日テレプロデューサーが仕掛ける”脱テレビ中心”のコンテンツ設計、「情報発信だけでは不十分」と語るgreenz.jpのメディアデザインとは:イベントサロンvol.13 開催レポート[後編]

ピーティックスが2013年から開催している 「イベント主催者のためのイベント」、イベントサロン。2017年3月7日、13回目となるイベントサロンを開催しました。

今回のテーマは「いま、メディアが「場」を作る意味 」。ピーティックスでも、紙やWeb媒体などのメディア運営者が開催するイベントが増えています。

一度に多くの人に情報を伝える力を持っている「メディア」が、あえて対面で顔が見える規模での「イベント」を開催する理由とは。4名のスピーカーをお迎えし、皆さんが考える「メディアとイベントの関係」や、「いまなぜ”イベント”なのか?」ということについて、お話を伺いました。今回は後編をお届けします!

前編では、朝日新聞メディアラボ 鵜飼さん、コンデナスト・ジャパン 菊井さんのお話をレポートしています。
▶︎ 前編を見る

「テレビのことだけを考えていても仕方ない」SENSORSが届けるイノベーション
日本テレビ放送網株式会社 SENSORS:原 浩夫さん

テクノロジーの進化とテレビ

日本テレビに入社してから、一貫してデジタル領域を担当してきた原さん。デジタル・テクノロジーの進化を見ていくうちに「自社テレビのことだけ、テレビのことだけを考えていても仕方ない」という焦りの気持ちが大きくなっていきました。そんな思いで、各局の番組のTweetの盛り上がりを可視化させるアプリや、民放公式テレビポータルTVerの立ち上げを経験され、現在は「ネットを使って新しい軸をつくる」べく、SENSORSを中心とした新規事業に関わっておられます。

インターネットやスマートデバイスが普及した今、「何曜日何時に見てね!」という、従来のテレビ番組のコミュニケーションには限界があると原さんは言います。また、映像だけでは伝えきれず、体験しないと面白さがわからないもの:例えばVRやオフラインのイベントなど、「楽しいもののライバル」が増えており、テレビメディア自体もビジネスモデルを再考しなくてはいけないという意識を持っているとのことです。

SENSORSは、それらの背景を持ちながら、「テレビが考えるネットメディア」ではなく、従来のコンテンツの楽しみ方をアップデートした「見るだけではなく、”体験”して楽しい」ものを提供するべく、内容が企画されています。

SENSORSとはどのようなメディアなのか:テレビ、SNS、小規模コミュニティまで

SENSORSは、テレビと緩やかにつながりながらも外に飛び出した「出島」のような存在。テレビを中心にしないコンテンツ設計を意識しています。 テレビ局が考えるデジタル戦略は、「テレビを見てもらうためのネット活用」という発想で、プロモーション、PRとしてのデジタル利用になりがち。あくまでコンテンツを中心に据えて、それを届ける方法としてデジタルメディア、イベント、SNS、そしてテレビ放送があるという設計になるように意識をしています。

そして重視しているのが、SENSORS MEMBERと呼んでいる外部パートナーとのつながりです。SENSORSという名前には、世の中をSENSINGする、センスの良い人たちという意味が込められていて、その意味で、従来のテレビの世界では出会えなかった人たちの知見をもらったり、彼らと一緒にコンテンツを作っていくことが大切だと考えています。

扱うテーマは「テクノロジーの進化で変わる世界」。様々な領域でイノベーションと呼ばれているものを取材しています。そしてSENSORS IGNITIONというイベントでは、リアルの場を活かして「体験しないと分からないこと」を伝えています。また、ドローンなど特定テーマでは小規模のコミュニティ運営なども行っています。

原さんのお話で印象的だったのは、「テレビ局だけではできないということを認めて、外部の様々な人と一緒に作り上げていこう」ということ。自らをオープンにし、新しいイノベーションが起こる場としてSENSORSを作り上げている様子が伺えました。

