2021年 イベント調査レポート

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はじめに

2020年の4月頃から、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、人が集まる「イベント」の開催が難しくなりました。「新しい生活様式」が求められる中、イベント主催者は、早くからイベントの「オンライン化」に取り組んできました。イベント主催者、参加者の試行錯誤が続く中、イベント・コミュニティ・プラットフォームであるPeatixは、オンラインイベントの課題やトレンドを明らかにすべく調査を実施。「2020年 オンラインイベントに関する調査」として発表したところ、大きな反響がありました。

2021年11月現在、ワクチンの普及などにより、コロナ禍は収束していくようにも見えますが、今後の見通しについては様々な見方があります。

Peatixは2021年、改めて昨年と同様の調査を実施しました。コロナ禍における新しいイベントのフォーマットとして、約2年の間に定着したと言える「オンラインイベント」はどのようなものなのか。「直接会えない」ことで、つながりやコミュニティはどのように変化したのか。また、仮にパンデミックが収束した場合、イベントのあり方はどのようなものになっていくのか。Peatixの利用データ及びユーザーへのアンケート調査から分析しています。

コロナ禍において、苦境の中にあり、また同時に新たな挑戦をしているイベント・コミュニティに関わる皆様の一助となれば幸いです。

用語の定義について

本資料では、下記のように定義しています。

  • 会場に人が集まる従来型のイベント を「リアルイベント」
  • PCやスマートフォンなどでオンライン視聴するイベントを「オンラインイベント」
  • 会場に参加者を募り、同時にオンラインでも中継するイベントを「ハイブリッドイベント」

調査期間、参照データについて

本資料で参照するデータは、Peatixのデータベースから抽出した 2019年07月3日〜2021年7月2日までに日本国内で開催されたイベントのデータ(731日分)、及び、2021年6月25日〜7月2日にPeatixユーザーにメールにて配布したアンケートを元にしています。

イベントデータ

  • イベント数:331,402 (日本国内のイベントのみが対象)
  • イベント参加ユーザー数:2,208,565

アンケートデータ (イベント参加者、主催者を対象に、それぞれランダムに配信先を抽出、メールにて回答を依頼)

  • 主催者アンケート:有効回答数 415
  • 参加者アンケート:有効回答数 1,762

本資料の著作権について

本資料は、CC BY-ND 4.0 (表示 – 改変禁止)として発表します。クレジット(Peatix Japan株式会社)を明記し、内容を改変しないことを条件に、ご自由にお使い頂けます。記事や、オンライン・ハイブリッドイベント検討の際の社内資料などでお使いください。

