「あなたが主人公になる物語」リアル脱出ゲームの世界観のつくりかた

2018年5月22日、Peatix Japan内EBISU PARKにて、「イベントサロン vol.14」を開催しました。

今回のテーマは「世界観のつくりかた」。圧倒的な世界観で多くの人を惹きつけるイベントの作り手に、その発想や表現についてお話を聞きました。

 

「あなたが主人公になる物語」リアル脱出ゲームの世界観のつくりかた

SCRAP/東京ミステリーサーカス きだ さおりさん

 

 

私は、世界一謎があるテーマパーク、東京ミステリーサーカスという場所の総支配人と、株式会社SCRAPでリアル脱出ゲームなどの体験型イベントのディレクターとプロデューサーをやっています。

リアル脱出ゲームとは:あなたが主人公になる物語

リアル脱出ゲームを端的に言うと、「あなたが主人公になる物語」です。従来の物語、漫画や映画、小説、アニメは、自分は物語の登場人物ではなく、物語を受け取る人になります。一方、体験というのは自分の頭や体を動かしてなにかをすることで、ライブや講演会、ゲームなど。リアル脱出ゲームはこの2つをプラスして、自分の物語を体験し、自分の意思で進めていく新しい物語のかたちです。

 

今までの制作物の一部をお見せすると、このようにいろんな会社のキャラクターとコラボレーションしたイベントや、オリジナルストーリーのイベントをやっています。今日は世界観のつくり方ということで、コラボレーション事例とオリジナルストーリーの2つのケースを抽出してお話します。

オリジナルストーリーのリアル脱出ゲームのつくりかた:「お客さんにどんな感情を残したいか」が重要なポイント

オリジナルストーリーは小説を書くようなものですが、そこでは「体験」が重要になってきます。お客さんにどんな感情を残したいか、どんなメッセージを伝えたいかを最初に考えます。そして、そのためにはどこで、どんな体験をしてもらうかという順番で考えていくことが多いです。

 

例えばオリジナルストーリーの『君は明日と消えていった』という公演。こちらもリアル脱出ゲームですが、あまりそれっぽくない見た目になっています。ビジュアルもそうですが、中身についても「謎を解いて制限時間以内にその場所から脱出する」という従来のリアル脱出ゲームらしいものではなく、物語体験において個人の過去の経験や判断を重視しながら謎を解くところに特徴があります。

 

謎解きをする意味

謎を解くのがなぜ有効かというと、自分で頭を働かせて答えを出すと、その瞬間にぐっと自分の物語の中に入れるんですね。ただ歩きながら物語を受け取っていくのではなく、自分が手にした答えで次に進むことで、体験が非常に濃いものになると考えています。

事例1:オリジナル公演「きみは明日へと消えていった」

こちらは2年ぐらい前の作品ですが、「あなたは映画部に所属する高校2年生の男の子です」とプレイヤーを定義し、「ある日あなたの元に謎の小包と一通の手紙が届いた」というところから物語をはじめています。

 

最も重要な、お客さんに残す感情については、この作品では「せつなさやどうしようもなさ、疾走感が入り混じる青春体験」です。

 

では次に、どんなメッセージを伝えたいかを考えます。この作品では、「いくつになっても後悔のない人生を歩もう」と感じてもらいたかったんです。ちょうどこのとき、自分自身も人生の中でいくつか後悔していることがあって。「でもいま勇気を出さないと次に踏み出せない」と悩んでいたときに、同じように悩んでいる大人は多いのではと思ったんです。ゲームが終わった後に、その人がなにか一歩踏み出せるような体験がつくれたらと思って、その方向性で考えはじめました。

 

そのためにどこで、どんな体験をしてもらうかという点に進みます。ここでは、「高校生のときの自分の机で、殻に閉じこもった自分から勇気を出して一歩踏み出す体験」にしました。

 

まず冒頭に、女の子からきた手紙のようなものが皆さんの元に届き、その謎を解くと「あなたは次に17歳の少年になってもらいます」という言葉が出てきます。チケットも(PASMOのような見た目にして、自宅から青春世界への切符というイメージに。会場のつくりも、封鎖された閉じこもった自分の部屋をホールに再現しています。

 

登場人物のキャラクターデザインもつくり、自分が映画部の部員の1人で、それ以外のキャラクターが5人います。ダンボール、手紙も実際にプレイヤーのところに運ばれてきて、その女の子が残した謎を解いていくと衝撃的な事実が分かります。そしてその結末は、プレイした人だけが知ることのできる特別な結末になっています。

 

この作品をつくっているときに気をつけたのが現実世界とのリンクです。実際にこのダンボールも実際に届きそうなダンボールで、登場するTwitterのアカウントも実際につくっていて、実際の物語の日付と同じ日付になるように毎日コソコソつぶやいていたんです。そんな感じでつくった作品です。

 

事例2:「不思議な晩餐会へようこそ」

先ほどのものとは全然違う体験をつくったものがこちらです。「不思議な晩餐会へようこそ」というもので、「今宵あなたは本当に魔法が使えるようになる」というコンセプトで、究極の魔法使い体験を目指して作りました。「夢の魔法使いになれた」という感情をつくるために、不思議なお部屋で謎めいた音楽が流れる中、テクノロジーを駆使して本当に魔法使いになれたような体験をしてもらいます。

 

先ほどのものとはぜんぜん違って、こちらは上に機械がぶら下がっていて、自分の動きや、手に入れた魔法のステッキで絵を描いたりしながら次に進んていく1時間の体験になっています。

 

事例3:「沈みゆく豪華客船からの脱出」

この作品は、最近東京ミステリーサーカスでやっていたものなんですが、これはすごくシンプルで、「危機的状況の中で誰かのために勇気を振り絞る体験」をしてもらいたいと思って作りました。メッセージは「身近な人を大切に、伝えられることは伝えられるうちに伝えよう」。

