面白いのに上映館がない!サッカー&映画ファン垂涎 "好き"から誕生したパワフルな映画祭 #EventSalon レポート

2011年に誕生し、サッカーファン、映画ファンから熱い支持を集めてきた「ヨコハマフットボール映画祭」。日本ではあまりお目にかかれない世界中のサッカー映画の中から、優れた作品を上映するとあって、サッカーファン&映画ファンにとってはまさに垂涎モノ。開催に至るまでの背景や海外映画の輸入方法について、主催者の清(せい)義明さんが語ってくれました。

面白いのに上映館がない! 映画祭誕生秘話

「映画祭の誕生のきっかけとなったのは、実は、1本の映画でした。犬猿の仲といわれる長野と松本がサッカーで激突する様子をおさめたドキュメンタリー映画『クラシコ』です。この“因縁の対決”がめちゃくちゃ面白いんです! が、監督いわく、『どこも上映してくれない』。ちょっとローカルすぎたんでしょうね(笑)。じゃあ、ぼくらで単館を借りて上映会をやろうか、と思いました。でも、それじゃつまらないと考え直したんです」

映画「クラシコ」

映画「クラシコ」

日本ではあまり知られていませんが、実は、世界のサッカー映画はおよそ年間100本以上が作られるほどの人気ぶり。アメリカ、ヨーロッパはもちろん、東南アジア、インド、イラン、中東、南アフリカなどでも面白い映画がじゃんじゃん作られているといいます。しかし、日本ではまだサッカー自体の歴史が浅く、ほとんど目にすることがありません。

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「ぼくはいつも、輸入のビデオを取り寄せて、英語字幕を頼りにほそぼそと見ていました。こんなに面白いジャンルなのに、サッカー好きも映画好きもみんな知らない。このサッカー映画というジャンルを、もっと広く発信する方法はないかといつも考えていたんです。『クラシコ』の件をきっかけに、ひらめいたのが映画祭イベントの開催でした」

映画祭にすれば、『クラシコ』はもちろん、海外の映画も大々的に上映できる。さらに、これまでの仕事の関係で、字幕をつけるノウハウはわかっている。上映にかかった経費は、イベントの来場者からいただいた観覧料でペイできる――。こう考えた清さんは、サッカーと映画を愛する仲間とともに、映画祭にむけた準備をスタートしました。

サッカー&映画ファンが集結! 人脈が人脈を呼んだ

イベントを企画していて感じたのは、『好きな人間が集まる』ことの大切さです。好きだからこそフルパワーで動けるし、みんながいろんなノウハウや人脈を培ってきているんです。仲間になってくれそうな人をスカウトしたり、協力をお願いしたりもしました。イラストレーターの安齋肇さんも協力してくださったお一人です」

安齋肇さんによるエンブレム、キャラクター

ヨコハマフットボール映画祭のキャラクターは、なんと安西さんの作でしかもボランティア。普通ならありえない話ですが、安西さんが「サッカー好き」「映画好き」「横浜在住」の三拍子を揃えていることから果敢にオファーをしてみたところ、「いいよ!」と快くOKが出たんだとか。

辛口で知られる映画評論家・柳下毅一郎さんも映画祭に協力するメンバーの一人。もともと鹿島アントラーズのサポーターで、偶然、南アフリカのワールドカップで出会ったのが縁だったと清さんはいいます。映画とサッカーという2つのカルチャーをつなげ、好きな人を集めたことで、人脈にも大きな広がりが出てきたんですね。

質問:上映する映画はどうやって仕入れるの?

「映画祭に欠かせない準備のひとつが上映する映画の仕入れ。国内は電話で、海外だとメールで、直接配給元と交渉しています。そして配給元に代金を支払い、上映する権利をもらいます。入場料の5割をペイバックするのが相場のようですが、ぼくらはそれだと成り立ちません。海外の配給元に関しては『○ドルでやらせてください』と直接交渉しちゃいます。価格は配給元によりけりですね。アジア系はやっぱり安いです」

2013年の上映作品

海外の場合、「これは面白い!」と思える海外映画に出会うまでの道のりも前途多難。情報をかきあつめるのが大変だったそうですが、最近は少しずつ映画祭の存在を海外でも知られるようになり、新作のドキュメンタリーはデモDVDをもらえるようになってきたんだとか。

「なかでも、海外のサッカー映画は、華やかなエンターテイメントだけでなく、政治や人種差別、恋愛の要素などもからんできます。サッカー映画を通して世界を知り、どんな人がどこに住んでいるか、何を考えているかを知ることができる。これってとってもエキサイティングな感覚なんですよ! この感動が、ぼくらの映画祭を通して伝わったらうれしいですね」

ヨコハマは"世界三大映画祭"のひとつ!?

「ヨコハマフットボール映画祭がスタートしたのは2011年。おかげさまでチケットも毎年完売し、拡大を続けてきました。4年目を迎える2014年度は5日間開催で3,000~4,000人規模の来場を目指しています」

とはいえ、実はいいサッカー映画を見てもらいたい、サッカーっておもしろいと思ってもらいたい、そんな意気込みだけでやっているので、正直、採算度外視と清さん。最初は5本からはじまり、今年10本、来年12本と、人気とともに上映する映画本数も増加。翻訳や字幕付けに追われるという清さんは、笑いつつも「はぁ……」とため息。しかし、次の瞬間にはもう立ち直り、飛び出したのは“今後の野望”。

「実はサッカー映画祭って、ドイツとブラジルにあるんです。ヨコハマを足せば……世界三大映画祭でしょう(笑)? でも、規模で言えばヨコハマはまだまだ負けています。いつか、ドイツとブラジルに肩を並べるウン万人の動員数を達成したいですね!」

そもそもは、上映館がないという課題解決から始まったヨコハマフットボール映画祭。多くの人が感動する人気イベントに成長できたのは、アイデアの秀逸さはもちろんのこと、自分の“好き”をとことん追求し、仲間とともに情熱をかたむけてきたこと、なのかもしれません。

(文章:矢口あやは)

清義明(Yoshiaki Sei)プロフィール
中央大学文学部卒。1967年生まれ。神奈川県出身。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役。ヨコハマ・フットボール映画祭代表。株式会社ナムコにて事業戦略やエンタメ企画を担当後にWEB業界へ。多数のスポーツサイトの事業プロデュースを手がける。現在はWEB制作やイベントプロデュースから、ライティングまで多岐にわたる仕事に活躍中。サッカー映画の字幕翻訳作多数。

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