チケット再販機能リリースに寄せて

僕が初めて「転売チケット」を購入したのは1999年の秋。敬愛するビリー・ジョエル様によるニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでのミレニアム・コンサートのもので、確か定価が60ドルほどの上段席のチケットをeBayで300ドルもの大枚をはたいて購入したのだった。もう17年も前の時代であり、当時まだ26歳の貧乏社員だったから、相当な覚悟で高額チケットを購入したに違いなかった。

その後ビリー様のインタビューを読んでいたら、”I hate scalpers(ダフ屋は大嫌い)”と発言していた。実はビリー様、ダフ屋や転売ヤーが最も高額で売りさばくステージ前の席は自分でプロモーターから直接買い占め、会場にそれと知らずにやってきたラッキーな「本物のファン」にタダで配っているそうだ。

一方で、転売行為をビジネスチャンスとみなし、公式転売を容認し利益の一部を受け取って活動継続に充てるアーティストもいる。

「本当のファンにチケットが行き届かない」「いや、コンサートも自由経済市場であって転売は否定されるべきではない」などと様々な意見が飛び交う。アーティストの考えも懐事情も様々。唯一無二の正しい答えは存在しないはず。

ピーティックスはこれまで、あえて大型興行イベント市場に進出せず、ロングテールのコミュニティイベントにおける問題解決に注力してきた。だが、供給数以上の需要が発生するような事象は大型興行だけでなく、コミュニティイベントにも多く存在する。

それらのイベントではチケット購入者がやむをえない事情でチケットを譲る事態も多く見受けられる。そして定価以上で転売されるケースも見かける。両ケースにおいて、取引がより安心・スムーズに行われるような機能を望む声を我々は聞いてきた。そして機能の開発を進めてきた。

気がつけばチケットの高額転売が社会問題となっている。我々が開発してきた再販機能が、この高額転売問題の解決に寄与できるのではないか。そのような考えのもと、本日の発表に至った。

前段で説明した通り、唯一無二の正しい答えがない中で、少なくとも主催元に現状以上の「選択肢」が与えられるべきだと我々は考える。等価販売に限定するもよし。再販の上限価格を設定し、発生した利益の一部を受け取る、という考えでアーティスト活動を継続していくこともサポートしたいと考える。そして本音と建前が明白ではない現況の中、アーティスト側が明確に考えを打ち出すことこそ、この問題の解決に繋がるとも個人的には思う。

まだこの初期版機能に穴が存在するかもしれない。イタチごっこだということは聞く。早く、多くの「穴」を発見し、それらを一つ一つ潰していくプロセスを本日から始めたい。

▶︎ピーティックスのチケット再販機能はこちら

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