ピーティックスが2013年から開催している 「イベント主催者のためのイベント」、イベントサロン。2017年3月7日、13回目となるイベントサロンを開催しました。
今回のテーマは「いま、メディアが「場」を作る意味 」。ピーティックスでも、紙やWeb媒体などのメディア運営者が開催するイベントが増えています。
一度に多くの人に情報を伝える力を持っている「メディア」が、あえて対面で顔が見える規模での「イベント」を開催する理由とは。4名のスピーカーをお迎えし、皆さんが考える「メディアとイベントの関係」や、「いまなぜ”イベント”なのか?」ということについて、お話を伺いました。今回はその前編をお届けします!
会場は朝日新聞メディアラボ 渋谷分室。
「メディアとイベント」という今回のテーマにぴったりの会場です。
暖かい色の照明と、木のいい匂いが素敵な場所でした!
満員御礼!みんなで乾杯してスタート!
平日火曜日の夜にも関わらず、たくさんの方にお越しいただきました。
お仕事帰りの方が多かったです。ありがとうございます!
イベントサロンでは、スピーカーと参加者の距離を近くして、リラックスした雰囲気の中で話を聞いてもらうことを意識しています。
この日もいつもの乾杯からスタートしました!
朝日新聞メディアラボが挑む、従来のメディアのあり方を超える取り組み
朝日新聞メディアラボ渋谷分室:鵜飼誠さん
朝日新聞メディアラボ渋谷分室(以下メディアラボ)は、2014年10月に渋谷にオープンしたスペースです。「社内外のHUB」「実験工房」「朝日新聞のDNAを断ち切る」などという”攻め”のコンセプトを掲げ、新たな取り組みにチャレンジする実験場として開設されました。
今回は、朝日新聞入社後、様々な新規事業の立ち上げに関わられ、今回のメディアラボの立ち上げ・運営者でもある鵜飼さんに、このプロジェクトについてのお話を伺いました。
本社と、第1号のメディアラボがある築地から飛び出し、渋谷に拠点を構えたのは、「ここから家出したい」という気持ちが強くなったため。そして渋谷という場所に集まる人・コトに出会うため。インキュベーションプログラムや資本業務提携の可能性の模索など、様々な取り組みを実施する中、イベントという面では2年半で200回近くものイベントを開催してきました。
アイデンティティの危機から生まれた「超メディア」というスローガン
このように活動をしてきたメディアラボですが、「我々は何のためにここに存在しているのか」と悩んだ時期もあったそうです。
その悩みを乗り越えるため、議論を重ねて出した答えは、「超メディア」になるということ。従来のメディアを超える場所となるため、挑戦を重ねていこうという思いのもと、既存の価値観や資産に縛られないチャレンジを次々と行っていくことになりました。
局地的な熱狂を
たくさんのイベントや企画を通して、多くの人と会ってきた鵜飼さんが感じるのは、「局地的な熱狂」を作り出すことの意義。
人のパッションが高まり、パッションが「発火」するには、「局地的な」サイズが重要とのこと。そこにぎゅっと集まった人たちの熱量が一点で高まることで、新たな取り組みが生まれていくのを感じるとのことです。
その意味で今のメディアラボの物理的な広さや、プロジェクトの規模感は、「局地的な熱狂」を起こすのにちょうど良いサイズ。対面の場所を持つことの意義の一つは、こういうところにあるようです。
「異能」に出会う
メディアラボ渋谷分室は、「朝日新聞のDNAを断ち切る」ことを意識して、今まで会うことのなかったような人と交わるような場所として機能してきました。多様な才能を持つ人との企画を行ったり、渋谷のコミュニティの活性化にも取り組んでいます。
アクセラレータープログラムやクラウドファンディングなど、新たな事業のタネを育てるための機能も備え、メディアラボに訪れた様々な「異能」の熱量を発火させ、育てていく取り組みを行っています。
人との出会い、イベント、アクセラレーションの3つの点を行き来しながら、そこで生まれた事業をライブラリ化していく場所になることを目指す。メディアラボ渋谷分室の取り組みは、これからも続いていきます。
[質疑応答の抜粋]
Q) 自分たちの存在意義を考える機会を持ち「超メディア」というコンセプトを掲げたとのことですが、ここでいう「メディア」とは、どのようなものなのでしょうか?
A) 今までの新聞社という文脈でのメディアは「マス」であり「パッケージ」されたものだと思います。そのような伝統的なメディアを見直し、熱量を持って活動しているコミュニティにもっと繋がっていく場になりたい、ひいては自分たちがそのようなものになりたいという気持ちで活動をしています。メディアラボという場も、新たなメディア。ソフト・ハードの両面で、従来のマスメディアを超えた存在になりたいという意味で「超メディア」という言葉を使っています。
Q)朝日新聞というブランドの影響力は、良くも悪くも大きく作用するような気がしますが、その点についてはどう考えていますか?
A)新聞社としてのイメージはきっとあると思うし、そのイメージで来てもらえれば嬉しいです。新聞社が運営している場所として、期待に沿える部分も、裏切る部分もあると思っています。知名度など、利用できるものは利用したいと思いつつも、そこを超える驚きや気づきを提供したいですね。朝日というブランドの先入観を超えていきたいと思っています。
Q)「異能と出会う」ということを掲げ、様々な人と交流していったことで、何か変化はありましたか?
