子育てに100点満点はない」と、それぞれの子どもにそれぞれの育て方があるということも伝えていこうとしています。

実際には、2010年の活動開始の時からいろいろな人のイクメンエピソードを応募してもらって、小さなTシャツにプリントして展示するということをやってます。育児に悩む人もみんなのTシャツを見て、みんな悩んでるんだなと感じてもらってます。ブログやSNSでも発信をしています

「褒める文化を作りたい」+「頑張る自分を褒めてもらいたい」で始まった活動

なんでこんなことを始めたのかというと、本当に個人的なことなんですが…。毛利マークではトロフィーや賞状を売っているのですが、世の中的にそういうものを使う機会が減っている中、指をくわえて待っているだけではいけない、何かそういうものを使う機会を仕掛けていかないといけないなと思っていました。

こういうものって誰かを褒める場で使うものなので、「褒める文化」をもっと広げていきたいなと。じゃあ何を褒める?と考えた時に思い付いたのが「イクメン」だった。一番下の娘が生まれた時に時短勤務をしまして、仕事を早く切り上げて保育園に子どもを迎えに行ってたんですが、これが結構大変やった。頑張ってる自分を褒めて欲しいと思ったんですね。

なので結局のところ、自分の会社の発展と、自分自身を褒めて欲しいという気持ちから始まったプロジェクトです。

3年でイクメンを当たり前にする・3年でやめるという目標でスタート

2010年から始めて、1年目はまずはエピソードを集めました。全国から140件以上のエピソードが集まったので、三宮のギャラリーでそれを展示しました。そこで表彰式をやってみたらすごくメディアが来まして…。ちょうど2010年頃に「イクメン」という言葉が注目され始めたところで、タイミングよく始めたのでたくさんのメディアに取り上げてもらいました。

2年目は、ただエピソードを集めて表彰していてもコミュニティが生まれないということで、もっと参加者に参加してもらうため男女50名くらいの人を集めてディスカッションをしました。ディスカッションだけでは話が広がらないので、デザイナーのハナムラチカヒロさんに協力してもらい、ミライスゴロクというものを作って、マス目に育児をしていく中でのいいこと悪いことを書き出して考えてもらう、というものを作ってやりました。

こうべイクメン大賞は「3年でイクメンを当たり前にする」という目標を持っていたので…イベントも大変だしやめたいしね(笑)、3年目でフィナーレの大きめのイベントをやりました。サーカスをテーマに、コマまわしやiPadワークショップや、いろんなことをして、最後やし華々しく散ろうということで、コラボをたくさんして、2,000人くらいの人が参加してくれました。
イベントサロン神戸DAY1藤井さんの写真2

「イクメン=パパ」、「うち子どもいないし関係ないですわ」という反応を受けて

これで終わる予定だったんですが終わらせてもらえなくて…。2年目から神戸市と共催でやるようになって、これが命取りやったんですね(笑)。同時に「イクメン」という言葉が一般的になるにつれて、「パパのことですよね。うち子どもいないし関係ないですわ」という感じで関心を持ってもらえないことも出てきた。なので、「こうべイクメンの日」と名前を変えて、地域で子育て・地縁をつなぐ日ということにしてやり始め、今年で8年目になります。

今はハーバーランドumieという場所で2,000人くらいの人が来てくれています。スペースに畳を敷いてコーナーを緩やかに分けて、あやとりやお手玉を置いておく。それだけで、知らないおばちゃんとが「これ昔やったわー」と遊びだして、全然知らん子に教えだすんですね。神戸市の職員の人なんかも、イベントやってたらその人が楽しくなってきちゃって盛り上がるということがよく起こります。スタッフの人も楽しんでやるということが重要ですね。消防団など地域の大事なコミュニティにも参加してもらってます。

「自分のこと」と「社会のこと」を行き来する

自分ごとから始めて、それが社会化していった訳ですが、そういうことが自分にも跳ね返ってきまして。マンションの理事長やったり、他のイベントのお手伝いしたり、小学校のお祭りで櫓出したり、挙げ句の果てにPTAの会長をやるという…。イベントをして社会にメッセージを訴えかけていく、社会からもまた何か跳ね返ってきてそれを自分がやるという、そういうことが広がっているなと思います。 今年も6月18日にumieでイベントをやるので、ぜひ来てもらえると嬉しいです。以上です。

[Q&A]

Q) 少しお話にも出ましたが、子どもがいない、子どもがもう巣立ってだいぶ経つというような、関わり方が分からない人たちも結構いると思うんですが、そういう人たちを巻き込むために心がけていることなどありますか?

