イベントが提供する価値とは・主催者が手にした多くの選択肢とは:アフターコロナのイベントの作り方|イベントサロンvol.18「 アフターコロナのイベントの作り方」レポートPart1

 

イベント・コミュニティを応援するPeatixが、イベント・コミュニティ運営者のために開催しているイベント「イベントサロン」。第18回目は「アフターコロナのイベントの作り方」というテーマで開催しました。

新型コロナウイルスの蔓延により、人と人とが対面で会えなくなり、多くのイベント主催者の方が苦労に直面しました。オンラインイベントの開催にかじを切り、試行錯誤しながら様々なイベントに取り組まれた方も多くいます。

この後、コロナウイルスの感染拡大が収まり、以前のように気軽に人と人とが会えるようになったら、イベントはどうなるのでしょうか?完全に元に戻るのか、なにか新しいものが生まれるのか。さまざまな分野でイベント・コミュニティ運営に取り組むトップランナーをゲストにお迎えした本イベントのレポートをお届けします。

 


目次


ゲスト(五十音順)

アフロマンスさん
「アイデアと実現力で新しい体験をつくる」をコンセプトに、数々のイベントを企画・開催。

コロナ以降、リアルイベントが軒並み延期・中止になってからは、「#楽しいが必要だ」というメッセージを発信し、コロナ禍でもできる企画を実施。家に花見を届ける「サクラチルデリバリー」や、オンラインの音楽フェス「BLOCK.FESTIVAL」など。

コロナでの制約をポジティブな価値に変換した、新しい企画に挑戦している。

 

 

 

中島 明さん
シェアオフィス・RYOZAN PARKのマネージャーや「としま会議」という豊島区のコミュニティ運営などに携わる。ローカルコミュニティのプロデュースを経て、現在は企業とローカルをつなぐコミュニティ作りも手がける。コロナ下のとしま会議オンライン企画ではヨガスタジオとつないだり、アパレルショップと中継したりなどの試みも。

2013年に約700名が参加したイベント主催者の祭典「Event Festival Tokyo 2013」を総合プロデューサーとしてPeatixと共催。そこからイベントサロンが生まれ、イベント主催者が集まる場となり続けている。

 

 

藤本 あゆみさん
グローバルイノベーションプラットフォームPlug and Playで、スタートアップと大企業のコラボレーション、オープンイノベーションを世界規模で支援。コロナ以降、各国拠点が一緒にイベントを開催するなどの取り組みが起こっている。オンラインイベント開催ツールの情報交換をしたり、さまざまな方法を試したり、多くの実験を行っている。その結果、毎年開催する大型イベントを2020年はオンラインで実施したが、2021年には関係者のみオフライン参加、イベント自体はオンラインのハイブリッド形式にて実施した。

 

 

MORIYUKAさん
カレーを軸に新しいコミュニケーションを生み出していくブランド「6curry」ブランドプロデューサー。「EXPERIENCE THE MIX.」をキーワードに、みんなで混ざり合って、新しいものや、自分だけでは得られない体験に出会うことをコンセプトにしている。メインの取り組みは6curry KITCHENという会員制飲食店。コロナ下においては、お店の人気レシピを販売したり、オンラインワークショップでレシピを考えたり、Discordを使ったコミュニティSNSを作ったりした。現在は店舗営業に加え「自分の好奇心を深める」カルチャースクールも開催。

 

 

 

リアルイベントがオンラインになっても変わらなかった価値は「ライブ感・一体感」

アフロマンスさん:
初めてやったオンライン音楽フェス「BLOCK.FESTIVAL」が印象的でした。音楽ライブの動画ってYouTubeに死ぬほどあるじゃないですか。フェスがオンラインで成立するのか?お客さんは満足できるのか?と悩みながらも、とりあえずやってみました。

立ち上げ時のステートメントに書いたんですが、収益の一部はアーティストの支援にあてると共に、コロナ終息後のリアルフェスの開催資金にあてる。コロナが終わった時にみんなで集まろうという希望を持った企画にしたかった。このコンセプトを考えた時、コロナ後にリアルフェス開催までいったら泣けるなと思ったんです。いい話でしょ?ただ、この話にはオチがあって、最初のVol.0開催時に家で泣いてしまったという話です(笑)

オンラインでどこまで伝えられるのか?と思っていたんですが、想像以上に心が動くということを発見しました。オンラインフェスには「生身の人間がそこにいる」という感覚があったんですよね。

ライブでよくあるコール&レスポンスも、オンラインフェスでは参加者の声を聞くことはできない。その代わりに、みんながチャットで一斉に書き込むんですよね。アーティストが「会いたい〜」と声をかければ、「会いたい〜!」というテキストがすごい勢いで打ち込まれていく。その時に、リアルタイム性というか、すごい数の人が同じ時間を共有しているんだと強く感じました。