A)メディアラボにとって新しい出会いがあったことはもちろん、そこに来た人同士の間でも新たな異能との出会いが起こっています。メディアラボ自体が、私は「創造的余白」と表現していますが、いろんなことを恐れず自由に発想できる場になっています。そこに来る人たち皆にとって、自分とは異質な人や考え方、発想との出会いの場になっていて、変化が起こる場所として機能しているのではと感じています。
渋谷のスペースまで、鵜飼さんに会いに行こう!
イベントのメディア価値を最大にするためにコンデナスト・ジャパンが考えていることとは
コンデナスト・ジャパン:菊井直人さん
VOGUE, GQ, WIREDなど、人気マガジンを多数抱えるコンデナスト・ジャパンにとっては、イベントも一つの”メディア”。
アパレル、化粧品、自動車など様々なメーカーのマーケティング業務を経験され、現在コンデナスト・ジャパンのマーケティングを担当されている菊井さんに、コンデナスト・ジャパンがどのようにイベントをメディア化し、商品としているかについてお話を伺いました。
コンデナスト・ジャパンの考え方:マルチメディアカンパニー
コンデナスト・ジャパンは自社のことをマルチメディアカンパニーと捉えています。メディアの世界観、ブランドを中心に、それを伝える方法として紙媒体、デジタルメディア、ソーシャルメディア、ビデオ、イベントなどがあるという考え方です。実際、デジタル分野の売り上げの方が紙の売り上げを上回っていて、コンデナスト・ジャパンにとっては、デジタル、紙、イベントという区別は、自社マガジンのブランドや世界観を伝える手法としての違いでしかないようです。
イベントに関しては、年間40件以上のイベントが開催されています!これは雑誌の発刊数より多く、その中でも、コンデナスト・ジャパンが主催者として開催するものと、クライアント企業と一緒に運営するものがあるそうです。
そのようなたくさんのイベントの中で、VOGUEが開催しているVOGUE FASHION’S NIGHT OUT(以下FNO)について、詳しくお話いただきました。
イベント/メディア/広告の顔を持つVOGUE FASHION’S NIGHT OUT
FNOは「みんなでお買い物しよう!」というコンセプトの元、VOGUEが仕掛ける一夜限りのイベント。参加者みんなでとびっきりのオシャレをして、ブランドショップを渡り歩きながら夜のショッピングを楽しみます。2009年から行われているグローバルイベントで、今や日本は世界最大規模の開催地。そしてこのイベント自体が、コンデナスト・ジャパンにとっての広告商品としての面も持っています。
FNOに集まるのは、ファッションへの感度の高い人たち。彼らの、「非日常な体験をしたい」という気持ちをしっかり満たすのが、イベント主催者としてのコンデナスト・ジャパンの役割です。毎年各ブランドの企業やデベロッパー企業、地域の商店街の方とも綿密に打ち合わせをして、華やかな一夜を作り出します。
そして、そこに集まる人たちとスポンサー企業をつなぐのが、メディアとしてのコンデナスト・ジャパンの仕事。イベントをどのようにしてメディア化し、スポンサー企業が満足するようなものにするかを考えながら企画・運営を行います。グレード感、ラグジュアリー感…。クライアントが期待する雰囲気を持たせながら、ブランドに興味を持ってもらうような仕掛け作りが重要とのことでした。
コンデナスト・ジャパンが考える次なるメディア戦略
デジタル媒体の方が、紙媒体よりも成長しているコンデナスト・ジャパンのメディア群。今後の展開としては、データ活用をより強化していきたいとのこと。イベント参加者のデータを詳しく取得したり、イベントに参加する媒体の読者IDを充実させていくなど、オフラインとオンラインのさらなる融合に向けての取り組みが進みそうです。
[質疑応答の抜粋]
Q)読者のIDデータ活用ということであれば、デジタルな媒体でキャンペーンなどの企画を行った方が規模も効率も良さそうに感じるのですが、あえてリアルの場でイベントを行うことの意義は何なのでしょうか?
A)「会わないとわからない雰囲気」ってあると思うのですね。その人の雰囲気や話し方など。実はこれも重要なデータで、それを掴むためにはリアルな場所で会うことが大切になってきます。
Q)イベントのターゲットの絞り方について、心がけていることがあれば教えていただきたいです。
A)自分たちが「どういう人を呼びたいか」というところをしっかり考えることが大切です。どういう人を集めればブランドの世界観にマッチし、参加者にも満足してもらえるか。例えば「スタートアッパーに会いたい」という考えは多くの人たちが持っている関心だと思いますが、そもそもスタートアッパーとはどんな人たちなのか、その中でも特に、どのような特徴を持った人が今回の企画にフィットするのかということをよく考え、その人のために企画をするようにしています。
Q)イベントも一つのメディア・広告商品となり得るということですが、スポンサーに満足してもらうための工夫などで何か行っていることはありますか?
A)開催したイベントをいかに外に広げるかというのは一つのポイントだと思っています。イベントに取材が入り、スポンサーの情報も合わせて外のメディアに載っていく。自社メディアだけでなく、他媒体にもいかに露出していけるかということを意識しています。
菊井さんが作り出すメディア戦略はこちらでチェック!
次回の後編では、日本テレビ放送網株式会社 原さん、NPO法人グリーンズ 植原さんのお話をレポートします。