目次

はじめに

用語の定義について

調査期間、参照データについて

本資料の著作権について

1. コロナ禍におけるオンラインイベントの実態

時系列に見るリアル・オンラインイベントの開催数

オンラインイベントの開催・参加経験

  オンラインイベントの開催経験

  イベントの参加頻度

オンラインイベントの利点と課題

  オンラインイベントの利点

  オンラインイベントの課題

オンラインイベントの参加意向・不参加理由

  オンラインイベントの参加意向

  オンラインイベントの不参加理由

イベントのマネタイズ方法・価格帯・人数規模

  マネタイズ方法

  価格帯と人数規模

  イベントの価格帯分布

  イベントの人数(参加者)規模分布

エリアの特徴

ジャンルの特徴

  オンライン化しやすいジャンル

  内容・テーマごとの変化

  「ヨガ」イベントの事例

日時について

  チケットが売れるタイミング

  開催時間帯

  参加しやすい曜日・時間帯

2. つながりとコミュニティ

交流の重要性・つながりの変化

  交流の重要性

  交流・つながりの変化

コロナ禍において交流を促すための工夫

  利用している動画配信サービス

コミュニティに参加する人数の変化

  イベント全体とリピーター/コアメンバー

  コミュニティに参加する意識

  コミュニティ参加の数と交流・つながり

  コミュニティ参加の課題

3. 「アフターコロナ」のイベント開催形式

ハイブリッドイベントの今後

  ハイブリッドイベントについて

「アフターコロナ」のイベント開催意向

リアル・オンライン参加要因

  リアル・オンライン参加要因

  回答のパターンごとに分析

おわりに

  「アフターコロナ」を見据えて


1. コロナ禍におけるオンラインイベントの実態


時系列に見るリアル・オンラインイベントの開催数

変化に素早く対応、イベント数はオンライン化で増加

次のグラフは、過去2年間にPeatix上に公開されたイベントを「リアルイベント」「オンラインイベント」に分けて表したものです。

今ではすっかりイベント開催の選択肢のひとつとなったオンラインイベントが増え始めたきっかけは、2020年4月6日に発表された「緊急事態宣言(7都府県)」であり、それ以降およそ8割程度のイベントがオンラインイベントとなりました。リモートワークなどの新しい働き方に合わせて、イベント開催形式の変化のニーズにも素早く対応したことが伺えます。

2020年5月になると、イベントの総数がコロナ禍以前よりも増加しました。主な原因は新規主催者によるものです。詳細は「オンラインイベントの課題と利点」の項で取り上げますが、会場が不要なこと、一人でも開催できることなど、オンラインイベントのメリットを享受し、イベントを新しいコミュニケーション・チャンネルとして取り入れた人が多いことを示しています。

Peatix上で公開されたイベント数・オンラインイベントの割合

オンラインイベントの開催・参加経験

オンラインイベントの開催経験

ほとんどの主催者がコロナ禍で初めてオンラインイベントを開催

コロナ禍以前の開催形式として、「リアルイベント」が「ほとんど」と答えたのは84.1%でしたが、現在は約半数がリアルイベントとしての開催を休止、あるいは「まれに」開催するのにとどまっています。一方、以前に「オンラインイベント」を開催したことがなかった主催者は82.9%である一方、現在ではそのうちの約9割の主催者が「ほとんど」「まれに」オンラインイベントを開催したと回答しており、コロナ禍で初めてオンラインイベントを開催したことが分かります。

質問: 「コロナ禍」以前(新型コロナウイルスの蔓延に伴う2020年4月の緊急事態宣言以前)、それぞれの開催形式の頻度について、もっとも当てはまるものをひとつずつ選んでください。(主催者に質問)

質問:最初の緊急事態宣言が出て1年以上が経過しました。過去数ヶ月において、それぞれの開催形式の頻度について、もっとも当てはまるものをひとつずつ選んでください。(主催者に質問)

イベントの参加頻度

オンラインイベントに繰り返し参加

コロナ禍において、多くのイベントがオンライン化しましたが、参加者はどのくらいの頻度で参加しているのでしょうか。「月1度以上」参加する人が22.6%、「4〜10回 (4半期に1度〜毎月1度未満)」が30.5%と、積極的な参加意向が伺えます。この調査の対象者はPeatixユーザーであり、ある程度イベントに興味がある人たちではありますが、オンラインイベント参加経験者の3割程度の人が繰り返しイベントに参加していることが分かります。

そうした人たちにとって、気軽に外出することができない状況の中、オンラインイベントへの参加は、ビジネスや余暇の選択肢のひとつとして位置づけられているようです。

質問:コロナ禍(新型コロナウイルスの蔓延に伴う2020年4月の緊急事態宣言以降)、オンラインイベントへの参加頻度を教えてください(参加者に質問)

オンラインイベントの利点と課題

オンラインイベントの利点

会場費を抑えられるのが大きな利点

イベント主催者は「オンラインイベント」にどのような利点を感じているのでしょうか。「会場代がかからない」が最も多く、73.1%でした。イベント開催にかかるコストのうち、会場代が約1/3と言われており、それが抑えられる効果は大きいでしょう。次に多くの回答を集めたのは「今までとは違う客層・参加者層にリーチできる」であり 66.9%、「より多くの参加者を期待できる」が52.2%と、この状況をマーケティングの好機と捉えた主催者が多いようです。

質問:オンラインイベントについて、利点として考えられるものを全て選んでください。(主催者に質問) – 複数回答

オンラインイベントの課題

集客・視聴者集めに苦戦する主催者も

一方で、主催者が課題として感じているのは「集客・視聴者集め」であり65.6%でした。これはオンラインイベントの利点としてマーケティング効果の可能性が挙げられていたこととは逆説的な結果となっています。この乖離の理由には、人気のイベントがより参加者を集めてしまい、そうでないイベントが集客に苦労していることが考えられます。