イノベーションとは

イノベーションという言葉は、技術の進化、技術革新という意味合いで使われることが多いですが、原さんはそれだけではなく、「人の考え方、価値観がアップデートされること」だと考えています。SENSORS IGNITIONのイベントでは、特定のトピックに絞り込むのではなく、イノベーション全般について考えてみようという提案をしています。新しかったり、今まで関わることのなかったモノ・コト・ヒトに出会うことで、私たちが新しいものの見方をつかむことのできる場所。それがSENSORSの仕掛けるイベントなのです。

[質疑応答の抜粋]

Q)SENSORSのイベントでは「体験しないと分からないこと」を重視されているとのことですが、「体験」とはどのようなものだとお考えですか?体験の場は、ともすると何となく触ってみて「すごかった!」「楽しかった!」という感想を抱いて終わってしまうこともあるような気がします。

A) そのような側面は認識しています。なので特に、そこにいる人たちと交流し、直接話をすることを重視しています。SENSORSのイベントであれば、そこに展示をしている、普段会えないような人たちと直接話して関わることで、深い体験や気づきを得てもらいたいと思っています。


Q)このような思い切った新規事業を進めていく場合、会社への成果報告などはどのようにやっていますか?何か苦労があるのか、うまく進めるコツがあればお伺いしたいです。

A)KPIみたいなものはまだはっきり確定しているわけではないですね。ただ明確に言っていることは視聴率ではないということ。各局同士のシェア争いをしていても仕方ないと思っていますので。デジタルメディアでもPV、UUなど細かい指標はいろいろありますが、まずは「どれだけの人につながれたのか・出会えたか」というのは意識しています。4月からも新たな目標を設定する予定です。今後も何を成果として追いかけていくかは、都度検討しながら進めていこうと思っています。


Q)メディア活用に悩んでいます。個人でも使えるメディアが増えてきた一方で、どれを選ぶべきなのか、どう届けるべきなのか…。メディアの選び方や見せ方で、何か意識していることがあれば教えてください。

A)インターネットでのコンテンツ消費のされ方については意識をしています。例えば、テレビを1時間観るのはさほど辛くなくても、ネットの前でコンテンツを1時間見続けてもらうのはなかなか厳しい。ネットであればテキストの方が読みやすいのではないかと思っていますね。デジタル動画の可能性もあるとは思うのですが、どのようなフォーマットが良いのか、答えは持っていないですね…ただ、そういうことも含め、媒体に適したコンテンツの提供の仕方は意識しています。

原さんと一緒に「テクノロジーの進化で変わる世界」を見てみよう!

▶︎ SENSORSの情報を見る

「ほしい未来は、つくろう」Web記事を読んだ人が、ソーシャルグッドな取り組みの講師になるまでにグリーンズが仕掛けていること
NPO法人グリーンズ:植原正太郎さん

NPO法人グリーンズで「コミュニティエディター」として活動している植原さん。グリーンズではメディア設立当時から、興味関心や課題意識を共にする人たちが交流する場を作ってきました。今回はそのようなメディアとコミュニティ運営についてお話を伺いました。

Badな情報をいくら伝えても、世の中は良くならない

2006年グリーンズが立ち上がった当初は、『不都合な事実』などに象徴される環境問題が注目を集めていて、グリーンズでもそれらの問題を中心に取り上げていました。

しかし、「Badなこと」をいくら伝えても、世の中は明るくならないし、良くならないのではないか…。そんな思いから、グリーンズでは、社会を良くしようとしている人を取り上げ、読者が「自分たちにもできる一歩」を踏み出すことを目指したメディアとなることを決めます。それからは子育て、教育、働き方、地域社会、エネルギーなどなど、様々なテーマを扱ってきました。

