[#EventSalon vol.9]区議会議場でパーティー?敷居が高い会場を借りられた意外な理由

イベントサロン vol.9 こんな場所でイベントが?!「会場探し」はイマジネーションで乗り越えろ!

議場でパーティー!?政党控室で子供向けワークショップ!? 取り壊し前の区役所庁舎を、フロア丸ごと市民参加で使い倒す

Code for Japan Summit 2015 安達 絵美子 氏

公共施設が次々と建て替えの時期を迎えて、建て壊し前にイベントが行われることも珍しくなくなってきています。昨年5月に新庁舎がオープンした豊島区は、建て壊しを迎える旧庁舎を何度か民間に解放してきました。
とはいえ、元来、公共施設はとてもルールの多い場所。どんな風にハードルを越え、どんな風に”お役所”は活用されたのか。サミット運営チームのメンバーでもあり、豊島区職員でもある安達さんにお話をお聞きします。

議場でパーティー!?

皆さんこんばんは。豊島区役所職員で「Code for Japan」の運営メンバーとして、今日こちらのほうに伺いました。安達と申します。よろしくお願いいたします。今の私の職場なんですが、こちらになります。

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今、話題の新国立競技場を設計した隈研吾さんの作った建物で、上にマンションが乗ってるんでクヤクションと言われてるんですけれども。こっちに昨年の5月に引っ越してきまして。で、今日のお話の建物というのがこちら。

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昭和36年に建てられた建物で、私が平成4年に入った時には「3年後に新しい建物の庁舎入れるよ」って聞いてて、実に20年間そのまんま。その後もずーっと使い続けた建物です。あちらの新しい建物に移って、1階はまだ使ってるのですけども、上の部分が空いたところを今回のイベント会場に使おうと考えました。

使ったイベントはこちら。

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Code for Japanのサミットです。この団体、「自分たちの町の課題を技術で解決するコミュニティー」ということでITのプログラマーさんですとか、普通の一般の私のような素人さんですとか、民間・行政関係なく垣根を超えて町のことをみんなで一緒に考えよう。「共に考え、共に作る」というのをテーマにしております。

しかも楽しくっていうのが要になっている団体です。コミュニティーですね。実際に、もうすでにそれぞれの町で必要なもの、「こんなのがあったらいいな」というアプリ開発がどんどん進んでまして、金沢でスタイリッシュにゴミを出すのが簡単に分かるアプリですとか、会津若松なんかだと雪で埋もれちゃって、消火栓分かんなくなっちゃうんで消火栓をマッピングしといて、いざという時に雪から掘り出すとか、そんなようなアプリがいろいろ実際に生まれてきています。

そうした地域が今ですね、32とあるんですが2月にもまたできているので、もっと今増えています。全国各地にこのCode forの地域の団体できていまして、こちらのほうが年に1回集まるのがCode for Japanサミットです。

神戸市との誘致合戦を経て

実は、去年1回目があって、今回私たちがやったものが2回目になります。これぐらいできたブリゲード*の中に私たち、Code for としまというのを去年の4月末に立ち上げをしまして「何やろうかな」って言ってる時に、「Code for Japanサミット、会場探してるらしいよ」っていう情報を聞いたんですね。

そこでわれわれ3人が企みまして、4月末にできたばっかりの団体なのに「じゃあ豊島区でサミットやってもらおうよ」みたいな形で、神戸市と誘致合戦なんかもしつつ「豊島区役所の旧庁舎、今年1年で終わりだよ、こっちでやったほうが絶対楽しい」っていうような形で、最終的に11月の6・7・8日でほ半年ぐらいでイベントをやりました。2階、3階はもう机や椅子ががっつり入ってたので、実際使ったのは4階の区議会の入っている所です。

区議会、聖域と言われていまして、私、職員ですら20年近くどこから議場に入るのかも、場所も分かんないようなすごい遠い存在の所でした。そこを使わせてもらいました。どうせ使うなら全部使っちゃおうと思って、何でもいいからいろんなことをやったら、最終的に「やりたい、やりたい」っていう企画がどんどん生まれてきて、ほとんど部屋を使ったような感じになります。
*ブリゲード:Code for Japanが提供する支援プログラムに参加している各地のコミュニティのこと(Code for Japan Brigade)

エレベーターにラッピング

部屋だけじゃなくて「これ、使い倒したいな」ということで、最初によくある役所の古いエレベーター、ラッピングしちゃいました(笑)。

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これ、結構写真も撮ってもらえて良かったなと思って。4階に上がると今度、また殺風景な赤じゅうたん。一応区議会なんで赤じゅうたん、ここだけ引いてあるんですけれども、これ、今回サミットの会場テーマが「パーティー」っていうことだったので、ほんとにパーティーっぽくしちゃいました。