質問:オンラインイベントを実際に主催する際、課題として感じたものを全て選んでください。(主催者に質問)- 複数回答

オンラインイベントの参加意向・不参加理由

オンラインイベント参加への抵抗感はなくなった

イベント参加者のオンラインイベントへの参加意向として、「積極的に情報収集して参加したい」が22.0%、「特に自分の興味があるものが見つかれば参加したい」が81.0%と、コロナ禍において、オンラインイベント参加への抵抗感はほとんどなくなりました。

一方で、参加できない・しない理由として大きいのは「時間がない」で35.1%でした。次に、「参加したいイベントがない」が25.1%となり、集客・視聴者集めに苦労している主催者が多いことと対比的です。これは、後述する地域性の問題や、コロナ禍において情報の多くがデジタル化し、探しにくく・出会いにくくなっていること、また、当初の目新しさがなくなり、参加者がよりレベルの高いものを求めていること、などが考えられます。

オンラインイベントの参加意向

質問:オンラインイベントについて、当てはまるものを全て選んでください。(参加者に質問) – 複数回答

オンラインイベントの不参加理由

質問:オンラインイベントに参加したくない、あるいは参加したいけどできない理由はなんですか?(参加者に質問) – 複数回答

イベントのマネタイズ方法・価格帯・人数規模

マネタイズ方法

有料チケット販売が主流、今後は多様化へ

現在、オンラインイベントで売上を上げる方法として最も多いのは「Peatixなどのチケットサービスでチケット販売」で58.4%でした。また、約半数の主催者が、現在は「無料なので売上はない」と答えている一方、今後は収益化を考えていることが分かります。今後は寄付やクラウドファンディングなどを試してみたいという主催者も多く、収益化の方法は多様化していくでしょう。

質問:オンラインイベントで売上をあげる方法として、「実際に行ったもの」を全て選んでください。(主催者に質問)- 複数回答

質問:オンラインイベントで売上をあげる方法として、「今後も行う予定があるもの」を選んでください。(主催者に質問)- 複数回答

価格帯と人数規模

チケット代を下げて参加人数を増やす

オンラインイベントの利点として最も多い意見は「会場代がかからない」ことでした。そのことを反映してか、オンラインイベントのチケット金額は、リアルイベントに比べて全体的に低い傾向にあり、有料チケットのうち32.7%は1,000円以下となりました。

一方、参加者数は増加傾向にあります。「25人以上」の規模からオンラインの割合が大きくなり、50人以上のカテゴリでもオンラインイベントの方が優勢です。会場代がかからない分、チケット代を下げることで参加のハードルを下げ人数を増やすことを目指しているのがオンラインイベントの特徴です。

イベントの価格帯分布

イベントの人数(参加者)規模分布

エリアの特徴

競争が過熱・地方のプレイヤーにはチャンス

集客や異なる客層へのリーチに対する期待と課題は表裏一体です。「オンラインイベントの利点と課題」であげた通り、人気のイベントは更に集客に成功し、そうでないイベントは苦戦していますが、その一つの理由が地域性であると考えられます。リアルイベントと異なり、オンラインイベントは場所(距離)の制約がありません。つまり、「近所だから参加しよう」という動機がなくなり、イベントの内容のみが評価の対象となります。

「ヨガ教室」を例に考えると、従来は近所の人だけが集客の対象でしたが、オンラインイベントの場合、全国(全世界)から参加者を集められる可能性が出てきた一方、近所というだけでは参加者を集めにくくなりました。(ヨガ教室の事例は後述します。)

このデータは、それぞれの地域の主催者が開催するオンラインイベントに、参加者がどの地域から参加しているかをまとめたものです。(オンラインイベントは会場の住所情報がないため、イベント公開時、及びチケット購入時のIPアドレスから大まかな地域を推測しています。)

Peatixには首都圏・近畿エリアのユーザーが多いという特徴を反映したものですが、全体的に競争が過熱する一方、それを打破するために強い独自性を打ち出すイベントも増えており、地方で開催されるイベントの主催者にとっては、首都圏や近畿エリアなどのユーザーにアピールするチャンスと言えるでしょう。