「ほしい未来は、つくろう」

そんなグリーンズが掲げているスローガンが、「ほしい未来は、つくろう」。世の中に問題はたくさんありますが、大企業や行政に解決を丸投げして要求するだけではなく、自分たちで一歩踏み出し、欲しい未来を手作りしていこうというメッセージが込められています。
自宅にソーラーパネルを取り付けてみた人の取材をしたり、放置自転車とホームレス問題を同時に解決するソーシャルビジネスを立ち上げた大学生の取材をしたり…。日本に限らず、海外の事例も紹介しながら実際にアクションをしている人たちを取り上げ、「ほしい未来の作り手」を増やすような情報発信を行っています。

情報発信だけでは不十分

グリーンズはほしい未来の作り手を増やすには、情報発信だけでは不十分と考えています。アクションしている人の話をメディアで見るだけで「よし、自分もやってみよう」という気持ちになることはなかなかない。自分がはじめの一歩のアクションを踏み出す際に、仲間となる人やメンターとなる人に出会うことが重要なのです。

植原さんから出てきた言葉は、「何かが生まれるときは、人と人がつながるとき」。グリーンズでは2007年から「green drinks Tokyo」というイベントを毎月開催しています。green drinks自体はロンドンで始まったエコでソーシャルな飲み会イベントで、世界各地で開催されています。同じ興味関心や、問題意識を持つ人が出会うことで、新たなアクションが生まれていくきっかけ作りのイベントです。

東京以外でも様々な内容で開催されていて、団地のコミュニティを育てるためのgreen drinksや、街の自給自足の力を高めるためのgreen drinks、クリーンエネルギーの活用をテーマにしたgreen drinksなど、多様な活動が述べ110箇所で広がっています。グリーンズでは日本全国のgreen drinksのサポートをするgreen drinks Japanという組織を運営し、取り組みの広がりを支援しています。

ゆるやかに人が集まるgreen drinksから、実際に何かをやってみるテーマ型ワークショップや、グリーンズの学校というアイデアを形にするための授業、さらにはgreenz.jpの寄付会員を対象としたフィールドワークのような遠足企画まで、参加者の経験や興味関心の程度に合わせたイベントが多数開催されています。企業とのコラボ企画や、省庁から依頼を受けて実施するものも出てきました。「ほしい未来を作る」仲間を増やしていくために、グリーンズの挑戦は続きます。

[質疑応答の抜粋]

Q)メンターや仲間と出会う場となるイベントでは、初心者と経験者が混じり合うことになりますね。そのような場の中で、初心者の人を「私ももっとやってみよう」と活動者に引き上げていくにはどのようなことを意識しているのでしょうか?

A)まずは初心者の人でイベントに来てくれた人に、しっかりと興味を持ってもらうように意識しています。そこからは、経験のレベルに応じて様々なイベントを企画しているので、初心者向けのイベントに参加してもらい、さらにそのテーマを掘り下げるグリーンズの学校のような場に来てもらい、卒業生として新たなプロジェクトのオーナーになってもらう…という流れを作っていけるようにしています。


Q)たくさんのイベントを開催されているとのことですが、企画は自社でされてますか?持ち込み企画などもあるのでしょうか。また、集客のコツについても伺いたいです。

A)持ち込みもありますが、担当者である僕たちがやりたい企画をやってますね。やりたいことをやる、という感じです。ただ、ソーシャルグッドというテーマは嬉しいことにだいぶ普及してきたので、集客で苦戦する時もあります。昔はソーシャルグッドというテーマで人が集まる機会が少なかったから、それだけでも価値があった面があるけれど、今はグリーンズに求められているものも変わってきた気がしました。よりエッジの立ったイベントや、深い体験ができるものを作っていかなければいけないなと感じています。

「ほしい未来のつくり手」になりませんか?

▶︎ 植原さんが活躍するgreenz.jpの情報を見る

4名の皆さんのお話がそれぞれ異なって興味深く、会場からの質問も次々と出てきて盛り上がったセッションでした。改めて、お話いただきました鵜飼さん、菊井さん、原さん、植原さん、ありがとうございました。そしてご参加いただきました皆さんも、ありがとうございます!

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