後ろに置物の剥製、ヤマドリとかがまだ残ってるのがまた、このギャップがいいなというところで。こちらの建物、真ん中に吹き抜けがあって四方に廊下がある特徴的なもので、「このストレートいいよね」ということでまずやったのが、上にガーランドがーっととにかく付けてみたっていう。これ、原宿で話題になった、独立行政法人が作ったとは思えない壁ドン胸きゅんパスワードポスター。これの15連作、全部壁に並べてみました。

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もう、きゅんきゅんしっぱなしみたいな、そんなような形で並べて。何気に後ろから見ると、気付く人だけ気付くような小ネタを用意したり。

もう一つのこのサミットの今年のテーマが「スタート」だったので、スタートライン取りあえず引いてみました。「まあ、ここいいかな、誰かみんな写真撮ってくれるかな」「撮影スポットだね」って言ったら、ほんとにね、プロフィール写真で使ってくれる人とかがいて。なかなかこれがまた。さっきもおっしゃったように、いろんな議場の写真とか一時期結構Facebookに載ったっていう感じですね。こちら、グラフィックレコーディングというのを皆さんご存じですか? 

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これは各セッション、トークをやっているのと同時並行で絵や文字をそのまま議事録として書き起こして、一つの話が終わったら、トークセッションが終わった時には一枚の紙ができあがるという、そういう新しい議事録スタイルです。これが4回以上で、ワークショップとそういったセミナーを同時にずーっと90分ぐらいのサイクルでやったので、最終的にはそれを貼りだしたら廊下中がグラレコだらけみたいな。

これを見ると1日しか来れなかった人でもどんな話があったかというのが一目で分かるような、そういう廊下になっています。 で、反対側も廊下、これ、ITをテーマとしていますので、そういったちょっと遊ぶの――

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これ、突っ込みを入れてるんじゃなくて、手を動かすとこの丸いものがフワンフワン自分で動かせたりですとか、電子工作を廊下で遊んじゃおうっていってここで遊び始めたりだとか。これ、何ノリノリになってるかっていうと、廊下の一角に映像を付けといて、実はそこの前に立つと、ドラえもんの着せ替えカメラのように勝手にいろんなものが身体にフィットした形でちゃんと動く画像。なので、男性も憧れのかなりナイスバディな女の子になれたりとか、そういうような仕掛けもあったりしました。

さまざまな仕掛け

(フードケータラーの)GOCHISOさんにも来ていただいて、廊下で炊飯器でご飯炊いてもらって、お昼ご飯作ってもらったりとか。夜のパーティー。パーティーですね、部屋いっぱい先ほど見たと思うんですけども、廊下でやっちゃいました(笑)。

廊下でやると、この距離感が縮まるのがすごいんですね。普通の部屋でやってもやっぱり面白くなくて、この廊下でやるっていう。しかも赤じゅうたんっていうところが面白いかなと思ってやりました。外国からお客さんもお呼びして、瓶ケースの上に立ってもらうっていう、このシュールな絵がいいなと思って。

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区議会事務局と、ここにしっかりした固いものがまだ残ってるんですね。逆にこれが面白いなと思って、この中をIBMがブースを出したりですとか、奥なんかこれ、内閣官房ですね。RESAS*のブースを何気に出したりとか、そんなようなことをして。そういう内閣官房と、全くフラットな感じでマドレボニータさんって産後ケアのアプリ開発とかしている、そういう方々も一緒にブースで出してもらったり。

*RESAS:地域経済分析システム(RESAS:リーサス)

Code for Catっていう猫のためのIT開発っていうのもこのサミットをきっかけに始まりましたので、そこで猫耳を付けたりとか、そういうことをしています。 具体的にどんな部屋をどうしたかっていって、例えばJ由M主党の控室。ほんとね、何の変哲もない所を子どもたちが電子工作を3日間やり続けられるっていう場所にしました。「作ってそのまま放っておいていいよ」と。「どんどんその中、手加えてっていいよ」って。最終日にはもうネオン付けて。電子工作でこれ、もう光るようにできるんですね。さらに雪プロジェクションマッピングしちゃって、すごいきれい。これ、実はマライア・キャリーの曲流しながらやった感じですね。

コミュニケーションが生まれるスペースが!?