オンラインイベント主催者・参加者の地域

ジャンルの特徴

オンライン化しやすいジャンル

セミナー系イベントは早くからオンライン化

過去2年間に開催されたイベントにおいて、それぞれのジャンルでの前年比成長率及び、開催数の増減、オンラインの割合を集計したものです。オンライン化に伴い、ほとんどのジャンルにおいてイベント数が増加しています。

大きく増加したのは、「ライフデザイン・生き方」「働き方/キャリア」「メディカル/ヘルスケア」などのジャンルで、セミナー形式のイベントが多く、比較的オンライン化しやすかったものと考えられます。同様に、「マーケティング/セールス」「スキルアップ/資格」などのビジネス系イベントも早くからオンライン化しました。

「ファミリー/キッズ」の多くは教育系のコンテンツです。外出が難しい状況で、子供の興味・関心を広げるような内容のイベントを中心に、特に夏休み・冬休みなどのシーズンに多く開催されました。

実数としては多くないものの、成長率が最も大きいのは「旅/観光」でした。「バーチャルツアー」のような形式で、ガイドが現地から中継するものも多く、旅行に行きたくても行けない消費者のニーズを反映し、Peatix上でも人気があります。

一方、最も大きく数を減らしたのは「食/グルメ」でした。「食材のデリバリー+解説」形式のイベントや、オンライン・クッキングなど、主催者の創意工夫が見られましたが、開催や参加に手間がかかることが、数を減らした要因と思われます。

内容・テーマごとの変化

生き方・働き方・キャリアを見直すセミナーが増加

次の表は、それぞれのイベントの内容(テーマ)のうち、過去2年間のイベント数の増加が最も大きいものから30のテーマをピックアップしました。(Peatix全体では数百のテーマがあります。)

コロナ禍において、「生き方」や「働き方」「キャリア」「スキルアップ」など、それらを見直し、考え直したいという人たちが多かったということでしょうか。「副業」「起業」「経営」などのテーマも同様に大きく増加しました。

また、「マインドフルネス」「リラクゼーション」「ヨガ」は、コロナ禍における生活のストレス軽減に役立っています。

「ヨガ」イベントの事例

一部のイベントが多くの参加者を獲得

さて、中でも特徴的な動きをしたのが「ヨガ」というジャンルです。その多くは、ヨガ教室のオンライン版で、Zoomなどを通じてインストラクターからヨガを学び実践する、というものです。

2020年の緊急事態宣言直後、検索数、イベント数、参加者数が大きく伸び、Peatixの中では最も人気のあるジャンルとなりました。外出ができない状況で、健康的に体を動かす手段として、多くの人の選択肢になりました。

しかし、2020年の夏頃からイベント数、検索数は減少しました。目新しさがなくなったことや、続けるのが難しいことなどが理由として考えられますが、それ以降も常に一定の参加者数があります。

これは、

  • 同じ主催者のイベントに継続参加している(検索数の減少)
  • 一部のイベントがより多くの参加者を獲得している(イベント数の減少)

ことを意味しており、「エリアの特徴」や、「オンラインイベントの利点と課題」で述べた通り、人気のイベントはより参加者を獲得することができた一方、特に当初の目新しさがなくなった現在、一部のイベント主催者は集客が難しくなっていることを表しています。

日時について

チケットが売れるタイミング

イベント直前にチケットを購入

オンラインイベントは、自宅から気軽に参加できるということから、リアルイベントに比べて開催日前日や、当日の申込みが多くなりました。

開催時間帯

午後8時以降にも多くのオンラインイベント

一日のうちの開催時間帯について、リアルイベントとオンラインイベントの違いを表したのが次のデータです。リアルイベントは10:00、13:00、19:00に開催数の山がありますが、オンラインイベントは全体的に幅広く分布し、

14:00、20:00、21:00開催のイベントが多くなりました。

参加しやすい曜日・時間帯

休日・「いつでも良い」が多数


イベント参加者にとって「参加しやすい曜日」は、土曜・日曜の週末が最も多いものの、「いつでもよい」も37.7%と多くの回答を集めました。

「参加しやすい時間帯」を聞いてみると、20:00が最も多く19.7%、21時以降も13.9%と、遅めの時間帯が参加しやすいようです。実際の開催時間分布とも一致しています。