ただ、面白いことに、アーカイブ動画をみても、同じようには感動できないんですよね。コンテンツだと思えば後からでも観れるけど、イベントには、同じ時間を共有していないと得られない感覚がある。それが「イベント性」みたいなものかもしれない。そして、それがオンライン・オフラインでも変わらない「ライブ感」なのかなと。

藤本さん:
海外のオンラインカンファレンスでも似たようなことがありました。みんなカンファレンスで使うアプリを作るんですけど、ハートを送るとか、反応するための機能を搭載する。それが連打されると「みんなみてる」「そこにいるんだ」という感覚を得られるんですよね。

 

 

 

そのイベントの価値は、オンラインでも届けられる?

MORIYUKAさん:
オンラインに挑戦してみて、6curryにとっては「コンテンツのない場」が価値だったんだと気づきました。

オンライン営業でも、みんなが共通のテーマや目標を持って集まるとき、例えば6curryでスパイスカレーのワークショップをやろうという企画だと盛り上がるんです。「今からこれ炒めよう〜!」みたいな感じで一体感があって。一方で、飲食店の営業をオンラインで再現しようとしてみたら、集まったはいいけれど「えっと、いまからなにしましょうかね…?」みたいな感じになっちゃって(笑)

キッチンという場があった時は、みんながそこでやりたいことをやっていてその場が成立していたけれど、それがオンラインになった途端、再現が難しくなったと感じました。目的がない場の魅力ってオンラインで再現するのが難しいなと。

アフロマンスさん:
オンライン飲みが流行り始めた頃、「焚き火飲み」とかありましたよね。焚き火の映像を囲んでいると、とりあえず何かをしてるって状態になる。何も喋らなくてもパチっていう音が鳴ったりして(笑)

中島さん:
「共にする体験」というものが、コロナの前も大事にされていたけれど、その辺りがいっそう大切にされているような気がする。後からアーカイブみても心が動かないというのもそういうことなのかも。

 

 

 

オンラインイベントにも2つある:「コンテンツ」が重要なものと、「その場にいること」が重要なもの

アフロマンスさん:
オンラインイベントも2つあるような気がします。イベント自体がコンテンツとなり、それを一緒に体験するものと、コンテンツに集まっているわけではなく、一緒にいることが重要なものと。

後者でいうと、「森の映画祭」という映画祭がオンライン開催をしたけれど、「何時にこの映画を観てね」という連絡がきて、その映画を同時にNetflixなどで観る。もはや映画祭なのに映画すら提供していないんだけど、同じ映画を一緒に観て、感想を言い合う「場」を提供している。同時性のある、オンラインの場づくりをしているんだなと思いましたね。

藤本さん:
そういう同時性が重視される場って、なぜかトラブルとかがあるとライブ感が出る。運営側としてはトラブルはすごく嫌なので、できれば事前収録したものを粛々と流したいと思うんだけど、音が出なかったり映像が乱れたりする方が「いまやってる」感がでて、そっちの方がなぜか喜ばれてしまう不思議(笑)

その後みんな上手くなってプロフェッショナル感出てきたけど、そうすると「あれ、これライブで観ないといけないんだっけ?」「どのくらいつながってるんだっけ?」という感じが出てきて、さっきアフロさんが言っていた同時性というテーマが気になってくるようになりましたね。

「参加者がいてはじめてイベントが成り立つ」と実感しなおしました。会場のざわつきや拍手など、観客の反応がイベントを構成しているのはわかっていたつもりだったけど、オンラインになって最初はうまく整えられなくて、繋がりが分断されたように感じる時があった。この価値を再認識したいま、これからリアルイベントが戻ってきたらさらにどう進化するのか楽しみです。

 

 

 

イベントへの参加ハードルが低くなった一方で、ちょっとでもつまらないと思われるとすぐに退室されてしまう状況に

藤本さん:
イベントへの参加ハードルも下がった気がしますね。自分にとって新しいキーワードを探すために、とにかくいろんなジャンルのイベントに出まくってみている人もいました。

MORIYUKAさん:
地域イベントのゆるさという点で言うと、オンラインイベントも地域イベントに通じるゆるさがある気がします。ちょっとつまんないなぁと思ったら退室しても良いわけで。

藤本さん:
そうそう、だから主催者にとってはある意味厳しい状況になった。オンラインイベントってちょっとでもつまんないなと思われるとすぐいなくなっちゃう。それはリアル会場でやってた時とくらべて変わったところ。

 

 