これ、豊島区役所――どこもそうだと思うんですけど、議席の数でもらえる部屋の広さが違うんです。J民党さんはもう一つ部屋があって。ここがまた角地ですごい明るい部屋なんで「それは子どものために使おう」ということで、プログラミング教室をやりました。

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こういうScratchっていう簡単なことでプログラムの構造を学べるもの。もともとこんな使われ方、旗立てて固いスーツ着てた所で子どもたちがリラックスして、肘付きながらプログラミングが学べると。 次、K明党控室さん。ここに関しては、ほんとは控室っていうのを全部、表札もハックしちゃって。ちょっとそれっぽいのをまた貼って作って、実はお菓子とか、コーヒー飲み放題の休憩室みたいな感じで。ただ、やっぱりここのこういうスペースがあることで、すごく交流が生まれたんですね。

こちらについては、実際に埼玉でコワーキングスペースやってる会社さんに、ほんとに出張コワーキングスペースやってもらいました。ここもコミュニティーをすごい大切にしているコワーキングさんなので、そういう感じでコミュニケーションを生めて。議員談話室は、こんな所をキッズルームに改装しちゃいました。授乳室もOKみたいな。第二委員会室はさっきのCatが。議員協議会室も前はこう使われてたんですけども、人が入って夜になると二次元の女の子が踊りつつビールがあって、なんかちょっと怪しいガジェット着けてる人がいて、バースデーパーティーまでやっちゃう、みたいなそういう使い方。

区長の反応は!?

メインの議場。こちらがもともとこういう形で使ってた所なんですが、ワークショップでみんな、Tシャツでも何でもありの人たちが降りて。逆にこういう所だからっていうことで「なりきりハッカソン」っていって、「区長マニフェスト、ペットに住民票交付します」みたいなのやってみたり。

外国人の方にお話してもらったので「いや、英語分かんない」「じゃ、議場の中に同時通訳ブース作っちゃえ」って実際に作ってやりました。実際、これ見てもらうと上に登れる人ってもう議長、副議長の2人ぐらいなんですね。この3日間乗りまくりました、みんな。すごい乗りました。太鼓も載せました。

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最後パーティーもしました。ここは基本的には選挙で選ばれた人しか入れない所に、市民みんな分け隔てなく。これがほんと一番いい使い方じゃないかな、なんてこの絵を見て思いました。「やり過ぎかな、区長怒るかな」ってこれは登ってる区長なんですけどすっごい喜んでて、下でグラレコ書いてる人に「かっこ良く書けよ」とか言ってたりとか、終始すごい笑顔で「ああ、これ喜んでくれたな」と。

ハードルが高い会場の借り方

こういう使い方をしたんですけども「役所の私がいるから、簡単に空いてるし使えるんでしょ?」と思う部分あるかもしれないんですが、実はすごいハードル高いです。私の前にもやっぱり「借りたい」っていう人がいたらしいんですけど、もう所管課から無碍に「駄目よ」って言われてて。

何でそれが豊島区で通ったかっていうと、実は去年、日本創成会議で消滅可能性都市、いきなり豊島区名指しで言ってきたんですね。これがショックで、「池袋住みたい町ランキング3位とか言ってたのに消滅すんのかい」みたいな。そういうようなショックがあって、リノベーションまちづくりっていうのを始めたんですね。これは民間主導の公民連携。公民連携です。

こういったCode for Japanの取り組みっていうのは、複数の部署が関わったり、対応する部署ないんで普通だともう受けらんない。でも、それを受けるような組織作ってたら時間かかってしまうので何やったかっていうと、区長と、副区長と、部長全部集めてそこで一気にプレゼンして、区長に「連携する」って一言言ってもらうっていうのをやりました。それで何とか半年で何とか連携までいったと。

こういったことをきっかけに豊島区ずいぶん変わってきまして、ストリートラグビー。これ、京橋でやってるもので、どこでも芝生引いてラグビー。大人から子どもまでできるんですけど、やりたくてロンドン市長なんかも来ちゃうようなイベントなんですけども。

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これを豊島区でやろうということで、10月の頭ぐらいに話があって11月にこの大通りでやってる「ぶくろマルシェ」っていうのに合わせて、公園でストリートラグビーやっちゃいました。あの芝生自体、ちょっと全部持ってこれなかったんでゴールのとこだけ引いて。大人も子どもも一緒にできるような形。こういったことが一回、公共のほうもやって「あ、これできるかも」っていうとできるんですよね。そうすると今度NHKなんかが「ああ、取材したいです」って言って、朝6時とか5時とかと言うから「ああ、それはさすがにうるさい?じゃあ芸術劇場の前なら大丈夫か」といって、やったのが芸術劇場の前と。

さっきの京橋の話なんですけど道路使いたい時、町会さんとつながると意外と使えたりするみたいです。町会さん、年に1回もともと地元のお祭りとかで道路を使う、何かあれが慣習としてあると、その町会さんとセットでお祭りやると意外と自分のやりたいイベントできたりとか。そんな話もこの過程で聞くことができました。

これからも豊島区、「ほしいくらしはじぶんでつくる」と。そういう人たちをどんどん話を聞いて、面白いなというものにはどんどんコミットしていきたいと思っていますので、また期待してください。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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▶︎前回のEventSalon8「『つながり』が生まれるイベントのつくりかた」の動画はこちらからご覧になれます。

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