 

そのための体験はなにかいうと、「沈みゆく豪華客船の中で、限られたコミュニケーション技法を駆使して、少女と力を合わせて生還する」というものです。限られたコミュニケーション技法というのがどうしてもやりたくて。窓にハァーって息を吐くと文字が書けたりするじゃないですか、ああいう隔たれたコミュニケーションってかなりロマンがある

なと思うんです。

 

実際にこれはiPadを壁に埋め込んでいるんですけれども、iPadの中が曇って、それで文字を書きながらその子とコミュニケーションを取って力を合わせられるというお話を考えたりしました。

 

オリジナル公演の「世界観」をつくるポイント

置かれている状況をわかりやすく

今の3つは完全にオリジナルのストーリーなんですけれども、そこに世界観をつくるポイントは、自分が置かれている状況を分かりやすくすること。先ほどの青春体験であれば「自分は引きこもりの高校生だ」ということを分かりやすく設定する。テーマを軸にビジュアル、音楽、空間設定をするということにかなり力を入れています。

 

テーマを設定し、青春体験とか、豪華客船が沈む体験という設定をつくった後に「じゃあ場所はできるだけ閉鎖された空間が良いかな」とか、「謎はテストの問題や時間割とか、学校っぽいものでつくられていると良いのでは」という順番で深めていきます。音楽も、ぼくのりりっくのぼうよみさんの曲ですが、オファーしたとき彼はまだ高校生で、引きこもりでしたという話をしていたんです。「おもしろい!引きこもりの高校生が歌っている歌、ピッタリじゃないか」と思ってTwitterから連絡して……という感じでオファーさせていただいたり。

 

プレーヤーが主人公として感情移入できるようにあつらえる

映像も、あまり作り込み過ぎると、自分が主人公の物語と感じられなくなってしまうので、映像や照明、キャラクターも作り込み過ぎないように意識しています。キャラクターの声も、主人公のキャストさんは中世的な声、男性でも女性でも感情移入できる声というのを考えてオファーしていたり。「全ての設定をつくった後に、体験する人たちのためにあつらえる」という考え方で世界観をつくっています。

 

他作品とのコラボレーション公演で意識すること

既存ストーリーの場合、例えばONE PIECEなどストーリーがすでにあるものは、自分が物語を動かす中心人物になることで、物語をもっと好きになること、キャラクターや物語を、自分ごととして感じられることを意識しています。例えばいま静岡の沼津というところでやっている『孤島の水族館からの脱出』というイベントでは、島を貸し切ってラブライブのAqoursという9人のメンバーと声でコミュニケーションを取りながら冒険をしていくいう体験をつくっています。

 

謎解きの他にも、広がるSCRAPの世界観

謎解きの他にも、漫画でよくある、「食パンをくわえた女子にぶつかる」という胸キュン体験ができるイベントなど、謎解きじゃないこともやっています。例えばフリーマーケットにもストーリーを入れられるのでは、ということで、「元カレ・元カノからもらったものだけを売るフリーマーケット」みたいなストーリーのあるフリーマーケットをやったりもしていますよ。

 

そして、『東京ミステリーサーカス』という場所を2017年12月にオープンしました。今までのリアル制作の集大成みたいな場所で、コンセプトは「ここにくればどんな物語の主人公にだってなれる」です。5月1日まででなんと20万人以上に来場していただいており、今後ここを「ワクワクを日常に持って帰れる場所」にするため、さらにいろんな体験をつくっていきたいと思っております。

 


<Q&A>

リアルっぽいけれどもリアルではない。リアル脱出ゲームはどんな空間なのか

宮田:ディテールにこだわって世界観をつくっているとお話がありましたね、ダンボールも本当に届いてきそうなものを用意すると。ただ、それってリアルだけどリアルじゃないじゃないですか。リアル脱出ゲームってリアルに体験するゲームなんだけれども、それは本当は自分のリアルな生活じゃない。そんなリアル脱出ゲームって、体験者にとって一体どういう空間だと思われますか?

 

きだ:非日常体験だとは思うんですけども、非日常体験をして得た感情だけは日常に持って帰れる場所だと思っています。そこで得たもの、例えば悔しいとか、勇気を出して頑張ったとか、胸キュンしたみたいな感情は、おそらく日常に持ち帰っても生き続けるものになると思うんです。その物語で感動して、自分の感情が持って帰れる場所なのではと思っています。

 

リアル脱出ゲームが人気である理由

宮田:リアル脱出ゲームを体験している人は「物語体験」とか、公演の意図については意識せずに、純粋に面白い、興味があるという理由で参加すると思うんですが、リアル脱出ゲームが人気である理由はなんだと思いますか?参加者の人はなにを求めて来るのでしょうか。

 

きだ:「自分だけの体験」だと思います。ゲームは人によって結末が違うんです。俺はこうだったとか、私はこうだったとか、私は今日こういうメンバーで行ったとか、ぜんぜん知らない人たちと知り合ったとか。20万人体験したら20万通りのその人の体験が生まれています。

 

その感想を誰かと語り合いたくなったり、「じゃあ次はこういう体験をしてみよう」と次にどんどんハマっていく穴があるのではと思います。

 

この10年ぐらいで個人の発信する場所が増えたり、オンラインのソーシャルメディアが発達するがゆえに、逆にリアルな場が重視されるようになってきたりする中で、「実際に人と会って、実際に自分が頑張って何かを得られる、しかもその得られた結果がさまざまだ」というところが、いろんな人に来てもらえるようになった1つの理由かなと思っています。

 


 

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