質問:オンラインイベントに参加するとしたら、参加しやすい曜日を全て選んでください(参加者に質問) – 複数回答

質問:オンラインイベントに参加するとしたら、参加しやすい時間帯を選んでください(参加者に質問)

2. つながりとコミュニティ

交流の重要性・つながりの変化

交流の重要性

約7割の主催者「参加者同士の交流が重要」

次の質問は、主催者に「参加者同士の交流はどのくらい重要か」を質問したものです。「とても重要」が30.4%、「ある程度重要」が43.1%と、約7割の主催者が参加者同士の交流が重要であると考えています。

質問:主催するイベントにおいて、参加者同士の交流はどのくらい重要ですか?(主催者に質問)

交流・つながりの変化

オンライン化でつながりが減った

それでは、主催者は交流・つながりについて、どのような変化を感じているでしょうか。最も多い回答は「変わらない」 37.8%でしたが、次に多いのは「以前よりも減った」が30.4%と、多くの主催者がオンライン化で交流・つながりに課題を感じていることが明らかになりました。一方、16.6%が「以前よりも増えた」と回答。全体としては「交流・つながり」が減っている一方、オンライン化という状況をうまく利用している主催者も一定数いることが分かります。

質問:主催者と参加者、あるいは参加者同士の交流・つながりについて、もっとも当てはまるものを選んでください(主催者に質問)

コロナ禍において交流を促すための工夫

開催頻度増が交流を促す

コロナ禍において、直接会う形でのコミュニケーションが難しい状況です。そうした中、主催者はどのような工夫をしているのでしょうか。全体としては、半数以上、53.7%の主催者が「開催頻度を増やした」と回答し、また「対策を講じた上で、できる限りリアルで会うようにしている」と回答した主催者が25.7%でした。

一つ前の質問で、「以前よりも交流・つながり」が「増えた」と感じる主催者と「減った」と感じる主催者の対策に違いはあるのでしょうか。

「「増えた」と回答した主査者の73.9%が「開催頻度を増やした」と回答、また、「リアルで会うようにしている」も42.0%でした。「特に何もしていない」は4.3%と少なく、交流・つながりを増やすための工夫が結果に表れていることが分かります。

また、「オンラインイベントで双方向にコミュニケーションが取れるように内容を工夫した」という回答が22.2%と、オンライン上での工夫を続ける主催者も一定数います。しかし、この項目は「増えた」「減った」と感じる主催者間で差がなく、オンライン上のコミュニケーションの難しさを反映しています。

質問:コロナ禍において、直接会ってのコミュニケーションが難しい状況です。

参加者とのコミュニケーション・交流を促すために、もっとも近い取り組みを全て選んでください(主催者に質問) – 複数回答

利用している動画配信サービス

Zoomが約8割

イベント主催者はどのようなテクノロジーを活用してオンラインイベント開催を開催しているのでしょうか。圧倒的に多いのはZoomで77.9%でした。これは、職場や学校での利用が進み、多くの人に利用経験があり「慣れている」ことが理由として考えられますが、前述の「双方向にコミュニケーションが取れること」のメリットも理由のひとつとして考えられます。

ただし、これはPeatixで開催されるイベントのデータです。主催者の多くはチケットを販売したり、参加の際にアンケートを設けたり、「フォロー」機能で今後の接点を作ることを目的に、Peatixを利用しています。一方、例えばYouTubeやFacebook Liveなどを用いて申し込みを不要にし広く視聴者を募るようなイベントも数多く存在しており、そのようなイベントは本データには反映されていません。

コミュニティに参加する人数の変化

イベント全体とリピーター/コアメンバー

参加人数は増加傾向・リピーターは継続

コミュニティに参加する「人数」については、どのような変化があったのでしょうか。「より多くの参加者が期待できる」ことがオンラインイベントの利点のひとつとして挙げられていましたが、コミュニティに参加する人数も増えたのでしょうか。

また、交流・つながりが難しいオンラインイベントは、継続的に参加しているメンバー(「リピーター」)の参加にどのような影響を与えたのでしょうか?