 

そもそもなんでイベントをやるのか?本当に「イベント」が必要だったのか?問い直す時にきている

アフロマンスさん:
そもそもなんでイベントをやるんだっけ?ということを考え直す時にきていると思います。

オンラインイベントをやってみて、リアルでやるより良い結果になったこともあるし、もっと言うと、イベントじゃなくて映像やSNSキャンペーンで良かったという気づきもある。一方でイベントじゃないとできないこともある。このロケーションで、夕日をみながら〜とか、そういうことはリアルじゃないとできない。

リアルイベントは、大規模なものも残るけど、リーチ数を追うもののは減っていく気がする。リアルで面白い体験を突き詰めていくと、少ない人数だからできる体験というのもあって、奇しくも”大人数が集まれない”コロナ禍で気づきがあったと思う。逆にオンラインと相性が良いものは、多くの参加者にリーチを得ることを目的にした企画になると思う。そうやって色々なものがこれから分岐して発展していくんじゃないかなと考えています。

 

 

 

自分たちは何の価値を提供していたのか。デリバリーをやめた6curryの判断

MORIYUKAさん:
6curryはデリバリーをやめたんです。カレーを食べただけで「6curryを体験した」と言われるのは嫌だと思いましたし、デリバリーに手を取られて店舗体験のために裂けるリソースが取られることが、自分たちにとってマイナスすぎるということに気づきまして…。

デリバリーやテイクアウトはコロナ後も続いていくと思います。ただ、デリバリーと飲食店でごはんを食べることって全く違う。リアル体験はよりコンセプトをはっきりさせた濃いものを届けていく必要があると思いました。料理でいえば、作ってすぐ、一番食べて欲しい状態で提供できるのは店舗なので、そのライブ感を濃く・狭く提供することを目指していきたいです。

 

 

 

イベントの価値が多様に。主催者の手札も増えたが運営がどんどん大変に…!?

藤本さん:
私の所属するPlug and Playでは年2回ピッチイベントを開催しています。毎回参加者に参加目的をヒアリングしていますが、「情報収集」という人もいれば「スタートアップと話したい・商談したい」という人もいる。異なる目的・熱量の人が一緒に存在するときに、どうやってその場全体を作っていけばいいんだろうと改めて悩むようになりましたね。

オフラインの方が熱量が伝わっていいと思っていたけれど、オンラインでやってみたら、「今までスケジュールの都合などで見れなかったスタートアップのピッチもたくさん見れていい」とか、「海外に行かなくても見れるのがすごくいい」という声もたくさんもらって。

オンラインでイベントに参加するようになって「自分はこういうスタイルで参加したい」という希望を個人が持つようになった。それに気づいてしまったいま、ただオフラインに戻せば良いわけではなく、これからどう運営していこうかと悩んでます。今後もハイブリッドでやるとなると予算が1.5倍〜2倍かかるんだけど…どうしよう…と悩ましいところもありますね。

中島さん:
多分僕らは選択肢のカードをいっぱい持っちゃったんですね。オンライン・オフラインもそうだし、規模の大小もそうだし。それをどう切っていこうかということを迷っている。

あと、「体験の流れ」をより意識するようになりました。オンラインイベントだからこそ、チケットの届き方を意識したり、次のオフライン開催の準備としてのオンラインイベントを企画するとか。コロナの前から意識している人はいたと思うけれど、一つのものだけでは満足させられないからこそ、より一層、全体の体験の流れを意識するようになった。企画や運営はより複雑になってきていると思う。

アフロマンスさん:
イベントってある種のエイヤ感があったと思うんですよね。勢いでエイヤってやってワァーって盛り上がって、よかった〜!って終わる。オンラインだとなかなかそこまで持っていけないから、前後のことまでちゃんと考える。そうやって工数がどんどん増えていく。

あと、ビジネスとしてのイベントなのか否かでも大きく変わると思います。マネタイズ目的でなければ、超少人数のリアルイベントをやってコアな人たちを集めて、そこから何か仕掛けていくということもできるはず。

いろんな選択肢があってそれをどう組み合わせていくのか、取っ替え引っ替えやってみるのがいいのか、一概には言えないけれど、色んな選択肢を知っておくことは大事ですよね。

 


レポートPart2はこちら

これからのコミュニティはどうなっていくのか
イベントサロンvol.18「 アフターコロナのイベントの作り方」レポート Part2

 


 

「イベントサロン」は、イベント・コミュニティ主催者が集まる場として、さまざまなテーマを設けてイベントを開催しています。

今後のイベントの情報は、こちらのページでお知らせしていきます。ぜひイベントサロンのグループページをフォローしてください。

 

 

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