「シンポジウム」に期待すること ー FAB9 を締めくくる感動的な「物語」

fab9_entrance
何か感動的な体験をしたいとき、映画館や、好きなアーティストのライブに行くことはあるでしょう。しかし、「シンポジウム」に行く、という人はあまりいません。

普通シンポジウムの目的は、知的な刺激を受けるためのものです。ひとつのテーマに関心のある人が一同に集まり、議論し、情報交換するのがシンポジウムです。

ところで、インターネットが発達して、簡単にビデオ会議や資料のダウンロードができる時代に、なぜ、わざわざ同じ場所に集まってシンポジウムを開催するのでしょうか?(時には海を超えて、少なくない時間とお金を使って!)このインターネット時代、シンポジウムの本当の魅力は、いったい何なのでしょうか?

8/26(月)に横浜で開催された「FAB9 第9回 世界ファブラボ会議 国際シンポジウム」(以下 FAB9)はそんなことを考えさせられたイベントでした。今日は、その様子を少しご紹介します。
(PeaTiXは、一般向けチケット販売や、当日の受付などでサポートさせて頂きました)

peatix fab9

FAB9のテーマは「ファブラボ」です。ファブラボは”Fabrication Labolatory”の略で、直訳すれば「モノづくりの実験場」というニュアンスでしょうか。(ファブには「Fabrication」(ものづくり)の他に、「Fabulous」(楽しい・愉快な)という単語がかけられています) このファブラボというコンセプトは、草の根的に世界中に広まっており、世界に125箇所、日本では渋谷や鎌倉、横浜の関内などに存在しています。
ファブラボには、3Dプリンターやカッティングマシンが置かれ、個人が図書館を利用するように、これらの工作機械を利用することができます。

そして、世界中のファブラボの運営者や関係者、研究者が集まり、ファブラボの可能性や未来について話し合う場がFAB9でした。

Fab9

FAB9のメインコンテンツは、国やテーマを超えた多様な発表(者)です。教育、国際開発、経済など領域は多岐にわたりました。

(一例)

  • ケニアでの国際協力・国際開発について:10 FabLabと国際協力・国際開発  カマウ・ガチギ [ケニア]
  • スペイン・バルセロナでの都市開発について:09 FabLabと住宅・建築・都市 トーマス・ディアズ[ベネズエラ]
  • 教育・学習の可能性について:08 FabLabと教育・学習 シェリー・ラシター[米国]

これらのプログラムは、FAB9全体で一つの結論を出すことを目的としているのではなく、色々な角度でファブラボを語ることで参加者にインスピレーションを与えるような構成になっているように見受けられます。

私自身、ファブラボが、ただの「工作機械の貸しスペース」ではなく、教育や地域社会を新たな視点で捉え直し、世界をつなぐネットワークによってコラボレーションする場でもあり、それ自身が最先端のアプローチであることを実感することができました。

(ファブラボについて興味がある方は、FAB9主催者である田中浩也氏も執筆したFABに何が可能か 「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ をご参照ください)

さて、通常のシンポジウムはここで終わりです。最後にパネルディスカッションがあって、懇親会があって終了。
しかし、FAB9を締めくくったのは一本のドキュメンタリー映画でした。
映画の「予告編」がYouTubeに上がっているのでここでご紹介します。

この映画は、参加者の一人、デザイナーであり「ファブラボノマド」を名乗るイェンス・ディヴィク氏が、2年間かけて世界中のファブラボを周り、各地の物語を撮影・編集したものです。
つまり、FAB9で発表した人や、私のすぐ隣に座っている人も映画の中に登場しているのです! この作品は、世界のファブラボで起こった印象的な出来事を、シンプルな編集で、「物語」として見せてくれます。映画上映後、会場はスタンディングオベーションで、イェンスを讃えました。

説得や提案だけでなく、物語として語ること。コンセプト・概念だけではなく、現場の空気とともに、現場では何が起こっているかを伝えること。

前段のプレゼンで、ファブラボに色々な問題や可能性があることについて、「頭では」分かりました。しかし、世界中のファブラボの現場で、実際に笑い、悩み、工夫しながらモノづくりをしている人を「物語」として見せられることで、今までの発表内容をより深く理解できるだけでなく、ここに集まる人達全体の熱量や、ファブラボという世界の奥の深さが感じられた気がしました。それば、私が元々は期待していなかった「感動的な体験」そのものです

もし私が、この映画で紹介されたファブラボに通っていたら、もし自分も出演していたら!、もっと大きな感動 ーコミュニティに価値を感じ、自分もその一員であると実感することー を得られたかも知れないと思うと、皆が少し羨ましくなりました(笑) そして、もしかしたら、この感動こそが、シンポジウムを開催し、海を超えて参加する一番の目的なのかも知れません。

fab9 after movie

私自身、5月に「イベントを開催すること」をテーマにしたシンポジウムを開催しましたが、次回は彼らに習って、「現場の物語」を、臨場感を持って伝えるための工夫をしたいと思います。もし、皆さんもシンポジウムや、学会などを開催する場合は、「現場の物語」を伝えるパートを最後に入れてみてはいかがでしょうか。

(おまけ)
このブログは「イベント主催者」のお役立ち情報を発信する場なので、皆さんのイベントでも使えそうなネタをひとつ紹介します。

イベントの最中に、「懇親会の申し込み」や「ワークショップへの参加」など、参加者に何らかの「登録」を促すことがあります。事前にウェブページやメールで案内をしたり、チラシを配って周知させ、名簿に名前を書いてもらう方法を良く見かけますが、きちんと読んでくれているかどうかは人それぞれ。イベント中、何かに登録させるのはいつも一苦労です。

FAB9のレセプション・パーティーでは、写真のように大きなボードを持ち歩き、イベント会期中に行われるワークショップの参加者をその場で募っていました。ボードに直接名前を書いたら登録完了です!

fab_registration

この方法だと、興味がある人に直接プレゼンできますし、何より会場で目立つので、「ワークショップがあります!」ということは誰の目にも明らかです。
イベント中に何らかの登録を呼びかける必要がある場合は、是非参考にしてください!

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