左側は、「イベント全体の参加人数」について質問したもので、右側は「リピーター」の人数についての質問です。
イベント全体の参加人数については、「以前よりも増えた」が最も多く36.6%でした。一方、リピーターの人数は、「以前と人数は変わらない」が39.0%と多く、コロナ禍の難しさの中においても、コミュニティとのつながりを維持していることが分かります。

質問: ​​イベント全体の参加人数について、もっとも当てはまるものを選んでください(主催者に質問)

質問:「活動に継続的に参加してくれるメンバー」(リピーター)について、もっとも当てはまるものを選んでください(主催者に質問)


コミュニティに参加する意識

約半数がコミュニティへの参加意識を持つ

ここからは「参加者」に対する調査です。この質問では、イベント等(オンライン含む)で、定期的に集まるような人達を「コミュニティ」と定義しています。例えば、研究会や同好会、同業種の集まり、アーティストのファンコミュニティ、企業サービスやブランドのユーザーコミュニティなどを指します。家族や、友達グループ、学校や職場でのつながりは除きますが、任意に参加するような部活やサークル活動などは、「コミュニティ」に含むものとします。

そうした「コミュニティ」に「参加している」という意識は、どのくらいの人が持っているのでしょうか?

「コミュニティに参加している」という意識があるのは、ほぼ半数となり、複数のコミュニティに参加と回答した人が33.15%いました。

質問:イベント等(オンライン含む)で、定期的に集まるような人達を「コミュニティ」と定義します。例えば、研究会や同好会、同業種の集まり、アーティストのファンコミュニティ、企業サービスやブランドのユーザーコミュニティなどを指します。

家族や、友達グループ、学校や職場でのつながりは除きますが、任意に参加するような部活やサークル活動などは、「コミュニティ」に含むものとします。

そのような集まり(コミュニティ)に現在参加していますか?しているとしたらいくつくらいですか?(参加者に質問)

コミュニティ参加の数と交流・つながり

気軽には参加できるが、オンラインでのコミュニケーションは難しい

ここからは、前の質問で参加しているコミュニティが「1つ以上」と答えた人のみの回答です。コロナ禍において、参加するコミュニティの数、また、「交流・つながり」はどのように変化したでしょうか。

参加するコミュニティ数について、最も多いのは「変わらない」で40.3%、「増えた」が「減った」より若干多く、32.9%となりました。

一方で、参加するコミュニティ内での「交流・つながり」は「減った」という回答が最も多く42.4%と約半数。オンライン化によって、新たなコミュニティが生まれたり、今まで参加していなかったものに参加する人がいる一方で、交流・つながりは減少しています。これは、オンラインでのコミュニケーションが難しい実態をよく表していると言えるでしょう。

質問:ご自身が参加するコミュニティの数について、もっとも当てはまるものを選んでください(参加者に質問)

質問:ご自身が参加するコミュニティ内で、他の参加者との交流・つながりについて、もっとも当てはまるものを選んでください(参加者に質問)

コミュニティ参加の課題

オンライン上でのコミュニケーションが課題

さて、コロナ禍において、コミュニティ参加者はどんなことに課題を感じているのでしょうか。42%の人が「イベントの回数が減った」と回答しています。主催者への調査では「回数を増やした」と回答した割合が多かったこととは対象的に、参加者への調査では「回数が減った」が最も多くなったのは、「オンライン化」に適応できなかったコミュニティが一定数いることが原因です。

また、「オンラインでのコミュニケーションが難しい」が次に多く37.9%でした。主催者が双方向のコミュニケーションを工夫しても「交流・つながり」はあまり変わらなかったことが示唆するように、参加者にとっても、オンライン上でのコミュニケーションは難しいことのようです。

質問:コロナ禍において、直接会うことは難しい状況が続いています。どのような問題を感じていますか?(参加者に質問) – 複数回答

3. 「アフターコロナ」のイベント開催形式

ハイブリッドイベントの今後


ハイブリッドイベントについて

10年ほど前から、一部のイベントにおいてUSTREAMやニコニコ動画、YouTubeなどを通じて、イベントの様子を配信する試みは行われています。それらの多くは、会場でイベントを開催する一方、その内容をオンライン配信するというものですが、多くはイベントの補足的・記録的な位置付けで、視聴は無料の場合がほとんどでした。