A) まぁもう、辛抱強く説明するしかないですね。イクメンという言葉を最初に捕まえてやり始めましたが、本当に当たり前の言葉になって、パパのことという印象が強くなった。そうじゃなくて地域のみんなで子育てしようと丁寧に話すしかないなと。企画中の今年のイベントでも、いかによその子と関わる機会を作るか考えてます。再々伝えていくしかないですね。

 

Q) このプロジェクトに来る男性は奥さまに言われて来るんですか?この取り組みの中にママはどんな風に関わっているのでしょうか

A) 奥さんに言われて来たり、たまたまオープンイベントに来てそのまま関わってくれたりいろいろですね。僕自身はこのイクメンイベントが近づくにつれてイケメンじゃなくなっていきますが(笑)、7年8年とやってると奥さんの理解もそうだし、子どもたちも関わってくれるようになっています。家族ぐるみで巻き込んでいる感じです。

やり始めた頃よりもイクメン自体が増えてきたので、自分も含め夫婦のあり方も変わってきたと感じます。お互いを認め合えるようになってきた。やり始めた時はこのテーマでちょっとギスギスしちゃう場面もありましたが、それを通してお互い分かり合えるようになってきたような…感覚ですけどね。

お父さんは本当に変わりました。始めた頃はベビーカー押してたり抱っこ紐してるお父さんっていなかったけど、今は三宮センター街でもベビーカー押してるお父さん2人組とか見るようになって、変わったなと思います。

 

Q) 最初は会社の活動として始められたのに、だんだんその境目がなくなっているように感じたんですが、その辺りは感覚としてどうですか。

A) 初めにメディアがバッと来た時に「あぁこれもう社会化しちゃったわ」と思いましたね。今さら会社の活動ですなんて言えない(笑)でもまぁ、それでいいと思ってます。遠回しでもいいから会社のことも知ってもらえればいいかなーと。イベントって楽しいので、そっちにハマっちゃったっていう感じですね。

 

Q) 畳を活用するアイデアっていいなと思いました。あれはやってみてどうですか?

A) あれはよかったです。それぞれの場所を仕切りすぎないことでみんなでやってる感が出る。レイアウトの組み替えも自由にできるので、それもいいです。

 

Q) 「世の中いい人ばかりじゃない、そういう人と関わることも意味がある」と仰ってましたが、そういうのを心配される方もいると思います。どうやって多様性を担保しながらコミュニティを守っていますか?

A) ちっちゃい子どもが一人で街に出て行ったら危ないと思います。かといって、去年神戸でも「マンションで挨拶禁止」っていうのが話題になりましたが、僕はあれは逆やと思います。

「知らない人に話しかけちゃダメという教育をしているから、マンションでは挨拶せんといてください」というのが発端で、それを聞いた年配の人が「それならそれでよかったわ。挨拶しても反応なくて気分悪かってん」ということになりそうだった。そうじゃなくて、大人がどんどん挨拶していかないと。

最初は怪しいと思われるかも知れないけど、続けるうちに「あ、このおじさん同じマンションの〇〇くんのお父さんか」とわかるようになる。そうやって少しずつ子どもの人間関係が広がっていって、緩やかなつながりと見守りのかたちができていく。「あの人見たことある」という人を増やすことで、もし何か悪いことしようとした時も心の歯止めになるかも知れないし、何かあったら守ってあげるという関係性ができていくことが大切かなと。


地域で子どもを育てるということ、地域のコミュニティをつなぎ直すということ、藤井さんのあたたかいパッションが伝わるお話でした。ありがとうございました!

藤井さんが活動する「こうべイクメン」の取り組みを見てみよう!

▶︎ こうべイクメンの情報を見る

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