しかし、「オンライン参加」が定着したおかげで、主催者は、場合によっては以前の何十倍もの「参加者」を期待できることに気づきました。また、「課金」のハードルも下がりマネタイズも容易になりました。

そこで、イベントの目的やビジネス上の戦略に応じて、細かな設計や工夫が見られる「ハイブリッドイベント」が生まれています。単にイベント会場の様子を中継するだけでなく、例えば、オンライン参加者だけのコンテンツや交流の場を用意したり、チケットの価格設定を変えたりすることで、大きな収益や、顧客の獲得に成功しています。

「ハイブリッドイベント」はイベント戦略・マーケティング戦略を根本から変えてしまうものになりつつあり、今後日本においても、苦しんだイベント業界が復活するトレンドになるかも知れません。

「アフターコロナ」のイベント開催意向

「ハイブリッド」を検討している人は78.3%

この新型コロナウイルス感染症の流行で、多くのイベント主催者、参加者がオンラインイベントを経験し、その可能性と課題を感じました。次の質問は、イベント主催者に「新型コロナウイルス感染症の収束後」にどのような形式でイベントを開催する予定かを聞いたものです。驚くべきことに、新型コロナウイルス感染症の流行が収束したとしても、37.8%の主催者が「ほとんどのイベントはオンライン」として回答しています。更に、会場に参加者を集める一方でオンライン配信も行う「ハイブリッドイベント」を検討している人は、78.3%もいる結果となりました。

質問:「コロナ禍」以前(新型コロナウイルスの蔓延に伴う2020年4月の緊急事態宣言以前)、それぞれの開催形式の頻度について、もっとも当てはまるものをひとつずつ選んでください。(主催者に質問)

リアル・オンライン参加要因

リアル・オンライン参加要因

「オンライン参加」が選択肢に

それでは、「ハイブリッドイベント」の場合、つまり、会場での参加とオンライン視聴の選択肢が与えられたとき、参加者はどのような理由で参加方法を決めるのでしょうか。イベント参加者に対し、リアル(会場)での参加、あるいはオンライン視聴を選ぶ「理由」を質問しました。

質問:パンデミックが収束すると、リアルイベントをオンライン中継する「ハイブリッド」イベントが増えることが予想されます。会場に足を運んで参加する方法と、家や会社などで配信を視聴する方法の2つの参加方法が選べる場合、どちらの方法を選びますか?会場での参加、あるいはオンライン視聴を選ぶ「理由」について、自分の考えに当てはまるものを選んでください。(参加者に質問)

回答のパターンごとに分析

リアル・オンラインの参加意向に大きな差

回答全体の分布を確認したところで、少し深掘りしてみます。データを分析すると、回答の傾向がいくつかのパターンに沿っていることが分かります。例えば、(当たり前ですが)「なるべく会場参加」に「よく当てはまる」と回答した人は、「なるべくオンラインで視聴」には「全く当てはまらない」と答える傾向が高く、リアル(会場)参加の意向が高いことが分かります。

それぞれの回答の傾向を分析するとおよそ5つ(のクラスタ)に分類できることが分かりました。そこで、k-means法という方法でクラスタリングし、それぞれの割合と特徴を明らかにしました。

  • A (9.4%): 「原則会場参加」〜 「なるべく会場に行って参加したい」。オンラインイベントのメリットはあまり評価せず、選択肢があれば会場参加。全体の9.4%しかいないということは、多くの人にとって、オンライン参加が選択肢の一つとなったことは間違いないでしょう。
  • B (26.3%): 「基本会場参加・オンラインイベントのメリットは積極享受」〜 Aによく似ていますが、「初めてでイベントの内容がわからない場合」「プレゼン中心のセミナー」「オンラインが安価・無料の場合」はオンライン参加を選択するという回答は非常に特徴的です。ビジネスや教育系セミナーの参加者の多くはオンラインでの視聴が中心となることを示唆しています。
  • C (21.0%): 「どちらとも言えない」:ほとんどの回答が「どちらとも言えない」。
  • D (30.4%): 「基本オンライン参加・リアルの臨場感重視」〜基本はオンラインで、オンラインのメリットに重きを置いています。リアル(会場)参加の理由として、「イベントの臨場感(演出、音や照明など)が重要な場合」「好きな登壇者・出演者がいる場合は、直接会いたいので会場に行って参加したい」という回答が、他クラスタと比べても比較的大きく、このクラスタの存在は、特にエンタメ業界にとっては勇気づけられる結果かも知れません。
  • E (12.9%): 「原則オンライン」〜 リアルの臨場感や交流、出会いなどに重きを置いておらず、リーチするにはオンラインでの参加が必須です。

イベント主催者、参加者双方にとって、選択肢が増えることは間違いなく、将来、新型コロナウイルス感染症の流行が収束してもイベントのあり方は以前とは全く異なるものになりそうです。

おわりに

「アフターコロナ」を見据えて

最後に、この調査全体を通じて見えてきた「アフターコロナ」のイベントやコミュニティの形について考察します。

オンラインイベントは選択肢のひとつに

Zoomなどのデジタルコミュニケーションが社会全体に一気に普及したことは、今後の社会に不可逆の変化をもたらしました。「直接リアルの場で集まれない」状況の中、多くの人が「オンラインイベント」を体験しました。体験した人数や規模、オンラインイベントのメリットなどを考慮すると、今後も「オンラインイベント」はイベント開催形式のひとつとして、社会に定着するでしょう。

コミュニティのオンライン活用は「つながりの維持」

一方、オンラインイベントでのコミュニケーションには多くの課題があります。様々なテクノロジーが生まれており、主催者・参加者の試行錯誤が続けられていますが、コミュニティにおいては、つながりや交流を促すような結果は得られませんでした。唯一効果があったのは「開催頻度を増やした」ことでした。

今後、イノベーションによって問題が解消する可能性もありますが、リアルで会うことで生まれるコミュニティの結束をオンラインに置き換えるのは難しそうです。

オンライン/ハイブリッドイベントが新しいマネタイズの手段に

コロナ禍において、「有料チケット」を購入してオンラインイベントに参加することが普及しました。リアルイベントに比べ、チケット単価は低く、参加人数が多いのが特徴であり、特にエンタメや教育、カルチャー領域においては、コロナ後もこのマネタイズ方法は継続されるでしょう。

ポイントは「規模」と「集客」です。独自性のないイベントは集客に苦戦する一方、オンラインの利点をうまく活用できれば今までリーチできなかった人たちを取り込める可能性があります。

また、「有料チケット」以外の選択肢として、例えば、YouTubeライブでプレミアムコメントによる収益や、アーカイブでの広告収入がありますが、相当数の登録者・視聴者がいないとマネタイズが難しいのが現状です。一方で、「有料チケット」によるオンラインイベントは、それより遥かに少ない人数規模でも成立します。

リアルイベントの有料配信(中継)=ハイブリッドイベントや、リアルイベントとは別にオンラインイベントを開催するなど、「オンラインイベントでのマネタイズ戦略」が求められるでしょう。

セミナーのほとんどはオンラインに

セミナーの多くは、コロナ後もオンラインイベントとして続けられるでしょう。参加の容易さ、移動のコストなどを踏まえると、特にビジネスセミナーは、特別な理由がない限りコスト的にもリアルイベントを正当化するのが難しくなるかも知れません。

「体験」をオンラインでお試しする

「旅/観光」(バーチャルツアー)の項で挙げたように、「体験のお試し」として、オンラインイベントが重要な役割を果たすでしょう。観光業をはじめ、教育や、カルチャー系イベント(ワークショップなど)など、比較的単価が高い「体験」消費のマーケティングとして、オンラインイベントが活用されるでしょう。

エンターテイメントはリアルで復活する

コロナ禍で最も大きな影響を受けたもののひとつがライブ・エンターテイメント業界ですが、コロナ後は復活するでしょう。会場の臨場感や、出演者に直接会えることの価値は、オンラインでは置き換わらないようです。また、「マネタイズ」の項にも書きましたが、オンラインイベント・ハイブリッドイベントを上手く組み合わせることによって、コロナ以前よりもビジネスの幅が拡がるでしょう。

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*これからオンラインイベントを主催しようと思っている方へ

Peatixは、オンラインイベントに関するご相談を承ります。下記ページ内のフォームよりお気軽にお問い合わせください。追って担当者がご連絡いたします。
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